もう一度、今度はビッグテーブルをなめるように越えていくと、やっぱりさっき見た光景が目の前にあった。今度は迷うことなくRMを逆側、バックストレートの縁に立てかけると、コースにはみ出ているマシンに駆け寄り、引き起こす。フルサイズとはいえ、2ストロークマシンはこんなときにありがたい。さして重さを感じることなく起き上がったマシンを反転させて、自分のへそくらいあるその高いシートに、コースサイドの斜面を使って跨がった。
しばらく寝ていた2ストローク125ccは、私の短い右足で何度キックペダルを踏み下ろしても、まったく息を吹き返す気配がなかった。「先が思いやられる」と独りごちながら、いざ押してみるとそれほどには軽くない車体を、パドックまで力ずくに押し上げていく。腕に残る火照りに負けて、マシンをレーシングスタンドに抱え上げられず、リアのアクスルシャフトにスタンドを噛ませただけで、すぐにコースへ引き返していくと・・・私のRMを軽々と押して歩く、お仲間の姿が見えてきた。
<つづく>