2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

南の島の彼女

幌布のショルダーバッグに収まる文庫本は、暑く湿った夏の匂いを伝えてくれる。南の島で、傷ついた恋心を癒す放蕩女子。バリ島の人と自然に溶け合う日向な感じと、自由なのに繊細な陰のある雰囲気が、知り合いの姿にうまく重なる。昨日までの冷たい雨も、陽…

秋の菜の花

関宿から春日部へ。古びた橋梁の上、dukeとともに江戸川を渡る。平坦にまっすぐ延びたアスファルト。その正面に、庄和の大凧を飾る大きな建屋が、目線の高さに降りてきた夕日を背に黒く浮かび上がる。ほんの30分前、肩口に触れていた陽光は暖かさを宿してい…

光と緑と

松伏を縦に突き抜けて、県道が南に走る。午後になって少しだけ西に傾いた太陽に、かかる雲はひとつもない。県道の先が見えなくなるまで裸の水田がまっ平らに広がって、銀杏もなければ県の木“けやき”も見当たらない。短く刈られた稲穂から新緑が針のように立…

kissさん

「来年、また会いましょう!」 そんな約束をして別れた“37年来”の友人が、ようやく約束を果たしにやってくる。それも飛び切りの、彼ららしい人騒がせな贈り物を用意して・・・。 「よりにもよって、何を考えているのか」と思ったのもつかの間。いやいやそう…

Ready to Race!? 7(完)

一度交わしたはずのCRF150RⅡが、最後のストレートでまごつくKXの前に出た。2台重なるようにまたいだフィニッシュラインで、“L1”と書かれたボードが光を反射する――。 コーナーというコーナーで行き場をふさがれ、立ち上がりの小さなワダチで思わずブレーキレ…

Ready to Race!? 6

<10/23の続き> 深くえぐられたくぼみにすっぽりとフロントタイヤが収まる。2番クジで引き当てたグリッドは、真ん中よりも少し外寄り。第1コーナーをアウトバンクで回り、最初のテーブルトップへは外から入っていくつもりだ。大きく「5」と書かれたボードを…

一夜漬け(十五夜~番外編2)

歌トモはrepetitionに厳しい。2回目から、いつも“新曲”を持ち込んで披露するのが、何となく二人の約束事になっている。あの月食の夜もそうだった。 用意した手持ちの新曲は、しかし、歌い始めてすぐになくなった。雑用ばかりに追われていたせいで“練習”時間…

曇天

真新しい一日は、雲にすっぽり包まれて、灰色だった。光が無ければ陰も無い。降るでも照るでもない曇天はどうにも苦手、おまけに今朝は冷え込んだから・・・携帯のアラームを止めるのも、掛け布団を払うのも、ベッドから起き上がるのも、始まりのすべてが億…

H2R 後編

<10/10の続き> 300ps超えの、まさにグリーンモンスターは、Kawasaki信者ならずとも気になるマシン。全身を緑に染めるのではなく、硬質な深いカラーリングにライムグリーンを効かせている。何といっても“過給器”付きというのがいい。むしろ“H2R”の横書きよ…

十五夜~番外編

夕べ、薄く名月を隠していた雲が、明け方近くになって通りにまだらの染みをつけていた。171年ぶりを数える「後の十三夜」は、真夜中に一瞬、その雲を透かすように姿を映しただけ――ならば、まだはっきり憶えている月の満ち欠けの夜の話を少し――。 浅草六区に…

文化の日

風が少し冷たい、晴れ上がった秋の日。灰色をした帯のような雲が数本、西から東へ、青い空にゆるやかな弧を描いている。山の中腹のあちこちを褐色に染め始めた筑波山、その山すそを南から北へなぞるようにぐるりと回り、岩瀬の辺りでそれまでの県道から国道…

だからバイクはやめられない

日付が変わるまで降り続いていた雨も上がり、朝から晴れ上がった日曜日。買い物と面倒な用事を済ませるのに、ガレージからdukeを引っ張り出した。3ヶ月ぶりに表に出された橙色に、あのときと同じ眩い光が宿る。予報どおりの晴天、濡れた大地が陽射しを浴びて…

リハビリ&自主トレ!

経過はいいみたいですね。あとはねじらないようにしてもらって―― 女先生から週に1日、20分ほどの柔軟と筋力トレーニングが割り当てられてから3週目。理学療法士の、こちらも女先生が左ヒザを内側にひねるようにしていっても痛くはないから、確かに具合はいい…