2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

良いお年を

西の空へ静かに陽が落ち、秩父の山並みが黒く連なって浮かび上がる。染まる杏色に、かの霊峰がその裾を広げてみせ、野火が薄くたなびいて、その彼方に上弦の三日月が細く映る。アスファルトがBongoのヘッドライトに照らされ、通りが宵に呑まれていく。 暮れ…

Monster 797

テレビから耳になじんだ旋律が流れてくる。その歌声に何かを思い出すように、こうして捨てられない雑誌のページに、今度は指が動かなくなる。アスファルトから離れて、土の上を走るようになって十年。最後になるはずだった空冷Lツインのレプリカが、来年、…

ゆきやこんこ

ヒトが弱いのか、コイツらが強いのか。 霜が降りた畦の褐色を、小さな氷柱が押し上げる。その氷を小気味よく踏み崩して、いきなり走り出すシロとネロ。リードを持つ手がグンと引っ張られ、氷のつぶれる音が曇天の寒空に響いていく。思い出されるのは、童謡の…

真夏にまた

どれほど祈っても、叶わないことはある。 北の風が強く吹き、空は青に冴えわたり、 荷室のナノハナに、乾いたヒカリが映る。 なのに霞ケ浦には、saitoさんの微笑だけ。 二人で歩くコース、靴底が黒土に汚れる。 来年の真夏にまた、ここにやってこよう。 静か…

Pray to the sky

北に薄く張った雲を、まだ見ぬ朝のヒカリがほんのり薄紅色に染めている。焼けた空は雨の合図。やがて南風をつかまえて、西から雨がやってくる。割けた東の空は灰色にしぼんでいって、湿った風が少し強くなってきた。低い空を見上げて、あとは祈るばかり。

12月26日

ぶ厚い雲に覆われた空の下、にび色の街に影は写らない。華やいだ赤と緑の彩りが消えて、都心の背の高いビルには、気忙しく松と竹が飾り付けられている。動から静へ。異国情緒あふれる賑わいの季節から、もっともこの国らしい時節へと移る瞬間。この日からち…

帰れる場所

指折り数えるほど台数だけど、知った顔ばかりが揃った日曜日。丸一年の間、この日曜日だけを待っていたryoには、ご機嫌の路面と先輩たちに包まれて、最高の一日になった。陽射しが西に大きく傾き、最後の20分。少し離されたtakadaくんを追いかける、その背中…

ハングオフ・ドリーム

ゆるいS字カーブをひらりひらり。ステアリングがトップブリッジの下から斜めに垂れ下がり、左右のステップが膝を窮屈にする。かすかに聞こえる排気音と合わせれば、懐かしい愛機RGV250に跨がっているワタシがそこに居る。バイクに乗る夢を見るなんて、ずいぶ…

偉丈夫にやられて

南寄りのぬるい風が強めに吹いて、空にかかる雲もない。青がまあるくアタマの上高くにあって、奔放に太陽を遊ばせている。長袖のTシャツだけなのに、少し動けばうっすら汗がにじんでくる。師走に「暑い!」と嘆くのは、何かの冗談じゃないかと思う。深夜の激…

セルフが好きか?

「腰、やっちゃってるんすよねぇ」 低く張りのある声が、そのまま白い息になる。 誘導されるまま、夏でもこの時間は建物のブラインドになる白線にBongoを収めて、運転席の窓ガラスを降ろす。エンジンを切り、給油口を開きながらメンバーカードと割引券を手渡…

Midday Sun

南の空に向けた視線に手をかざす。トンだように白くかすれた空に浮かび、「存分に召しませ」と言わんばかりのヒカリで見るものすべてを眩しく照らしている。暦は冬至。一年でもっとも出番の短い一日を、精一杯に輝いてみせ、それを邪魔する雲の欠片はひとつ…

2,000 Man

ストーンズの楽曲だ。 You Tubeで原曲を探したことがあるけれど、こっちの方が少しだけイカしてる。KISS ARMYの欲目を差し引いても、比べたらそういってくれる人が必ず居るはずだ。ひどくわかりやすいリフに乗ったヴォーカルは、どこか投げやりで、澄んだコ…

自慢のはずが・・・

カラオケで夜長歌い続けてもつぶれない自慢ののどが、何のウィルスにやられたのか、三日前から咳が止まらず、声はかすれるばかり。のど飴を舐めても風邪薬を飲んでもまったく変わらない。あちこちポンコツに、あきれてしまう。せめて横になったら止まってほ…

saraba

六文銭の赤備えも今宵が見納め。 日曜の夜も、これで寂しくなる。 生きた証を残すなんておこがましいけれど、男子たるもの、憧れはある。数年ぶりにレインウェアも手に入れたことだし、春になったら上州上田まで、ツーリングに出かけてみようか。六文銭の軍…

冬も夜

闇が街を賑やかにする。漆黒のカンヴァスに眩く街路樹が並び、ロックテイストの讃美歌が歩道をジグザグに流れていく。寄り添うカップルが笑いながら、鼻を鳴らしてその旋律を追う。ヒカリの粒に彩られた夜、聖夜を前にざわめく街がワタシは好きだ。

ドクターY

ひさしぶりに考え事をしなくていい週末。明日は起きるまで寝てもいられる。ならば、この先生の活躍でも見てから眠るとしようか。群れを好み、権威や権力を好む未知数の外科医、加地先生の腕前を。 でも、なぜ大洗なのか・・・。

早暁の影

夜が終わり、東の空に少しずつヒカリが満ちてくる。それでも漂う雲の帯がまだ陽の姿を隠して、天空も色無く、ぼんやりとしたままでいる。宵からの北風が勢いを増して宙を舞い、細く垂れた電線は唸りを上げて震えるばかり。その固さに抗うように見上げると、…

見納めの月

月が空の一番高いところに真白く浮かんでいる。したがう星の瞬きもはっきりと目に届き、思いきり後ろに傾げた首すじには冷たく風が触れて流れる。今年最後の満月。その風に洗われて、月光の下、街が冴え冴えと光っている。

信尹

生まれてこれまで、そんなことを言われた記憶がない。見つめていた視線がその顔から離れて、ふと宙をさまよう。「好きにすれば」と吐き捨てられたことはあるけれど、手がそっと肩に触れて言葉をかけられたことは、ついになかった。 史実なら齢四十八の信繁も…

-1℃の夜明け

太陽がもっとも遅く目覚めるこの季節。うっすら星影の映る満天に少しずつ赤みが差していき、東の底からゆっくりと色が左右に延びていく。ムクドリの群れが不意に舞い上がり、空に幾何学模様を残した。 足下は暗いまま、ヒカリはまだ地に届かない。遠くに離れ…

デジャブな日曜、そして・・・

背中に水滴がぽとりと落ちる。 小さなカラダを伸ばすにも窮屈なユニットバス。完全に無味無臭のお湯は、さらりと肌をすべり、立ち込める湯気だけが夕べの湯屋を思い出させる。首を傾げて天井を見やると、白いブレストガードが濡れたまま、壁に渡されたステン…

土曜に思う日々

今年最後の湯宿は、栃木鬼怒川のほとり。 透きとおった温めのお湯が、肌にまとわりのびて、腕を触る手のひらはするりとすべり落ちる。長めに浸かりカラダをしっかり温めてから、水滴に曇ったガラス戸を開き、黄昏の中へ。足にタイルが冷たく張り付いた。 鬼…

金曜の眩惑

西側に並んだ磨り硝子に、まっすぐ陽射しがぶつかって見える。天井に白色のLEDが等間隔に置かれて、その隙間を間接照明が淡く照らしている。薄黄色の壁には抽象画が三つ垂れ下がり、褐色をした作り棚とテーブルが、木目に灯りを浮かべている。こうして叩く真…

木曜だけの贅沢

芯の強い京女か、ドライなパッションの東女か。 年の頃も立ち居振る舞いも全く違う二人を前に、どちらかを選べと迫られたなら・・・贅沢に過ぎる選択肢のどちらも選べず、優柔不断に時間を繰っていくだけになる。そしてたっぷり2時間、テレビの前から離れな…

困惑の水曜日

本郷までたどり着いても、二時間ほどでまた我孫子に舞い戻る水曜。昼飯を抜いたせいで、どうにもやる気が出てこない。午前中には終わって本郷でゆっくりランチ、午後にひと仕事済ませて我孫子に帰る。それがすべて台無しになったのには、もちろん訳がある。…

火曜の青い空に

師走の固くしまった朝が、陽射しにゆるみとろけだす。ヒカリは頬にぶつかり、真正面を向いた瞳が思わず瞼を落とす。寒がりにはうれしい火曜日。これで週末の痛みさえ消えてくれれば言うこともないのだけれど・・・動き始めたカラダを支える芯は、心拍と合わ…

月曜の有休

悪い予感こそよく当たる。小さな、物心ついた頃からそんな自分に気がついて、それがたまらなく嫌だった。夕べもそう。覚めても腰は変わらないような気がしたまま、ベッドにもぐりこむ。瞳をギュッとつぶっては、痛みの出ないところにカラダをねじって落ち着…

Not enough

西の空高く、たなびく雲に陽が透けている。利根川に架かる目吹の橋を越えたのは5時間くらい前のこと。これほど早く渡ることになるとは思いもしなかった。そんな感傷を遮るように、運転席に沈めた腰椎が橋のつなぎ目を拾って激しくしびれ、一瞬、眉毛が吊り上…

鬼の笑い話 その1

欧州のKISS ARMYをうらやんだのも一瞬だけ。ここにも「きっとくる!」と、予感めいた強がりが瞳の奥の奥を突き抜けていく。たとえ鬼が笑ったとしても、妄想は止まらない。2017年のJAPAN TOURには札幌ドーム公演が用意されていて・・・ryoとまだ見ぬもうひと…

無い物ねだり

いつもいつの時でも 前を向いていたい そう思いながら日々を重ねてきたつもりでも、たまには後ろを振り向く時だってあるさ。けして懐古趣味な自分じゃないけど、こんな表紙を魅せられちゃあレジに並ぶしかない。ある意味でナノハナのアピアランス。このコン…