2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

最後の朝

頭を垂れた稲穂の足下に、朝顔が二輪、花を開かせている。雲一つない空に太陽が浮かび、あぜ道に影が長く伸びる。少し湿り気のある風が吹いて渡り、さらさらと穂先を揺らす音が聞こえる。藍色の花から朝露が落ちて、土に染みを付ける。八月最後の一日が始ま…

R471 6(完)

北陸を貫く幹線国道をぐぐり、右に源平の古戦場「倶利伽羅峠」を望むようになると、道は平坦な田圃の中を走るようになる。そのままたどれば、道は庄川温泉郷からさらに南北にジグザグに走り、県境を越えて富山から岐阜へと続いていく。とてもそこまで付き合…

R471 5

行き交うクルマもなければ、バイクも通らない。里山に延びる道を独り占めにして、加速するでもなくブレーキを掛けるでもなく、気ままに走り行く。どこまでも陽射しは強くて、道に落ちる影は、細い電線までくっきりと黒い。徐々に勾配がきつくなり、山が横か…

R471 4

やがて道は少しずつ東を向き始め、山間に開けた放牧場を縫うように、左右にゆるやかな弧を描いていく。雪除けに広い路側帯を備えた2車線は、十分な道幅を白い波線でつないでいる。見通しの利くカーブに、深呼吸を繰り返すようなアップダウン。リッターでは…

R471 3

<8/17の続き> 波打ち際すれすれにクルマを止め、しばらく瞳に海の青を映してから再び運転席に乗り込み、ウレタンのハンドルを握りしめる。フロントタイヤが海砂の上を転がり始めて、すぐにドライブウェイとの別れがやってくる。 今浜からアスファルトへと…

飛行機雲に

列車が駅に止まるたび、開いた扉から熱をはらんだ風が、スーツの足下に流れ込む。ほどよく冷やされていた車内が、熱でゆがむように淀みまどろみ、閉ざされた扉がしばらくの間、息苦しい空間を南へと走らせる。少しずつ背の高い建物に囲まれ始めて、空のあち…

Today is Demon's happy day

Our Demon is forever. Happy birthday to you, Gene Simmons. HAPPY BIRTHDAY GENE SIMMONS!

もうすぐ

「新車じゃないの」 ガレージを覗くkeiが思わず声を上げた。 買ってきたばかりのRM85Lが、フレームにエンジンを載せただけの姿をセンタースタンドの上にさらして、ガレージの床には取り外されたプラスチックパーツやらスイングアーム、フロントフォークやタ…

愛すべき瞳

北海道からオホーツクへと抜けていったはずの台風。それが引き連れてきたやっかいな南の風が、陸地に這い上がっては、湿った灰色の雲をわき上がらせる。徐々に色を濃くしていって空を真っ黒に覆ってしまうと、直に大粒の雨がぶちまけられて、路地に薄く川が…

激しい雨に抱かれて

またひどく降り出して、フロントガラスに大粒の雨がぶつかり、はじけていく。ワイパーがさらっても、またすぐに雨の膜が張り、ルーフの薄い鉄板は雨音を激しく響かせて、小径のタイヤがアスファルトに流れる雨を巻き上げる。そして水の音しか聞こえなくなっ…

別に・・・

思わずうなずく、その素直な横顔に。 みんなに好かれようとするより、 私を好きな人にもっと好きになってもらいたいものです そんな台詞を沢尻エリカにつぶやかせる、サントリーチューハイ「ほろよい」のCMが好きだ。みんなに好かれなくても、「別に」いいよ…

Whiteberryを歌いながら

江戸川を越えて、灯りのない土手の上を、ゆっくりと歩いていく。わずかに瞬いていた星も消えてなくなり、雲の薄くなった端からは、月明かりがこぼれてにじんでいる。 きみがいた夏は とおい夢のなか 空に消えてった 打ち上げはなび 隣町の大きな花火が見られ…

Yellow Magic!

夏の終わりのガレージに、春の風が吹く。 寂しかった空間はあの頃のように華やいで、これで緑のマシンがあれば、三人で必死に練習していた昔に戻ったかのよう。しばし初心に返って、初めからやり直してみるのもいいのかもしれない。 サクセスストーリーは、…

明日になれば

ryoの愛機CRF150RⅡの横で、ガレージには大きな穴が空いたままだ。それでも明日は8月19日、8と1と9で「バイクの日」。バイク乗りが、ちょっぴり気持ちよくなる一日だ、明日になれば・・・この穴もきっと誰かが埋めてくれる。

R471 2

<8/15の続き> おだやかな遠浅の海岸線に、固く締まった砂浜が延びる「千里浜なぎさドライブウェイ」。乗用車だけでなく、観光バスも走れる砂浜のドライブウェイは、半島でも指折りの観光名所。ここを走るために遠く関東からやってくるライダーも多いという…

夏の夜の嵐に

歩道のアスファルトに、雨がうっすらと染みをつけ、湿気た埃の匂いが、往来の風に巻き上げられていく。見上げれば灰色の空が低くうごめき、朝を照らしていたはずの太陽は、姿はもちろん、どこにいるのかさえもわからないくなっていた。 太平洋に浮かぶ夏の高…

R471

10日あった夏休みも、あと数時間で終わる。 昨日、数ヶ月ぶりに火を入れたCRF150RⅡ。それを家の前から数十メートル走らせただけで、結局バイクには乗らない日々を過ごしてしまった。海三昧だった一週間、能登半島から列島の背を抜けて戻れば、来る日も来る…

ザンショのアサ

つくつくほうしの独唱で目が覚めた。 開け放した窓の外、レースのカーテン越しに、空に薄雲が張り付いている。夜はとっくに明けているはずなのに、色も影もない朝。部屋に入り込むそよ風にベッドの上、寝返りを打ち、再びまどろむ。 また、蝉の声に瞳を開け…

without...

A world without HEROS is like a world without SUN こうして眺めていると、ふとそんなフレーズが口をついて出てくる。いつになったら太陽が戻るのか、ここに太陽は戻ってくるのか。しばし空虚な空間に、ココロ揺れる日々が過ぎていく。

2年ぶりに榛名の夏 6(完)

一緒に遊んでくれるはずだったishibashiさんとkenyさんが一緒になって、林の陰からパドックまでSXを押し上げる。肩を大きく揺らしながら、センタースタンドに預けたマシンのキックペダルをつまみ出す。そして、右腕でそのまま下へ動かせば、何の引っかかりも…

2年ぶりに榛名の夏 5

どうにか下り勾配の端までSXを運んでから、一度クラッチを切ってみる。すぐにエンジンは音を消し、あとは斜面を下るシートの上、何度クラッチレバーを離してみても、爆ぜる2ストロークの排気音は聞こえてこなくなった。それどころか、クラッチレバーを握らな…

2年ぶりに榛名の夏 4

掛かりの悪さは、まったく変わらず。それでも何とかいいところを探そうと、スターティンググリッドの前でいくつかの円弧を描いてから、全開で第1コーナーまでの短い距離を加速する。連続ジャンプをひとつずついなして、通称「バス停ジャンプ」を大きく跳び上…

2年ぶりに榛名の夏 3

1周しても調子が出てこないのは、ワタシなのかSXなのか。 夏空の下、エンジンはすっかり暖まっているはずなのに、勾配にチカラ負けしているSX。うまく走れないのは、滑りやすい朝一番の路面のせいではなかった。パドックを掠める長い直線、反応の鈍い立ち上…

2年ぶりに榛名の夏 2

<7/30の続き> 芝の緑が平らに敷き詰められたパドック。そこから山の頂を巡るコースは、半分が木陰に包まれて、渡る風が夏でも肌に心地いい。 緩やかに上る長い弧線がパドックをなぞるように延びて、その最後にふたつ、シングルジャンプが用意されている。…

Last Dance 4(完)

machi-sanはすぐに声を掛けてくれたけど、なかなかワタシにもryoにも笑いかけてはくれなかった。ずいぶん長く通って、人並みにはコースを回れるようになって、パドックでも顔を覚えてもらったその先に、やっと言葉を交わしてもらえるようになったっけ。土埃…

Last Dance 3

独り残されたパドックに、ようやくカン高い排気音が鳴り響く。すぐにシフトペダルを蹴りつけ、乾いた小砂利をはじくようにして、SXを加速させる。スターティンググリッドから眺めていると、ひっきりなしにマシンがフィニッシュテーブルを跳び越え、最終コー…

Last Dance 2

<7/24の続き> 2時40分からの15分。最後のクールに、SXがなかなか起きてくれない。まるで名残を惜しむように、キックペダルは空を切るばかりで、軽やかな排気音が聞こえてこない。すでにこのとき、悲劇の幕が上がっていたのだけれど、それは後で気づかされ…

人呼んで・・・

俺が居たんじゃ お嫁にゃ行けぬ わかっちゃいるんだ 妹よ 江戸川沿いの道を松戸から南へと下り、途中、三角帽子の取水塔が見えるとすぐ、帝釈天への道が分かれる。ここを通り過ぎるたび、ふと口ずさむのは、決まってこの一節だ。 帝釈天で産湯を使い 姓は車 …

Return to Myself

Return to Myself 自分らしい恋をそう見つけたの 浜田麻里のヒットソングが耳を付いて離れない。 「自分らしい恋」はやっぱり違う色だったのだろうか。 Return to Myself 心染めなおししないしない夏 夏色は、きっとあの色、それが戻ってくるというのか。

I was made for lovin' you baby, You were made for lovin' me

こんな風に出逢ったはずなのに、いったいどうしちまったのか。 きっとこれ以上はないはずと夢中になっていたのも365日と少し。クセの強いリヤサスペンションと右の人さし指一本で十分なブレーキタッチにも慣れて、国産のどの2ストロークマシンよりも圧倒的な…