2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

真夏の最後に~ざりまま編~ 2

直線と平行して駆けるSX。第1コーナーまでをまっすぐ斜めに結んだCRFが、その鼻先、フロントタイヤすれすれに駆け抜ける。アウトバンクを途中で切り上げて、前を走るCRFのテールめがけて、やわらかな斜面を駆け下りる。ここから408コーナーまで、KTMに乗り換…

真夏の最後に~ざりまま編~ 1

適当に雨水を吸い込んだ山砂に、気をよくしていたのは彼女の方だった。 最初の10分で感じをつかんでからの2回目、スターティンググリッドの前でコースを見渡して、この時間の居場所を探し出す。昨日の重馬場は、SIDIのつま先を埋めてしまうでも滑らせるでも…

真夏の最後に

霧雨が流れて、肌を薄く濡らす。遠くの雑木林から聞こえる蝉の声も、湿気て冷えた空気の中では、思わず弱くなる。南の海からやってきた台風が、列島を静かに掠めてからというもの、関東には冷たい風が入り込んで、太陽も雲の向こうに隠れたきり。あれほどの…

DEAD OR ALIVE

約束した、その日その時間に、CD-ROMを手渡すことだけが目的となり、 ついには内容は問わず・・・まるで手配書、DEAD OR ALIVEってやつだ。いつも最後はそう、今日も同じように、とにかく17時には都心のビルの1階で、CD-ROMを2枚、無事に届けられるかどうか…

Love isn't sorry and pain.

まだメールも携帯電話も、想像すらできなかった時代。ワタシはそんな時代に中学生活を過ごした。 すべてがアナログに包まれていた頃の話、いわゆるラブレターというものを、いくつかもらったことがある。数は少ないから、もちろん相手は全部覚えているけれど…

また暑くなるさ

結局邪魔になって、脱いだスーツの上着が、ぬるい空調でよどむ車両の中、膝の上で丸められている。それまで各駅に止まっていた区間急行が、北千住からは急行らしく颯爽と駅を飛ばしはじめ、車内を動く空気がようやく少し冷えてきた。まさか秋雨じゃないだろ…

6時59分、急行長津田行き

ひさしぶりにつり革に掴まったまま、押上駅に向かう。7時前の急行電車は、そこそこに混みあってきても、カラダがぶつかり合うことはない。通過駅に向かう人の数を追い越し、色とりどりの看板が帯のように流れていく。無口なサラリーマンに交じって、子どもの…

もう少し時間が・・・

薄いTシャツの上に何か羽織りたくなる夜、 開け放していた窓をゆっくりと閉じて、 テレビの電源を落とす。聞こえてくるのは虫の音、夜もいつしか深くなった。8月はもう1週間、彼岸まではあとひと月もあるというのに・・・どうだろう、この静けさは。 明日は…

晴天、北風強し

遠く太平洋にある台風に向かって、北から風が吹き込んでいる。空を覆っていた灰色の雲は、その強い風に白くちぎれていって、夏の青空がはっきりと姿を見せ始める。クラス分け走行の合間、10分のインターバルの静けさにもだいぶ慣れてきた。次はAクラスのアナ…

変わるもの、変わらないもの 7(完)

nagashimaパパのメカニックに診てもらって、どうにかガソリンのオーバーフローだけは止められたものの、結局そこまで。せっかくの時間をほとんどFCRと過ごし、最後の10分もワタシがCRF150R-Ⅱを担当して、85SXはryoが走らせた。machi-sanが同じCRFを積み込み…

変わるもの、変わらないもの 6

左回りなのに、ただひとつ気に入っている第2コーナー。M・X・4・0・8と白く刻まれた山肌の真下、散水で湿り気の残るブ厚い山砂の上を、新品のIRCミディアムタイヤが咬んで走る。傾けたマシンを不安に感じるどころか、まったく転ぶ気がしない。この感じを味わ…

変わるもの、変わらないもの 5

<8/17の続き> スターティングエリアまで走ってきても、何も変わらない。不調のマシンを右手と左手でだましだまし走らせる。この感覚は、もう何年も味わっていない。せめてryoの駆る85SXの前でコースに入りたかったけど、まったく吹け上がらないエンジンを…

8・1・9

バイク乗りには、たぶん特別な日なはずなのに、しっかりと空調の効いた空間でイスに座りパソコンと対峙している。仕事のほとんどがメールを読んでは書いて、また読んでの繰り返し、その気になれば家を出てから帰るまで、誰とも口を利かないことさえできる。…

贅沢な妄想

9日間も休んで腑抜けたカラダに、仕事が二重、三重と重なりあう。何もそこまで絡み合って落ちてくることもないのに、申し合わせたような締切で、ひとつひとつが迫ってくる。長い休みの後先にはよくあること、これを乗り切ってこその社会人だ。それに今年は、…

変わるもの、変わらないもの 4

<8/15の続き> 腰高の4ストロークエンジンは、FCRからだけじゃなくてシリンダヘッドからもクランクケースからも、やたらホースやコードが伸びてきて、のぞき込んでみても向こう側が透ける隙間がない。額の汗が目尻から瞳に流れ込み、しびれるような痛みに、…

初めての夏休み

不規則に信号に止められるだけで、動かない車列にイライラすることもなく、制限を少し越えた速度で流れていく。この季節、都心の道路は本来の姿を取り戻す。 ウインカーを上げて車線を変えるのは、右折や左折のクルマを交わすときだけ。それも誰の邪魔もしな…

変わるもの、変わらないもの 3

前夜、ryoが帰ってきたその日に組み上げたCRF150R-Ⅱ。その愛機の機嫌が良くない。バラしたキャブレターをうまく組みつけていなかったのか・・・フューエルコックをONにするだけで、オーバーフロー用の黒いビニールチューブから地面にガソリンが流れ出す。セ…

変わるもの、変わらないもの 2

<8/9の続き> 右に大きく曲がりながら下るBONGOの助手席から、暑苦しいカラダが乗り出してくる。「スターティングゲート、付いたんだ」と見やるホームストレートに、散水車が白い放物線を描いていた。しばらくは雨も降らず、35℃を越す猛暑日が続き、水を垂…

あの日のR121 7(完)

2005年、あの夏の日を最後に、MONSTERは居なくなった。何の前触れもなく静かに居なくなって、ガレージの同じ場所には、橙色の250EXC-Rがたたずむようになった。オンからオフへ、山の反対側を滑り落ちるように今までとは違う景色を見るようになって・・・今年…

あの日のR121 6

<8/5の続き> 深い山の中、雷鳴はアタマのすぐ上で破裂する。濁る視界、黄色いアルミタンクの下でデスモドロミックが、雨に洗われる。バケツをひっくり返しただけでは、こうはならない。すでに前を走る国道は、大きな水のうねりになって、クルマの小さなタ…

小さな声援 6(完)

このままじゃ終わらない。 “ヒーロー”はステップに立ち上がり、前傾姿勢で加速をやり直す。そして、小さな声援をかすめてテーブルトップを跳び上がると、誰も居ない背中に向かって、ヘルメットをひねった。「かっこいいよ!」と声が聞こえた気がした。

小さな声援 5

<8/7の続き> どのワダチにはめるか・・・迷ったのはほんの一瞬だけ。それでも強く踏み込まれたブレーキペダルは、85SXのエンジンを簡単に止めてしまい、すぐにペダルから足を離せないまま、ワダチの途中でマシンは完全に停まってしまった。今度ばかりはエ…

変わるもの、変わらないもの

雲がとれ、夏らしい陽の射す日曜日。夏至を過ぎたから、その軌跡は少しずつ高度を下げていって、低く緩やかになっているはずなのに、それを気にする人はまだ少ない。低い軌跡のおかげもあって、午後になると大きく広がる陰の中、涼風に吹かれながら、火照っ…

リユニオン

ryoが里帰り。 明日はホームで久々ナノハナ。

小さな声援 4

白地にピンクを配したoneのウェアは、どこかの戦隊ヒーローにでも似ていたのかもしれない。その手は、懸命に左右に振られている。ただの気まぐれ、いやいやmori-yanだって「すごく姿勢が良くなった」とほめてくれたし、SXを駆るワタシはまんざら捨てたもんじ…

小さな声援 3

<7/30の続き> 気の抜けないテーブルを跳び越え、S字を逆さまに描くように坂を上ると、一瞬、85SXの推力が落ちる。やわらかく荒れて、曲がりにくい暗がりの中のカーブ。左足をステップから降ろせないワタシには、どうしても思いきることができない。それで…

あの日のR121 5

短い五十里トンネルは、もうひとつかふたつ、カーブを曲がった先にあるのに・・・。シールドに弾けた雨が、一気に視界を奪うように、辺り一面を飛沫で煙らせる。考える間もなく、カラダはずぶ濡れ。クシタニのカントリージーンズだけが雨をはじいても、濡れ…

あの日のR121 4

陽光を散らしていた木立が、ざわざわと音を立てはじめ、アスファルトは鈍い灰色を濃く沈ませている。スモークシールド越しに見える空はすっかり色を無くして、時折激しく空気を揺らし、閃光が黒を切り裂いていく。トンネルが突き抜けている県境の上は、もう…

あの日のR121 3

翳りのない青空は濃い緑の山にかかり、その向こう側からは、白い積乱雲が青を塗り込めるようにわき上がっていた。瞬きをするたびに形を変え、上空へと成長する様は、夏そのもの。ただ、峠に向かう空冷2気筒がガラガラと乾式のクラッチを鳴らしているうちに、…

あの日のR121 2

走れば走るほどクルマの影が少なくなる会津西街道は、北に上がればその名のとおり、南会津から会津若松へと抜けていく。まだ五十里湖畔を東に小さく回る道しかなかった頃の話。片肺にしても450ccの排気量を持つ、まさにMONSTERを連れ立って、あの日も県境を…