2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

魚板

何か大事なことを聞きそびれたような気になりながら、次から次へと検査に回される。中央のフロアの吹き抜けには採光があふれ、そこを右に左にとスタッフが動き回る。明るく光るその後ろ姿を見ているうちに、もうどうでもいい気になってきた。 自分は鯉になっ…

休暇

踏ん切りのつかない不自由さと痛み。ふとした動きに走る激痛にだけ、術後に回復した姿が思い浮かんでは、また、さっぱりと消えてなくなる。ただ、ここでしばし歩を緩めるのも悪くない選択だ。keiの提案どおり、初めてのリフレッシュ休暇を取るか否か・・・・・・明…

脱臼

派手にカマした前転の代償は、「肩鎖関節脱臼」という聞き慣れないものだった。 ただ、ようやく見つけた救急病院の診察室では、これと言った処置もなく、見せられたレントゲン写真の左肩は、思っていた脱臼のそれとはまったく違っていて、鎖骨の外側の端が完…

背中

この週末も連休、少しだけいつものリズムが戻ってきた。空も明るい予報で、気温も上がってくるらしい。ただ、お誂え向きの土曜日に誘いをかけるも、いつものトモは、マシンがドッグ入り・・・・・・そううまく転がらない。 なかなか上がらない「やる気」、その背を…

浪費

降りそぼつ雨の中、自分事じゃない「私事」が積まれていって、限りある時間はべったりと浪費される。これまでの「せめてもの罪滅ぼし」と思うことができたなら、どんなに幸せだろうが。その間に広がるのは、終わりの見えないディスタンス。費やした時間の幾…

赤銅

天体ショーも、梅雨の空には適わない。スーパームーンと呼ばれるほどに地球に近づき、その陰にすっぽりと覆われる。赤黒く浮かぶ満月の妖艶も、今宵は鈍色の雲の上。まったくついてない。次はあるのか・・・・・・。

忙中

書くことと考えることとを生業にしていると、忙しいときに困ることがある。ここに書くべきよしなしごとを、たどれなくなるという困り事。本日はまさにその忙中、そして、閑はなし・・・・・・徒然なるまま日々に思いめぐらす余裕はなかりけり、と。

記憶

見知らぬ街へ出かける往路。それが都会で四輪の場合、たいていはダッシュボードの小さな液晶と信号機のある交差点に、視界が奪われる。「この先しばらく道なり」となって、ようやく、通りに並んだ色とりどりの建造物へと視線が動く。せっかく道中だけ楽しも…

上々

こんな時間じゃあねぇ・・・・・・。 仰ぎ見る午後の青い空に、思いっきり愚痴てみる。それでも吹く風に雲がはければ、光はまっすぐに地上へと降り注ぎ、季節を思い起こさせてくれる。バイクに乗れずの週末も、終わってみれば上等の上首尾、いつもの週末の何と贅沢…

初日

朝方の雨音は安堵の調べ。八時を過ぎて、ようやくベッドから起きあがる。一緒に寝ていたはずのネロは、もう下に降りて、遮光のカーテンからは白が漏れている。すうっと引いた先の景色は、でも、残念な曇天。予報はあっさり外れ、濃淡の墨色が空を埋め尽くし…

連休

金曜の夜が何事もなく更けていき、この週末は、例の介護も「一回休み」になる。ひさしぶりに連休がやってきた。当たり前だった週末がひさしぶり過ぎて、いったい何から手を着ければよいのやらと戸惑うばかり。いくつかの家事と少しばかりの仕事はあるものの…

温泉

「いつも」が「いつか」になったひとつに、温泉がある。それも旅先、相棒は単車に限る。そんな日は、いつも手の届くところにあったのに・・・・・・まったくこの一年は、例のウイルスにやられっぱなしだ。 膝につま先、大事なアソコや指先。冷えきった四肢がしびれ…

未来

未来は、今よりずっと明るく楽しくて・・・・・・無邪気にそう信じて、ここまで少しも疑うことはなかった。高度成長期そのままのそれが、ただの妄信であったことに今さらながらに気づかされて、深くうなだれる。未来に暗澹たる世界が広がることもあれば、ふとした…

歯車

雨のそぼ降る月曜日。早くも梅雨入りの声に反応してか、ずいぶんと厄介な仕事が舞い込んできた。仕事と趣味と、そして、気力と・・・・・・その歯車は、見事に噛み合わなくなった。この先、晴れ間が見られるという次の日曜日は、もう、つまらない予定で埋まってい…

律動

天気のせいにしようとしても、予報は外れて薄く光のこぼれる朝にもう、うなだれるしかない。雲の向こうには、太陽が高くにじんでいる。それでもマシンを引っ張り出す気になれない遅く起きた朝。やり残したことばかり思い浮かぶ休日に、選んだのはロックンロ…

疎遠

予報より明るい空は、午後になって雲がちぎれ、窓越しの瓦もまぶしく光り出した。道を挟んだ中学校では運動会でもやっているのだろう、若い放送部員の幼げな声が風に流れてくる。 開け放した窓から吹き込む五月に、ふわりレースのカーテンが翻る。初夏の薫る…

名栗

真夏日寸前の金曜日は、空を覆った雲が風を包み込んでいるようで、少し蒸した感じがする。田園の広がる、まっ平らな東の端から西へ・・・・・・県をまたぐように一気に走れば、アスファルトに小高い山の緑が迫り来る。旧知の友と言ったら言い過ぎかもしれない。そ…

嫌悪

昨日のレンチを引きずって、仕事も私事も、どこか上の空。自分で蒔いた種が、余計にココロを追いつめていく。たどれる記憶も、今やそう多くはないし、さかのぼれる時間も、かなり限定的だ。いっそのこと、誰かに盗られていたのなら、気も晴れる。ふがいない…

探索

見つけにくいモノでも何でもない。22×24のメガネレンチ、KTC製で梨地仕上げの一本を探している。CRF150RⅡのリアアクスルを留めているナット、そのためだけに用意した・・・・・・はずだった。 ガレージの中もトランポの中も、家の中にも外にも、どこを探しても見当…

冒険 3

<昨日のつづき> はらり地図を開いてみても、知らない道がとんと見当たらない。通りに面しためし屋、角にあるコンビニ、高架脇の遊興施設、ラブホと隣り合わせた道の駅・・・・・・視線がたどる道すがらには、どれも見覚えのあるものばかりが並んでいる。そして、…

冒険 2

<昨日のつづき> keiの煎れてくれた珈琲をすすり、窓越しに初夏の光を眺めていたら・・・・・・少しココロが揺れ動いた。と言っても、これからモトクロスをやろうなんてアグレッシヴな感じじゃない。もっとふんわりした、すぐにつぶれてしまいそうな気持ちの膨ら…

冒険 1

「夕べに準備しておくべきだった」と悔いながら、もう一度瞳を閉じる。それから一時間。週に一度の安息日、外からの照り返しが、薄いカーテンを越えて部屋を明るくする。ようやく半身起こして、この晴れた日曜日を逡巡・・・・・・モトクロスの身支度を思い、空荷…

他力

4ストローク怒濤のトルクが、くすんだ気持ちを前へと押し出すか・・・・・・。 是非に及ばず。明日も早くに起きて、CRF150RⅡと連れ立ち出かけることにしよう。そう、とりあえず東に向かって。少しばかりの後ろめたさを残しつつ。

臆病

雑誌の立ち読みに書店へ行くことさえ躊躇する毎日。もちろんウイルスの仕業に他ならない。しかし、何かに触れ合うことをここまで臆病に感じたことは、ついぞなかった・・・・・・。いや、ryoがまだ小さかった頃、似たような感情を味わったような気がする。ただ、そ…

再開

連続した長い休みも、終わってみれば、それまでの日々が繰り返されただけ。そして、今日からまた、その延長にある毎日が始まった。こうした生活にも少しは慣れたと思っていた・・・・・・けれどそれは、とんでもない勘違いだった。 変化と刺激の欠落に、知らず知ら…

既視

二年も繰り返されたら・・・・・・その前をどう過ごしていたかなんて、思い出せやしない。ただ、Facebookの記憶が、それまでのNORMALを思い出させてくれるだけ。朝の陽光は雲の上にあって、吹きつける風に時折雨粒が交じる。そして、夕闇に包まれる頃、人も街も濡…

名残

ぼんやりと晴れ渡る空に、昨日までのメリハリが利いた色はない。水田の上に広がるのは、うっすらと白を引いたような水色。それも、よく見てみればの話。ほとんど白い空が、地平に向かって落ちているだけ。このまま月が上れば、間違いなくおぼろ月夜になる。…

回帰

褐色の水しぶきがゴーグルレンズに弾ける。水に隠れた傾斜にリアタイヤが左にズレて・・・・・・一瞬気持ちが抜けかかっても、すぐに右手がスロットルケーブルを引き絞る。そして、フロントタイヤが土から離れて、二つ目の水たまりは、ブーツを濡らさずに加速する…

感謝

にわか雨にやられて、結局マシンは降ろさず終い。そのまま国道6号線を北上、牛久女化町の酒屋に寄り道して、いつもの稲敷からの道をたどり帰る。国道を外れて、ガソリンの残量を気にしながら走る県道を左折、そして、小絹に出る頃にはもう、空はすっかり明る…

劣化

初めてだった去年は、もっと前向きに過ごしていた気がする。楽しみのロングツーリングはもちろん、モトクロスでさえも我慢して、でも、再開するその日に筋力が落ちていないようにと、近くの河川敷の砂利道を一時間余り、BMXで流す日々を送り、待っていたは…