2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

フリー&フル 8(完)

逃げる後ろ姿が、はっきりと揺れる。ステップダウンを跳び上がった先では、風がマシンを揺らす。そのたびにスロットルが戻されるから、後ろに着いているのは・・・やっぱり気が楽だ。フープスを等間隔のまま走り抜けて、バックストレート。ここは、さすがに…

フリー&フル 7

イバオのマネージャーにシゴかれた日を思い出しながら、午後はひとり、イン側を我慢して回る。ジャンプを跳び過ぎて、停まりきれずに何度かアウトバンクまで向かってしまっても、それでも黙々とイン側だけを回る。そんな健気な走りを、コース脇でiguchi師匠…

フリー&フル 6

<4/26の続き> 練習と言っても、やっぱり「遊び」。楽しまなくっちゃ、いけない。“大御所”から元気をもらった二回目は、追いかけられるところから・・・追うより追われる方が辛いのは、何もモトクロスばかりではない。サイレンサーを砕いてしまいそうな排気…

消えるGW

庭先で伸び放題・・・さすがは雑草だ。胸を超えて、目線と同じ場所に咲いた菜の花が、黄色の粒をほとんど地面に散らしていた。代わりに小さなサヤエンドウのような種袋が、茎の下から上まで、びっしりと並んでいる。透きとおった水滴が、まあるいビーズみた…

フリー&フル 5

一度前に出たRMを、すぐにかわしていったCRF。体の動きを確かめるようにしていた走りは一変、「2ヶ月ぶり」が信じられない加速で、ホームストレートを逃げていく。どこかで、こっそり練習でもしてたんじゃないか?と勘ぐりながら、離れようとするその丸い背…

フリー&フル 4

<4/23の続き> たぐる路面は、”カチパン”よりも確かに楽だ。いくつかのコーナーは、細かいことを気にしないで、タイヤ任せにできるほど。ラインは少ないけど、先週のように縦一列で走らされるような一本道はなくて・・・コースのほとんどが白く乾いていた。…

Y22

ガード下に思いがけず小ぎれいな店が並んで、その脇を歩道が明るく広がっていた。新橋寄りの改札から出てきたおかげで、ずいぶん遠回りさせられてから地下鉄の入口を見つけて、エスカレーターに飲み込まれていく。乗り換えたJRの駅名をそのまま路線に名付け…

フリー&フル 3

先にマシンを用意したのは、iguchi師匠。ただ、そこからが長かった・・・体はもちろん、二カ月ぶりになるのはCRF150RⅡも一緒らしい。前から後ろに回って、タイヤの空気圧を確認している。タイヤゲージに落ちるのは真剣な眼差しだけど、その瞳は、いつもの半…

フリー&フル 2

先週と変わらない場所にBongoを入れる。すぐに運転席から降りると、右隣にセンタースタンドを置いて場所取りだ。見渡したところ、今日のパドックはフルサイズマシンがほとんど。ミニモトと言えば、真似する気さえ失せるような走りをする“青ゼッケン”しか見つ…

フリー&フル 1

昨夜、遅くまで詰めていた事業場。4階建ての建物は、メリハリのない白い四角形と、それよりもっと小さなガラス窓で囲まれている。その白い外壁をかすかに望んで、国道6号線で利根川を渡る。取手の街に建ち並ぶ住宅をどんどん抜けていって、小貝川に架かる橋…

#357~その6(完)

harasa師匠のKTM125SXに続いて、kusaba車のヨシムラ管が、猛々しい音を撒いてパドックから消えていく。午後になってずいぶん回復したのか、コースからはハリのある良い音色が流れてくる。マディ用に準備した古いX-FIREに足を入れ、白いVFX-DTを被り、CRF150R…

#357~その5

午前中、コースが回復するのをじっと待っていたmachi-sanは、結局、入れ違いに帰ってしまった。ざりままもコースを走らない・・・せっかくのCRF150RⅡも、少し淋しげだ。その#357を知らない瞳に、ワタシと赤いマシンの取り合わせが、新鮮に映る。水たまりを避…

#357~その4

と思いを巡らせている間に、「あれ、知らないの?」saitoさんが思わせぶりなことを言う。「えっ!?」と返すのとほとんど同時に、はだけた黒いジャンパーの下から指二本分くらいの幅の白いテープが覗く。そのテープに押しつけられているのは、くの字に曲げられ…

#357~その3

「来ると思った」 13時を回ってから到着したコースの受付。階段から下りてくるなり、片手で申込書を差し出して、saitoさんが明るく笑う。こちらも口元をゆるませながら、走り書きした申込書と一緒に、westwoodの会員証とMX408のメンバーカード、そして“魔法…

#357~その2

It's alright if you want me It's alright if you need me Girl, if you want me to stay for the night, it's alright! 当時はA面のラストを何度も聴いていたけど、今日はIt's Alright。ここ最近は、聴くのも歌うのも、元気が出るところに落ち着いている…

#357~その1

このCRF150RⅡは、個体差なのか、サイドスタントで支えると必要以上に左に傾く。そのまま横倒しになってしまいそうな勢いだ。MX408コース情報を見てから、今日の相棒は赤い4ストマシンに決めている。ガレージから外に出す瞬間、RMには無い重量感が、ハンドル…

乾いた週末 5(完)

締まった土が、フロントフォークを固く弾いて、リヤショックを叩くように撥ねつける。それでも覚悟を決め、右肩に詰まった力を抜き、意識を集中させて人差し指を手前に引けば・・・フロントフォークはまっすぐに沈み、フロントタイヤを地面に押しつけながら…

乾いた週末 4

<4/11の続き> スタートラインからホームストレートを駆け上がるマシンを狙っては、その後を追う。スネークヒルを、座ったまま、右手だけでマシンを支えながら、後ろを振り返り仲間が近づくのを待って・・・shinくんのCRF250Rが、派手に土煙を上げる。フィ…

こちらも全開・・・じゃない、満開。

夕べ、ちょこっと水たまりを作るくらいの雨雲が通り過ぎて・・・その水たまりを、少し強めの風と明るい陽射しが撫でつけている。4月からの新しいお天気お姉さんは、画面の中、風に乱れる前髪を手で押さえながら「日中はぽかぽか陽気になりますよ」と笑ってい…

乾いた週末 3

SIDIのX-FIREは、これで3足目。サイズと良い、動きやすさと良い、これ以外のブーツを試す気にはならない。もちろん、westwoodの名物店長kuboちゃんからの“魅惑の招待状”が無ければ、絶対に手を出さない上物だ。新品だから足首の動きがぎこちないけど、下ろし…

乾いた週末 2

<4/8の続き> あれから五日だけなのに、マシンが駆けるたびに土埃が舞い上がる。路面がかすむMX408を見たのは、もう何ヶ月前のことだったろう。おかげで、持ってきてはそのまま持ち帰っていたSIDIの新品を、やっと試せるようだ。イバMOTOの最終戦でsaitoさ…

日暮里の繊維街。駅前のロータリーからその入口まで、小さな桜並木が延びている。陽が差し込まないビルの10階から通りに出ていくと、まぶしい明るさと同じぐらいに風が温かだった。ようやく春の陽射しに気温が追いついてきたようだ・・・もしかしたら今日は…

乾いた週末 1

4月7日。土曜日。晴れ時々曇り。都心では八分咲きになった桜も、関東平野の北側では、つぼみが薄く色づいているだけ。桜色に染まるまでは、もう少し待たないといけない。その“少し”どころか、数週間じっと我慢して、待ち続けて、ようやくやって来た“乾いた”…

まぶしくて、ぜいたくな午後 4(完)

<4/3の続き> 「少しはマシンもいたわってやらないと」天気予報士もあきれてしまうほど、雨の週末がもう何週間も続いている。MCFAJは二戦続けて雨にやられて・・・レースだけじゃない、雨が降りしきる土曜日に、雨あがりで泥まみれの日曜日。チェーンやスプ…

梅田?ちがう、大阪だってば~後編2/2

間口の割に奥行きがあるホテルは、一階ロビーの奥に天然温泉の浴場を設えていて、なかなかに気が利いていた。おまけに朝食の用意までしてあって、セミダブルのベッドがうるさくない程度の広さの“ROOM 311”で迎えた朝は、この手のホテルにしては上々の目覚め…

梅田?ちがう、大阪だってば~後編1/2

sumiちゃんに言われるまま、大阪天王寺にあるビジネスホテルを選んだのに・・・結局10時近くになってから、代わり映えのしない「餃子の王将」で一人寂しく「餃子定食」に食らいつく。性質の悪い低気圧がすっかり邪魔をして、元気な大阪娘に逢えないまま日付…

梅田?ちがう、大阪だってば~前編

7年ぶりになる大阪は雨の中。のぞみが新大阪に着いたのは、偏西風に乗って近づく巨大な低気圧よりも、少し早かった。行きの東京駅は、京葉線の地下ホームへと色付きの服を着た人が行列になっていたけど、新大阪の駅も明るくにぎやかだ。黒いスーツ姿の波間に…

まぶしくて、ぜいたくな午後 3

uchinoさんのcarryとは対角線上の位置に、Bongoを置いてみる。奥は意外と空いていて、両脇には、開けっぴろげなパドックが広がっていた。エースのコーラスがフェードアウトするのを待ってエンジンを切り、運転席から体を落とす。昨日とはまるで反対の方から…

まぶしくて、ぜいたくな午後 2

昨日、2時30分を過ぎてから、いきなり雨に打たれたコースには、10時を過ぎているのに走るマシンがほとんど見えない。洗車場に溜まった泥を、高圧洗浄機の先で吹き飛ばしているsaitoさんに窓を開けて手を上げる。「受付、後でイイですかぁ」と、勢いよく飛び…

まぶしくて、ぜいたくな午後 1

田んぼの隅に残された昨日の雨に首をかしげながら、Bongoを走らせていく。信号につかまっても、先頭で停まれるほど、クルマが少ない。いつもの週末より1時間30分も遅く走る往来は、人が動き、自転車が流れ、20台ほどのバイクが国道の脇にたむろしている。今…