2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

あなたは? 2

<2/24の続き> 木立の端からコースに入り右、左、右、左とコーナーをつないでいって、そこから一つコブを越えてビッグテーブルトップを跳び上がる。そして、インフィールドのストレートを短く駆けるまでは、たしかに湿り気の残った褐色がタイヤにうまく絡ん…

あなたは?

肩の下で捻れた右腕。薄いジャージとアンダーウエアが泥染みを作り、肌に濡れた冷たさを伝えてくる。SIDIのブーツのかかとはスイングアームに押しつけられて、動けないまま暗がりの林のすき間から、明るく光る西の空を仰ぎ見た。 「嫌いなモノは最後まで残し…

色褪せぬ時

ありふれた白いガードレールが時折きつくアールを描いては、複雑な海岸線をたどっていく。そのうねるような曲線に合わせて右に左にと切り返しているうちに、海は視界の遙か下に、青く沈んでいった。突き破ってしまえば助からないだろう高さにまでアスファル…

温もりの朝

薄く雲の張った空に、ほんのり水色が透けて見える。ふらふらと浮かび上がった太陽は、その雲の向こうに大きくにじんで、アスファルトにぼんやりと影を走らせている。誘う春の気配に枯れ色の林はそよぎだし、つかの間、田園の眺めがやわらかく震えた。見るも…

光と陰と 5(完)

<2/5の続き> よろめきながら斜面をたどるCRF150RⅡ。その細く乾いた軌跡をなぞり、RM85Lのリアタイヤが短くリップを蹴りつけ、光の中へと着地する。その光が、カレのすぐ後ろにまで濃く長い陰を映す。その背中には、軽やかに伸びる2ストロークの排気音が間…

光と陰と 4

<2017/12/15の続き> 得意なところがまるで違う。 ここで詰まって、ここで離されて。それはあっちもわかっている。逆光に消えてなくなった直線が、右カーブの手前になっていきなり姿を映す。走り慣れた感覚だけで走るRMが、ここで一気に差を詰めて、左、右…

54×54の魅惑 7(完)

<1/7の続き> 左右のステップに立ち上がり、そのまま腰から上をハンドルバーへと折り曲げて、暗色に沈んだ直線を駆け抜ける。そして85ccマシンなら間違いなく拾っては弾かれる凸凹を、小さなピッチングモーションだけでやり過ごす。気を良くしてスタンディ…