2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

夏は夜 1/3

たっぷりの汗と一緒に半谷を走り終えて、ゆっくり着替えをしてから戻ってきても、太陽はまだまだ頭の上、とても高くに居る。夏至を過ぎたばかりで、今が一番昼の長い時季・・・5時になっても一日の終わりを感じさせないし、まだ何かできそうな気にさせてくれ…

梅雨の晴れ間に 6

見通しが悪く、狭い入口からコースを横切り、ゆるやかなヘアピンカーブの外側に走り寄る。逆回りになったから、左に曲がって、まっすぐ駆け下りていく感じになる。反対に、今、渡ってきた直線は、奥から上りながら延びていて、低くて長いテーブルトップジャ…

梅雨の晴れ間に 5

聞いてみると、日陰にひとつ、大きな水たまりが残されていると言う。でも、それは、林の奥で黒光りする例の“逆バンク”じゃなくて、何でもない短い直線の入り口にあるらしい。それだけなら十分走れそうだけど・・・あまり歓迎していないのか、瞳と口元には、…

梅雨の晴れ間に 4

工業団地の入口で、もう一度左にウインカーを出す。しばらくして見えてきた竹林の手前に、遠くからは読めない大きさで「半谷モトクロスパーク」と書かれた看板が立っている。コース入口のチェーンが外されていることにほっとしながら、最後のウインカーと一…

梅雨の晴れ間に 3

関宿町の北側を形取る江戸川と利根川、二つの一級河川を短い時間で続けて渡りきる。橋桁から見下ろす河川敷には、巨大な長方形の水たまりが、いくつか並んでいた。土色に沈んだ平べったい光景に、気分がぐらりと揺れる。記憶に鮮明なのは、水はけの悪い日陰…

梅雨の晴れ間に 2

いつもは6時ちょうどにセットするアラームを30分ずらしていたのは、最初から行くところが決まっていたから・・・。“ホーム”にしているMX408は、関東選手権の真っ最中。すっかり選手権ライダーのニセmanabuに声援を送るのもいいけど、観ているくらいなら自分…

梅雨の晴れ間に 1

「富士の方も雨が降りだしたよ・・・」富士山を望む宿、その窓から雨の滴る外庭に向かって声をかける。知り合ったばかりの連中が、脱いだレインウェアをバイクにかけて・・・どうやら出先で予報どおりの雨に出くわしたらしい。そこからなぜか「これじゃあ走…

暗くなる前に

雲が薄れて、灰色から白へ。そして、夕空には青が戻ってきた。北西を向いたモルタルの塀に、やわらかな陽光が映って、うっすらと黄色に染めている。梅雨の晴れ間らしい、ムワッと不快な湿り気は乾いて、レース地のカーテンを揺らしながら部屋に入り込む風は…

カラオケでも唄います!

目が覚めたときには、明るい雨模様が広がっていた。二階の出窓の下、アスファルトには大きな水たまりができていて、その上に、容赦なく雨が落ちては無数のしぶきをあげている。手のひらほどのすき間を開けていた窓ガラスに手をかけ、ぴったりと閉めてから、…

気立てがよいのかも

明日の天気予報には、ずらりと傘のマークが並んでいる。曇りなのは、梅雨のない北海道だけだ。ただ、その傘も明日だけ。週末はどこも、どぎつい橙色の太陽マークに切り替わっている。今年の梅雨は、相当はっきりした性格の持ち主らしい。「降る」、「止む」…

without music・・・

湿り気に南の夏が混ざっているように、重ったるい風がカラダにぶつかり、空に吸われていく。青は高くにあって、ボロボロとした雲が、帯を解いたように東の空から延びていた。夏空と言うには、少し清々しい感じのする、透明な青・・・このまま秋に向かっても…

髪の長い女だって?

『BG』というバイク雑誌がある。buyers guideの名のとおり、中古のバイク雑誌だ。イラストで描かれた“年代物”のバイクが、毎号表紙を飾っている。インターネットがこれだけ日常になって、昔の“検索もの”には、ずいぶん肩身の狭い世の中になった。未だ現役を…

誰のもの?

東京の下町で過ごしていた頃は、まだ小学生だった。毎日に不満はなかった学校の帰り道、口にするのは決まって駄菓子で手に入れるものばかり・・・口の中は真っ赤や真っ黄に変色して、不純な色だということは一目瞭然。子ども心にも「合成着色料」がどういう…

Stratocaster

冷たい日が続いていて、夏の入口に立っていたことさえ忘れてしまっていた。でも、昨夜の雨は起きた時には止んでいて、風のない今日の曇り空は、少し蒸し暑く感じられた。それから少しずつ明るくなっていって・・・昼過ぎに姿を見せた太陽が、夕方の5時になっ…

雨の季節

失敗した。 RMと出かければよかったかもしれない・・・そんな思いを抱えながら、部屋を行ったり来たり。掃除機をかけて、一週間分のワイシャツを洗濯機に放り込んで、すっかりシロとネロを置き去りにしていたら・・・失敗した。五感のうちで、もっとも自信の…

イバMOTO 13(完)

そのまま緩く長い下り坂から、サンドセクションを抜けてフィニッシュラインをまたぐ。並んだ“師弟”の走りに、saitoさんはどんな言葉をかけているのだろうか・・・と思う間もなく、ココも苦手なホームストレートへの折り返しが迫る。スロットルを煽りながら、…

イバMOTO 12

飛距離も伸びてきたダブルジャンプを越えると、旗振りをしているryoが、何か言いたそうな顔をこちらに向けている。どうせ「先頭は、ずっと先だよ」と笑いたいんだろう。歯がゆい気持ちもわかるけど、ワタシの走りは、この辺でいっぱいだ・・・まだまだ練習が…

イバMOTO 11

周回ごとに差は詰まり、赤い車影が少しずつ大きくなっていく。そのほとんどは、フープスの出口で作られる。ロングテーブルトップで、チームメイトの声援を見下ろすokano師匠。後を追うようにして跳び上がったRMが、フロントタイヤ半分くらい、遠くに落ちる。…

イバMOTO 10

バックストレートを駆け上がり、止まっていた思考が回り始める。少なくても、「アウトを遠回りしていたんじゃ追いつかない・・・」と考えるだけの余裕は出てきたようだ。saitoさんが、バンクに土を盛って少しばかり高く積み上げてくれた、バックストレートか…

イバMOTO 9

まったく余裕のない展開、一気にカラダが熱くなる。okano師匠は上手く決めたらしく、目の前の集団の先頭にちらっと後ろ姿が見える。何も聞こえなくなった耳の奥で、心臓の音が大きく響く。送り出された血液が頭の中に充満して、ヘルメットがこめかみを締めつ…

イバMOTO 8

ローズ色のゴーグルレンズに、路面からの照り返しがにじむように光る。nakaneさんにmukaさん、nagashimaパパ・・・隻眼の蒼い獅子だけは特別かもしれないけど、まともに走って適うはずもない連中が、オープンを走るワタシの相手だ。せめて一周目ぐらいは、そ…

イバMOTO 7

半年ぶりに見る、灰色のスターティングバー。グリッド抽選のないイバMOTO、相手はみんな顔見知り・・・それでもレースはレース、真剣勝負に変わりは無い。いつもスタート寸前に飛び込むグリッドに、okano師匠を引き連れて少し早目に来たのに・・・二人が最後…

イバMOTO 6

スタート直後、勢い余った450ccの青いモンスターマシンを、インに盛られた土に乗り上げたtonny。今年からサンデークラスを卒業、オープンクラスを最後尾から追い上げるニセmanabu。その無謀な挑戦は、4レース目で「ミニモトオープンクラス」を走るワタシも同…

イバMOTO 5

午前中は、20分の練習走行を3回。3クラス分けだから、40分おきに順番が回ってくる計算だ。フルサイズクラスの練習風景を15分ほど、スネークヒルの外側から眺めてから、そろって坂を下りて赤や青や黄色のマシンに散っていく。いつもの練習と雰囲気が違うのは…

イバMOTO 4

このところ9時ギリギリにたどり着くパドック。今日は、まだ8時30分にもなっていない。いつもの受付は無いから、二階建てのプレハブの横は素通り。Bongoに気がついたのか、その先でざりままが手を振っている。トランポの外には#4のRM-Z250、ざりぱぱのマシン…

イバMOTO 3

浄水場を右手に、高台へとアスファルトが走る。坂の途中、バス停の信号機に路地が左からT字にぶつかる。okano師匠の家は、その路地を入ったところにある。イバMOTOに出走を約束したのが半月前。この天気で「どうするんだろう・・・」と考えながら、Bongoのア…

イバMOTO 2

天気予報から想像していた空よりも、少しだけ明るい灰色が、丸く広がっている。東と西のちょうど真ん中あたりが薄くなっていて、そこだけ白っぽく光が漏れていた。朝から降っていないだけマシだし、「もしかしたら・・・」と期待してしまう空の下、7時きっか…

イバMOTO 1

真っ先に名前を呼ばれて、表彰台の一番低いところに上る。左にはマイク片手のsaitoさんが佇んでいる。正面にしゃがみこんでいるsatakeさんは、小型のデジタルカメラをこちらに向けている。ポリカーボネイトでできた緩い弓形の屋根の下で、machi-sanとiguchi…

土曜日の朝

ベッドから起き上るまで、ずっと寝ているはずの土曜日・・・だったのに、7時を過ぎた頃から、2階で寝返りを打つたび、甘えた声が耳に障り始める。シロとネロの声だ。玄関から階段を上がり、寝室の扉をすり抜け、半身に転がった肢体を伝い、耳に届く。右に左…

願わくは 11(完)

<5/30の続き> 最後まで走って、結局まともにウサギとカメができたのは、この2回目だけ。3時10分からのラスト10分は、師匠もワタシもダブルジャンプは跳ばず仕舞い。跳び出しの“てっぺん”がヘンな風に削れてきたのと、着地にヘンなワダチができたのと・・・…