2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

54×54の魅惑 5

<12/7の続き> 弾けるエキゾーストノートを耳で追いながら、膝に巻き付けたニーブレースをきつく締め上げる。わずかにこぼれた光にエクスパッションチャンバーが、黒く自由な曲線を描く。そこから覗くパドックも、コースへのアプローチも、その優美な曲線に…

光と陰と 3

<12/11の続き> 午後3時30分、残り30分の走行枠。西日の射すコースを走るのは、二人だけになった。 ヘルメット越しに聞こえるのは、なだらかな曲線を弾みながら刻む、4ストロークの重たい排気音。その音と背中がまた、左アールを大きく外へと回っていく。最…

光と陰と 2

表の泥が削られ落ちて、濡れたバンクがうっすらと光る。その縁にリヤタイヤをあわせ、再び半クラッチから一気に斜面へと立ち上がる。陽を浴びた勾配にはCRF150RⅡの影が這い、エグゾーストノートを散らして、木々の陰の中へと跳び抜けていく。わずかに排気量…

光と陰と

傾いた陽が、褐色に陰影を落とす。その光を背に最終コーナーを翻し、左の人差し指を軽く引いて、前を走る4ストロークに近づいた。右に緩くベントした先は、一つコブを越えると短い直線になる。少し屈めた背中とマシンの後ろ姿が、現れた逆光にくっきりと浮か…

54×54の魅惑 4

<12/1の続き> 腰ではなく脇腹に傾げるマシンをレーシングスタンドに載せて、コースに延びるスロープをゆっくり振り返る。葉とも枝ともつかない細い緑がかすかにそよぎながら、朝の光を遮っている。夏の間、あれほど癒されたはずの杉木立も、今はただただ邪…

54×54の魅惑 3

開いたドアから勢いよく、朝の空気が流れ込んできた。 あれほどかさついていたパドックも、落ちた木の葉がしっとり濡らされている。ゆっくりとその上に降り立ち、バックドアーを跳ね上げれば、リヤフェンダーが青くすましてこちらを向いていた。両腕を大きく…