2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

来間大橋 2/2

その真ん中を背に、ゆるやかな弧が白くなめらかに海を這う。空の青は光に溶け出し、サンゴ礁はガラスに包まれたように、そのままの色に輝いている。誰もいない砂浜から伸びたアスファルトが、細い線になって対岸へと届く。宮古島と来間島にかかる1690mの舗装…

来間大橋 1/2

今までに足を踏み入れたことのない県が二つある。一つが佐賀県。40になる前、“リフレッシュ休暇”と名のついた一週間の休みをもらって九州を走旅したとき、ついに行きそびれてしまったところだ。まだ、曲がりくねったアスファルトの上を走ることに夢中だった…

750strike

<7/24の続き> 峠は切通しではなく、のどかに堂々としていて、傍らの松の木も気持ちよく枝を伸ばしている。その枝がアスファルトに濃い影を落し、道は照り返しがまぶしい中、左右に切り返しを始めて一気に高度を下げていく。反対車線の路肩すれすれを、白髪…

鳥居峠

よく耕された黒土は雨に濡れて、その上を花のように開いたキャベツが、波を打ちながら列を作って並んでいる。畑の起伏に合わせて道もゆるやかに上下しては、ゆっくりと高度を下げていく。そして、まっすぐな坂を下りきると、道は国道144号線にぶつかり交差す…

つまごいパノラマライン

軽井沢からの帰り道。正確には草津温泉からの帰りは、午後1時を過ぎたばかり。練習をサボったおかげで、まだ時間がたっぷり余っている、どしゃ降りを降らせた雨雲を、真上から太陽がちりじりに照りとばしてくれて、空には夏の青がきらめいている。三連休のど…

また来週

海の日がからんだ三日の休み。いつもなら梅雨も明けていて、真夏の青と白に、黄や黒が彩りを添えて、くっきりした色の季節が開けているはずなのに・・・今年は、ちょっとズレている。土曜日の濡れた夜は、日曜日の“気分”を初めから流しにかかって、気づけば…

想い出の地に 8(完)

田んぼの脇を抜けてコースへ曲がる狭い入り口には、サビ止めもいい加減な、ただの鉄製の鎖がだらりと掛けられていた。その鎖の前に軽トラを着けて、ryoがイグニッションを手前に回す。エンジン音とともにカーステレオから流れていた音楽が消えて、木々を触る…

想い出の地に 7

<7/16の続き> この先、いつ寄るかもわからないガソリンスタンドを横に見て、軽トラがゆるいカーブを加速する。角に錆色のレンガに囲まれたコンビニが建つ交差点を過ぎて、2つ目の信号。赤信号につかまった。ウインカーを左に倒し、サイドブレーキレバーを…

想い出の地に 6

巨体を横たえるハーレーダビッドソンが居なくなってから、すっかり橙色に染められた表の入口。プラスチックとゴムが混じりあった、“新車”の匂いをすり抜けていくと、そこは、原色に彩られたモトクロスジャージが天井に届くまで貼り付けられた、いつものwestw…

想い出の地に 5

<7/11の続き> 「この道、こんなに走らなかったこと、なくない?」 軽トラの助手席から、顔を前に向けたまま、ryoがつぶやいた。江戸川を渡って、関宿から梅郷に抜ける県道。窓から垂らした二の腕に、生ぬるくなった風がまとわりついてくる。誘われた袋田ま…

想い出の地に 4

<7/9の続き> バイクの“後脚”は、仕事量が多い。小粒でも“大人仕様”のワタシを支えて、ジャンプの着地では、ガツンと音を上げながらも踏ん張り、突き上げるギャップの衝撃は、とことん吸収して何事もなかったように車体を前へとすべらせる。キッズ仕様の85…

想い出の地に 3

外したステアリングステムは、サビが浮いていることもなくて、ネジ山もきれいなまま。シャフトの下にくっ付いているテーパーローラーベアリングにも、濃紺の防水グリスがきれいに残っている。フレームの首に打ち付けられたアウターレースを人差し指の腹でな…

想い出の地に 2

<7/6の続き> 3坪の空間には、前後輪が外されたKX85-Ⅱの他に、dukeとCRFが収まっている。外は雨、散らばった工具と2台のバイクに挟まれて、KXの周りを動くのにも半身を捻らなければいけないくらい。ヘンな格好で左脚を着いて、ヒザがグラリとあらぬ方向に曲…

想い出の地に 1

夜空に浮かぶ、真っ白な半月。その周りには、いくつもの星が散り散りにきらめいていた・・・。 そんな月夜がくれた朝、雲は途切れ途切れに薄く張り、うっすら顔をのぞかせた青色から、あきらめていた光があふれ出る。貴重な梅雨の晴れ間、青々とした稲穂の向…

RESPONSE

朝から雨の土曜日。明け方、乾いたところものぞいていたアスファルトも、今はしっかり濡れそぼち、雲を抜けて届く光が、その表をうっすら白くきらめかせている。止みそうにもない雨に観念して、シロとネロを遅めの散歩に連れ出す。気休めの麦わら帽子に綿のT…

不楽是如何

生ぬるい湿り気がはびこる東武線の車内。夕刻の帰宅時間は、きまってすし詰めになる。化繊の薄いワイシャツ越しに、背中合わせの女性から、体温がジワリ伝わってくる。天井に付けられた空調はただ動いているだけで、密集した人いきれをかき混ぜながら唸って…

ガリバー旅行記

夏・夏・夏。 改札の真正面にある本屋さんは、棚も平積みも、夏の文字でにぎわっている。梅雨が明ければ、もう夏休み。旅行雑誌の一角は、夏の光に空も海も真っ青で、川面には山の新緑が映りこんでいる。この時季、必ず並べられる北海道の案内本は、中標津の波…

7月の陽光に

薄い青に塗られた空と、そこから降るまばゆい光。暑く湿った朝ばかりを過ごしていたせいか、アスファルトに落ちた黒い影が、瞳にうれしそうに映りこむ。すっかり乾いた風は、街に音の輪郭を響かせて、通りを駆けるフレアスカートをさらりと躍らせた。ゴムの…