2011-01-01から1年間の記事一覧

2011もそろそろ・・・ 5(完)

コントロールラインを越えて、もう一度左にマシンを翻す。ホームストレートを駆けるRMの上で右に視線を流すと、左にひねられていた蛍光橙色のヘルメットが前に向き直り、#129のCRFが第一コーナーに加速を始めた。第一コーナーを大きくアウトにはらむRM・・・…

2011もそろそろ・・・ 4

<12/25の続く> 後ろを受付小屋に押さえつけられているから、RMをそのまま降ろしていくとぶつけてしまいそうだ。ラダーの上で斜めになった黄色の車体を、iguchi師匠が後ろから支えてくれている。裏地がボアになったベンチコートを着込んでいても、足下から…

あみプレミアムアウトレット 7

<12/22の続き> 思いとは裏腹に、本気でMX408を攻めて走る。“一日の長”はワタシにある。アウトを回って立ち上がるRMの鼻先へ、インから挑んでくる姿に感心しながらも、気にせずKXの前を塞ぐように真っ直ぐ立ち上がる・・・。koha-chanのおかげで1クールを30…

“7200秒”の中華三昧~後編(完)

フリッターの皿を空にして、“締め”の炒飯を平らげると・・・もはや畳から立ち上がることさえおぼつかない。東北にツーリングした時、わんこそばに挑戦したあげく、RGV250γのハンドルに手が届かなくなったことを思い出す。まったくだらしなく、這うようにして…

“7200秒”の中華三昧~後編4

<12/9の続き> その後も、次から次へと華やかな料理が運ばれてくる。いつの間にか給仕は、亭主の息子らしき小男に代わっていた。さすがに六人の大人げない注文をさばくのに、忙しくなったとみえる。白くて丸いだけの大皿が、食卓の真ん中、どんどん積み重な…

傍惚れ~前編

「へぇ~そうかい・・・あたしゃそうは思わないけどねぇ」しかめた眉はハの字に、真っ赤な唇をすぼめ、長身を折り曲げるようにして組んだ足に肘をつく。混り気の無い、鮮やかな青のシャドウをまぶたに塗りひろげて、瞳の輪郭が黒く濃く縁取られている。人が…

2011もそろそろ・・・ 3

最後の細い坂を下りて、くねった田んぼ道からコースを覗くと・・・9時を過ぎて走っているのはKX250Fが一台だけ。いつしか東南から雲の帯が延びて、薄灰色にコースの上を覆っていた。受付にsaitoさんとmachi-sanが体を寄せ合うように立っている。窓ガラスを下…

2011もそろそろ・・・ 2

ネロちゃんを連れていこうとしたのが間違いだった。“お出かけ”用のバッグに入れて、出入り口を少し開けていたら・・・すき間から這い出てきて、部屋の隅に逃走だ。折り悪く、“天敵”のkeiがコタツに入っているもんだから、テーブルの真ん中に隠れたまま、呼ん…

2011もそろそろ・・・

青いペンキが塗られたコンテナと、二階建ての受付小屋の間・・・風を避けた空間で、RMのクランクケースからミッションオイルを抜き出す。オイルらしい粘りけと琥珀の色は無くなり、ただ黒ずんだだけの液体が、ボルトを外したドレーンからまっすぐに垂れてく…

あみプレミアムアウトレット 6

スネークの入口、暗い右から左への切り返しも、土がブルドーザーのキャタピラ痕のまま凍っていて・・・いきなり進行方向と全く関係ない方を向くフロントタイヤに、驚かされる。寒さで体が強ばり、よろめいて、短く急な坂がおぼつかない。もう少し、凍った湿…

あみプレミアムアウトレット 5

スターティンググリッドの前で、気前よく白煙をまき散らす。誰の眼も気にすることなく、RMのエンジンを暖める。そんなRMを横に見ながら、KX85Ⅱが第一コーナーに消えていく。第二コーナーからテーブルトップを跳び上がる車体が、太陽を正面にして緑色に光る。…

あみプレミアムアウトレット 4

「あの親子連れ・・・ほら、小さい子とお父さんとお母さんと、三人でよく来てたじゃない?今日は居ないの?」パドックをすき間なく埋めるトランポと、消音しきれていない4サイクルマシンの排気音・・・そんな喧噪から逃げるようにして、奥の方にひっそりと軽…

あみプレミアムアウトレット 3

一緒にいるのが“カミさん”だということ、ryoはアバラがひしゃげているので走れないこと・・・そして、午前中で上がって、“あみプレミアムアウトレット”に連れて行く約束をしていること・・・。もの珍しそうにBongoを窺う視線のひとつひとつに、そう答えて廻…

あみプレミアムアウトレット 2

入口の段差を、いつもより慎重に乗り越える。洗車機が収まるコンテナの中にsaitoさんを見つけて、運転席の窓を降ろし始めると・・・ヒーターで暖められた車内に、冷たい空気の塊が吹き込んできた。助手席のkeiを見つけて、目が丸くなっている。深い紅色のベ…

あみプレミアムアウトレット

月が、東に向いた半分だけを白く灯して、蒼い空に高く浮かんでいた。東の空は日の出を待って、点けたばかりのストーブのように、薄く橙色の帯を水平に延ばしている。田んぼの縁に並んだ二軒のトタン塀が、その灯りを受けて燃え立つように光っていた。土の上…

2011年最後のレース~その12(終)

フィニッシュラインを過ぎて、左に折り返しながらテーブルトップの上に立つ。iguchi師匠に、目の前の出来事を短く話して、ホームストレートとは反対側にコースを出ていく。パドックに入ると、スネークヒルの下りで見ていたshinくんのお仲間に声をかけられた…

2011年最後のレース~その11

インをえぐるように走るには、手前にある邪魔なコブを乗り越えなくてはいけない。しかも、崩れかけた路肩が、そのまま斜めになって水たまりに落ちている。コブを避けて、外側をかすめるように立ち上がるのが・・・普通の走り方だ。tomobeさんは、そのライン…

2011年最後のレース~その10

危うい走りのtomobeさんも、さすがにフルサイズの経験が豊富だから、簡単には崩れない。そんな二人、サボっていたわけでもないのに、いつしかryoの“射程”に入ってしまっていた。あれほど後ろに離れていたのに・・・「ryo、驚異の追い上げ。白熱した二位争い…

2011年最後のレース~その9

「因縁の対決」とは、レースの後にtomobeさんが口にした台詞。そんなつもりはさらさらないけど、Loc-Xと同じ展開に、何か近いものを感じてしまう。ただ・・・今日は離さない。うらやましかった新品のリヤタイヤも、ここまで路面が締まれば敵じゃない。午前中…

2011年最後のレース~その8

少しずつ離れていくのは・・・底力の差だろうか・・・。振られても前に進むCRF150RⅡ。次第に薄れる低い排気音の上に、2サイクルの高音が耳障りなくらい響いてきた。「ryoか」。逃げていくmori-yanを追うには、ずいぶんのんびりと、RMの後ろに着いている。そ…

2011年最後のレース~その7

RMを暴れされることも無く、第二コーナーからテーブルトップジャンプを跳ね上がり、インフィールドへ。ただ、レース時間が経たないうちに“腕上がり”してしまいそうくらい、ハンドルを強く握りしめている。小さいコーナーを二つ越えてステップダウン。そして…

2011年最後のレース~その6

<12/8の続き> 右手も左手も、今日は冴えていた。コの字型した灰色のバーを、コンクリートの台座に落ち切る前に、フロントタイヤがまたいでいく。両脇にマシンが居ないってことは・・・上手く出られたはずだ。RMも傾くことなく、まっすぐに第一コーナーを向…

“7200秒”の中華三昧~後編3

<12/3の続き> この六人が宴席に顔を揃えるのも、この先、花見の頃までは無さそうだ。忘年会には少し早いけど、この歳になって“初めて”の体験ばかりだった2011年に、皆がジョッキとグラスを傾ける。他に誰もいない部屋、高い天井にガラスのぶつかる音が反響…

2011年最後のレース~その5

このイバMOTO最終戦が、今年最後のレース。わざわざ相手をしてくれるtomobeさんは、この日のためにリヤタイヤを新調してくれて・・・おかげで午前中の練習走行は、泥を浴びせられるばかりだった。午後になって、レース前の路面がワタシに微笑む。固い土が顔…

2011年最後のレース~その4

同じ線の上で走る、二台のYZ250F。スネークからは一番離れたフープスで、ニセmanabuのヘルメットが少しだけ前に近づく。そこから、大きく左に回ってバックストレートの後半まで、姿が見えなくなって・・・スネークの入口、右バンクに最初に突っ込んできたの…

2011年最後のレース~その3

前に見えるマシンがどんどん近づいてくる・・・レースの最中で、これ以上気分が乗ってくるときはない。その“ノリ”のまま、KX250Fを抜き去り、さらに前を走るMr. GのYZ125にまで挑みかかるニセmanabu。かわされたtoudouさんも、このまま引き下がれない・・・…

2011年最後のレース~その2

昼休みにやり忘れた“混合”ガソリンを作っていて、肝心のスタートを見逃してしまったけど・・・saitoさんが、shinくんのブッちぎった“ホールショット”と、ニセmanabuのクラス3位を、パドックに流れるFMに乗せていた。すぐに4サイクル250の破裂音が風に流れて…

2011年最後のレース

砂町の交差点を突っ切って、真っ直ぐ南に下がっていく。田んぼの中、まだ、あんず色に染まる西の空に、富士山が黒く浮かび上がっている。弓を二つ並べたような特徴的な裾野が、地面と水平になるところまではっきりと見える。雲ひとつない、夕暮れ。地面にた…

“7200秒”の中華三昧~後編2

予定を10分ほど過ぎてようやく、幹事を先頭にして、武蔵小杉からの三人組がやってきた。前回と同じ顔ぶれ、ちょうど夏の盛りに、新宿で騒いだ連中だ。見覚えのある白髪交じりの頭が、ガラス戸から中へと入っていく。すぐにそれとわかる抑揚で、中国人の亭主…

“7200秒”の中華三昧~後編1

クルマ一台分ほどの幅しかない路地に、寿司屋が三軒、散らばっている。入り口にも二軒あったから、ここから見えるだけでも五軒・・・さすがに築地だ。その築地、格子戸が続く路地裏にあって、透明なガラス戸に、飾りのない黒褐色のイスと四角い食卓が映る。…