2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

三週間後はきっと

気の滅入ることばかり、散々な六月だった。 ただ、こうして雨上がりの夜気につつまれていると、19年ぶりにフェリーで北海道に上陸したことや房総で洒落た旅ができたこと、そして、浦安の街並みを走れたこと。愉快な日々だけが思い出される。 「空にかかる雲…

奇跡の日曜日 5

いろんなことがあって、それも全部中途半端なままで。おかげでこの半月は、触る気も失せてろくに整備もしてやれなかったRM85Lが、褐色を蹴り上げて加速を始める。湿度のせいか、それとも雨を吸った路面なのか。薄目に振ってある2ストローク85ccが、鈍くも鋭…

奇跡の日曜日 4

1時間半かけてかすみがうらにたどり着くまで、Bongoのフロントワイパーが動くことは一度もなかった。下り坂のアスファルトからゆっくり左にハンドルを切り、そのまままばらに停まった先客のトランポの間を縫って、受付から一番離れた場所でエンジンキーを手…

奇跡の日曜日 3

今は止んでますベスコンです! このまま昼まで寝てやろうかと思っていたのに・・・SNSに「来週・・・」とコメントしたら、すかさず返事が返ってきた。もう一度カーテンを開けて外を眺めると、水たまりに広がる波紋が数えるほどになっていた。空も明るい鼠色にな…

奇跡の日曜日 2

夜明けにガラス戸の外は、音を立てて濡れていた。 アラームよりも早く目が覚めて、明かりのこぼれる遮光カーテンを思い切り横に引いてみる。延びる路地のアスファルトは黒く光り、そのところどころでいびつに滲んで、水たまりを広げていた。そうしている間も…

奇跡の日曜日

目の前に迫るコーナー。ゴーグルレンズの中で大きくなる茶褐色の切り返し、ヒジを張った両腕をブレーキングギャップが突き上げる。ブレーキレバーでフロントフォークを縮め、シートの端に腰を落として車体を翻し、また右手が動かなくなるまでスロットルを捻…

明日のために

たったひとつのことにココロをかき乱されて、ガレージに入るのも半月ぶりになってしまった。暗がりの中、ようやく握ったグリップからは、手のひらを渡るリブの感触がはっきりと伝わってくる。ゼッケンプレートやバーパッドには、半月前の土の埃が乗っかった…

ハッピーエンド

さよならが喉の奥につっかえてしまって 咳をするみたいにありがとうって言ったの back nmuberのハッピーエンドはたしか、そんな歌い出しだった。 「さよなら」ではないけど、ほとんどひと月つっかえていたものは、やっぱりそのまま残ってしまって・・・また…

三度目の・・・

正直といきたいね。 吉報を祈って、幸せの黄色を一枚。 さあ、行ってこい!

夏至のヒカリ

昨日までは、梅雨入りが間違えていたような晴天と乾いた風の日が続いていたのに・・・初夏にあって大好きな一日は、ガラス戸を叩く雨音で始まった。木陰に砂がまだ白く残っていた朝も、今はすっかり濡れそぼち、太陽は厚い雨雲の彼方。雨は、むきになって降…

The GREATEST!? band in the world, KISS!!

1979年6月、周りのすべてが“受験”に転がり始めた頃の話。 いつもと何か違うMCと、邦題「暗黒の帝王」のオープニング。そして、スタジオテイクよろしく、レスポールをハウリングさせたエース・フレーリーがステージの真ん中に立つ。高校に進むだけのことが“戦…

小さな巨人

撮りためていた二話を一気に見た。 ひさしぶりに面白いドラマだった。 短気を起こして粋がって・・・そんなに急いで会社を辞めなければよかったと、少し後悔した。大した企業じゃないし、大したことも出来やしないんだろうけど、ヌルくて真っ黒な魑魅魍魎に…

夜を渡る月

夜を追いやる太陽も、闇は照らさない。 雲の這った夜を晴らすように空に月が光る。滲んだ月光は、漆黒の波間に砕けながら、まっすぐこちらに向かい渡ってくる。そして揺らめきながら、いつまでも航路に寄り添い、闇を照らし続ける。 振り返ると、独り佇む甲…

房州の恋心

鋸南町の南の外れから鴨川へ。 海岸線を離れて穏やかにアスファルトを流していると、道はすぐに、緑を切り取る急峻なワインディングに変貌する。半島を東西に渡る県道は、まったく通りがなくて、夏を前にした休日にはさほど利用価値がないのかもしれなかった…

Only Time Will Tell

濃くも薄くもしてくれる。 新酒にとろみをつけていくと思えば、少しずつ気を抜いていく。落ち着かないと思った日々は少しずつ日常に戻っていって、わだかまりはココロの近いところに残ったまま、とけることはないけれど・・・過ぎゆく時の中で気分は、少しず…

梅雨の晴れ間の根比べ

まだらな鈍色の空を割って太陽が、夏の青を大きく広げて見せた。そのまま黄昏が明るく暮れていき、星が瞬く宵闇にも、雲は見えない。そして肌に触る風は、どこまでも乾いている。 「梅雨の晴れ間」と片づけてしまうのはもったいない夜に、蛙の声がにぎやかに…

前夜に・・・

我、吉報のみを信じ待つ。

オレは・・・

身の回りのものと大きな荷物、そして自転車と。それよりも大事なものを、オレは持ってこられたのだろうか。置いてこられたのだろうか。 巨体を震わすエンジンは低く唸り続けて、気弱なココロをずっと揺すり続けている。旨い酒に酔わされていなければ、きっと…

Good luck !

ちぎれ雲がひとひら、青く冴えた空を流れていく。延びるアスファルトを包み込むように枝葉が茂り、その上から太陽が眩しく照りつける。そして、乾いた風が強く林を揺すっては緑を揺らし、ヒカリは乱反射する。 風と色とヒカリと。ちょうどひと月、季節を巻き…

最後の夜に

結局降られたのは、移動するBONGOの中か温泉に浸かっているときだけ。外を歩くときは決まって雲が切れ、青空とともにまだ春を思わせる陽射しが注いできた。たしかに雨は、風を連れて激しく音を立てる瞬間もあったけれど、昨日今日とryoもネロもワタシも、濡…

まもなく

舳先を苫小牧に向けたまま、藍色の海を割って船が往く。邪魔するものは何も誰もない太平洋を加速も減速もせず、ただひたすらに。緑色した甲板は濡れそぼち、その上に雨の滴がいくつも小さな輪を描く。エコノミーの狭い寝床にカラダを横たえるのにも、もう飽…

半分、半分

もう20年振りになってしまった商船三井のさんふらわ。バイクではなくてクルマで、連れもryoではなくてネロちゃんで乗り込んだ。面影があるようでないような船内をぐるりと周り、最上階のAデッキへ、螺旋の階段を上っていく。もっと長く広かったような階段は…

嬉嬉とした日曜日 3(完)

首の骨を折ったこと、その後すぐにCRF150RⅡを手放したこと、傷が癒えてしどきを走ったこと、今日は霞ヶ浦で釣りをしてからやってきたこと。愛機のキャブレターを整備しながら、Show-Gが話を続ける。 MCのレースを止めたこと、ryoが北海道に行きっぱなしにな…

嬉嬉とした日曜日 2

運転席を下りて見渡せば、遠くに“SCRAPPY”の文字を浮かばせた白いトランポが並んでいる。いつもと違うにぎわい、圧倒的に少ない4ストロークの咆哮に嬌声の混じるパドックは、カレが連れてきたのかもしれなかった。初めて見る顔と挨拶を交わしながらそのトラ…

嬉嬉とした日曜日

ちょっとだけ遅く起きた朝、昼には焼き蛤が食べられると聞いて、いつもの県道を急ぎつないで走ってきたら・・・通りからは見えないはずのトランポがパドックにあふれ、左に倒したウインカーのまま、一瞬ハンドルを切るのをためらってしまった。9時を少し回っ…

進入と、脱出と 6(完)

RM85Lにサイドスタンドをかませて、汗に濡れたヘルメットを脱いでいると、背中から低い笑い声が聞こえてきた。「進入と脱出の速さがまるで違う」と、ワタシとkyo-chanの走りを見ていた#2さんが、はっきりと言い切ってくれる。最終コーナーとフープスの前後、…

進入と、脱出と 5

置いていかれたら、先に逃げ出すわけにもいかない。 しびれた右腕をバックストレートエンドでぶらぶら振っては、だんだんと離れていくCR85改の、その音だけを頼りに食い下がる。それからどのくらい周回したのだろう、どのコーナーでもブレーキングがいい加減…

進入と、脱出と 4

第2コーナーを、インの山ぎりぎりに立ち上がるワタシに、#2さんが身を乗り出して両手を叩く。そして、第3コーナーを回ってフープスを正面に捉えた瞬間、とうとう右からCR85改が割ってきた。テーブルトップのランディング、斜面を斜めに下りながら小さくマシ…

進入と、脱出と 3

<5/31の続き> その音に急いて1速まで落としきれずに、2速でゆらゆらと小さな弧を描く。左足を出さずに木の根元を回り込むのは、先週教えてもらったライン。そこから次のアウトバンクに向かって半クラッチを当て、短く加速する。踏みつけたブレーキペダルが…

・・・また一難

一難去ってやってきた災難がまた、落ち着かない日々を連れてくる。 不確実に祈るだけの時間に、何もできない無力感が重なって・・・今度はそれが二週間も続くことになった。「きっと大丈夫!」と言葉だけの気休めは、言っても仕方がない。それでも「何でもな…