2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

旬の色彩

朱色から赤紫、紅色に真っ白な花が、朝の空にまばゆく映える。ふわり枝振りに色を這わせ、躑躅が咲き乱れる。さかりのまま落ちた花は、足下に彩りを敷き詰め、ヒカリを宿す。夏日の館林、今だけの色彩に眩惑のひととき。

短い旅で始まる、ちょっぴり長い旅

KUSHITANIのカントリージーンズに綿のパーカーを合わせて、上から赤いKUSHITANIのGORE-TEXジャケットを羽織る。足下のGORE-TEXブーツにも、両手にはめたデニムライクなレザーグローブにも、同じKUSHITANIのロゴが光り、全身をKUSHITANIに包まれて、GROMのク…

夜に惑う

晴れから午後は天気が急変 雷雨や突風、雹にもご注意 長い休暇はどうやら、荒れ模様で始まるらしい。冬の名残と夏の気配が、春の終わりに悪戯。BongoにRMを積んではみたものの、どうにも気持ちの乗りが悪い。ならば、シートに包まるもう一つの黄色でも転がし…

曲がるんじゃない 5(完)

6速を抱く長いストレートに独り酔いしれ、迫るターンをただ曲がっていただけ。でも、それは、やっぱり違ってた。 「もう少し立ったままで入れたらいいかな」 「座ったらもう、曲がらなくなっちゃうし」 “玉”の軽い2ストローク、それも85ccエンジンならなおさ…

曲がるんじゃない 4

ビッグテーブルトップを必要なだけの飛距離でまとめると、金属を引き裂くようにひときわカン高いエグゾーストが、奥の林にこだまする。「アウト寄り」なんて甘いもんじゃない。コース幅いっぱい、少しせり上がったアウトの端を乗り上げるようにして走り、ス…

曲がるんじゃない 3

同じ2ストローク85ccエンジンなのに、どうしてこれほど違うのだろうか・・・踏みとどまろうとするココロを粉々に砕いて、乾いた排気音が、褐色の埃に見えなくなっていく。 インフィールドのストレート分は離れていたはずなのに、その差をストレートエンド、…

曲がるんじゃない 2

東に向かって約60km、時間にして1時間半のところにあるMOTO-X981。昨日の午後、家の庭先にしっかりと雨を落としていった空雲は、この距離まで届いていなかった。雨はパラッと、天気予報どおりのにわか雨が通り過ぎただけで、水たまりの一つや二つはできてい…

曲がるんじゃない

5時を過ぎても陽はまだ西の空高くにあって、走るアスファルトに街路樹の影が小さく落ちて揺れている。国道から離れると、あとは田舎道を5kmほど行けば、帰る家も近い。利根川にかかる有料橋の袂、来るときはだらり釣り上げられたように垂れていた錦の鯉たち…

晩春の候 6(完)

あとは疲れの浮き出たKAWASAKIの背中を、後ろに追いやるだけ。テーブルトップの斜面を下りきって、今度はワタシが、KX250Fのイン側にマシンをすべり込ませる。小さな車体を、もう縁に乗り上げるしかないくらいに寄せながら右に向きを変えて、フープスへは先…

晩春の候 5

<4/19の続き> 南の空高くに浮かぶ太陽。陽射しにシルエットだけのKX250Fが、いつまでも土煙を引きずるから、コーナーは霞んで、息苦しくなる。唇をすぼめるようにしてひとつ息を吐き、砂と一緒に温い風を飲み込んだ。それでも、一周ごとに近づく砂塵に勇気…

R.I.P.

HONDA嫌いで袈裟まで嫌いなワタシは、スペンサーもガードナーもドゥーハンも・・・誰も彼も最後まで、好きにはなれなかった。往年の片山敬済でさえ、気持ちはそう変わらなかった。学校を卒業して社会に出てからもロードレースへの熱は冷めないまま、2ストロ…

晩春の候 4

前を行くKAWASAKIと、後ろを走るSUZUKI。2台の250ccマシンには、揃いのヨシムラがおごられている。その弾ける音色に挟まれたまま、午後の周回を重ねていく。昼休みまでは調子よくフロントタイヤをコブにぶつけながら駆けたフープスも、肩甲骨に重たく響くよ…

晩春の候 3

午後の一本目は決まって、走るマシンもにぎやかになる。最終コーナーを立ち上がる、いくつものフルサイズマシン。その隙間を見つけ出して、土煙の中に走り出す。2速に入れたまま右手を捻れば、わずかな動きに車体が反り返るように跳ねて、背中が後ろに置いて…

晩春の候 2

<4/15の続き> ジェットニードルのクリップを一番高いところにセットして、生温い風が舞うコースへと締まった砂利を蹴り上げる。右の手のひらを引くようにするだけで、リヤタイヤは派手な唸りを上げ、すぐにフロントフェンダーが視界を遮る。木立から漏れる…

The Isle of MAN 3(完)

<2017/4/14の続き> 薄桃色のカウルに包まれたマシンと、それを駆る日本人。そして、傍らで支える人の微笑み。時折流れてくるFacebookには、そんなカットとともに、モトクロスコースで行き会う彼女とは違った横顔が、小さく写り込んでいた。声援を送るので…

晩春の候

晴れていたかと思えば雲に覆われ、落としていた視線を持ち上げるとまた、空一面に青が広がっている。落ち着きのない空模様は、吹きすさぶ南風の仕業。そして、昼休みが終わろうとするパドックに、Rock And Roll All Niteのリズムが流れてきた。I can't hear …

The Isle of Man 2

<2016/11/26の続き> 羊の群れがはるか丘の上、のんびり草を食んでいる。アスファルトに跳び出さないよう、短く先を尖らせた石の柵がびっしり路肩にめぐらされ、その端で革のツナギを着たライダーがポリスマンと微笑み話している。ポリスマンの手にはスピー…

RVFの風

4ストロークV型4気筒。398ccを抱いたトリコロールが、国道の反対車線を加速していく。スクリーンに身を屈め、遙か前方を見据えるAraiのスモークシールドに、陽射しが割れて落ちる。陽は高く上り、アスファルトに濃く小さな影を連れて、低く濁ったエグゾース…

Another tomorrow 4(完)

インタークーラーターボのレスポンスに彼女の左足が一瞬遅れて、車体が飛び出した。コンソールに重ねていたカセットテープもバラバラになって、シートの下にこぼれ落ちる。あわてた彼女に手のひらを見せ、シートベルトを外してから、ひとつひとつ拾い上げた…

Another tomorrow 3

一夜が明けて、けだるさの向こうに、艶やかな影が浮かんでいた。北陸の雪は、いつしかガラス戸を叩く雨に変わっていた。夕べのことが、伏せた彼女の瞳に赤々と灯されている。シーツを剥いで、やわらかなふくらみに頬を寄せると、少しひんやりしていた。アタ…

Another tomorrow 2

<2016/3/22の続き> 「あめ」と黒く書かれた暖簾にカラダを隠して、丸い顔だけツンとのぞかせて。昨夏の思い出に、色あせた彼女の笑顔がにじんで溶ける。あの日のように明るいヒカリの下で、木綿地の暖簾の白は本当に眩しかった。この佇まいだけは、きっと…

晴走雨読

そぼ降る雨の中、健気にレースを走る者もあれば、こうして部屋に寝ころび、灰色のガラスを眺めるだけ者もいる。 湿気た花火のように気持ちはうなだれ、外に出かける気にも、ガレージに入る気にもならず。そしてKISSを鳴らし、ストラトを握ることもなかった。…

旧き良きair-cooledのように

雲が割れることもなく、せっかくの休日が宵闇に落ちていく。ガレージの愛機RM85Lは、二週続けてセンタースタンドにかけられたまま、変えたハリの具合を試すこともできないでいる。ロンTを一枚では少し涼しくて、でも上に何か羽織れば、すぐに脱いでしまいた…

春の色

緑葉が雨を丸くいくつも湛えては、吹く風にまかせて、ひといきに地へとまき散らす。温く湿った春風の朝に、菜の花が曇天の底を黄色く照らしている。いたずらにその花の束を払うと、滴がはじかれ飛んで、パンツの裾に小さな染みをいくつも着けた。 週の初めに…

Comin' Home 6(完)

二作目のアルバムHotter Than Hellには、エースの手による曲がなぜか多い。 Comin' Homeは、Word & MusicにFrehley and Stanleyとクレジットとされている。彼とポール、めずらしい組み合わせの一曲だ。地方公演を続ける彼らが、はるか遠く、自分たちの暮らす…

Comin' Home 5

それでもしばらくコースであがいては、バックストレートの上にゆるやかな放物線を残してから、パドックへと続く砂利のスロープを下りていく。ヘルメットを脱ぎ耳をすませば、やわらかな陽射しと暴れた排気音越しに、アンプラグドの旋律が泳ぎだす。「one, tw…

Comin' Home 4

<4/1の続き> 最終コーナーが始まる手前、まだ路面が平たく真っ直ぐななうちに、並んだKX85-Ⅱの前に出る。そのまま乾いたサウンドを引き連れて、木漏れ日の中を走り抜ける。そして、ひとつ大きく息を吐くと、肩のチカラを抜くようにして、あの第2コーナーを…

春まだ浅き ~後編~

シフトペダルを踏み込み、GROMでアスファルトを蹴り出す。原付二種のゆるい加速が、ほどよい加減で通りを駆ける。空は霞んで、陽射しの輪郭も、路に落ちる陰も、うっすらぼやけて続いてく。法定速度を超えようと流れていけば、襟元のわずかに露わな首筋に風…

春まだ浅き ~前編~

少し時代遅れな、蛍光オレンジのフリースジャケットの上から、薄いGORE-TEXを羽織る。KUSHITANI製の赤いそれは、しばらくバイクに乗らなくなった知り合いから譲ってもらったもの。一緒に揃えたワタシのそれは、もう色がトンでしまっていて、引き替えに処分さ…

Comin' Home 3

着替えるだけなのに、すいぶん時間を掛けて、ようやく陽光の下に漕ぎ出した。 最終コーナーを回ってきたKX85Ⅱの後ろについて走り出すと、第2コーナーにできた大きな水たまりを避けながら、アウトバンクの縁をよどみなくスルリと回って逃げていった。しっかり…