2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

二つの背中に 8(完)

<7/29の続き> 2速に落としてシートに座ったままで鋭角を跳び出すには、まだ勇気が足りなかった・・・。 飛距離の差をそのままフィニッシュのテーブルトップまで持っていって、CRF150RⅡの後ろでチェッカーを受ける。折り返してすぐ、隣にあったその背中に…

2年ぶりに榛名の夏

信号のない片側3車線の高規格道路を結局選んで、ひたすら南へと下がっていく。豚丼と半そばのセットで腹も膨らみ、インター近くの温泉でカラダをゆるめて、真っ暗な夜のハイウェイの真ん中の車線を流せば、思考がぼやけてくるのもしかたがない。かすれそう…

二つの背中に 7

<7/25の続き> 左から右へ。彼とは真逆のラインでコーナーのインとインとを斜めにつなげば、ゴーグルレンズが見る間に蛍光オレンジに染まる。わずかに早くCRFが、アウトから加速を始めて、轟音がヘルメットを叩く。他に聞こえる音もなし、左の人差し指が無…

三日天下

いつもの年から遅れること七日。ようやく雨の季節が北へ去っていった。 それなのに、見上げれば空にはうっすらと雲がかかり、その上をいくつもの綿雲が漂い流れては、真夏を遮る。歩道に浮かぶ自分もどこか浮かない灰色で、ぼやけたまま足早に地下鉄の駅に呑…

Drive me wild

いつになってもドンドンチャカ、ドンドンチャカ♪ 刻むリズムにココロが躍り、かざした両手が拍子をたたく。 いくつになっても揺れるカラダに元気がみなぎるよう。 そう、魔法の一曲はオリジナルのタイトルのとおり、まさにDrive me wild。そしてアンタは叫び…

幽霊の日

東海道四谷怪談。お岩さんの悲しく虚しい最期は、本当の話なのだとか。 中学生の頃、男女4人で初めて都内の遊園地に出かけた日は、たしか夏休みの晴れた一日。小さな時から暗がりが嫌いで、お化けが大嫌いだったワタシは、その日に初めてお化け屋敷に挑むは…

二つの背中に 6

<7/23の続き> 最終コーナーに向かう短い直線、ざりままが右の人差し指を天に向けて、コースに浮かべている。追いつめる時間は、もう少ないようだ。小さくうなずき、右手でスロットルを軽く開けたまま、リヤブレーキを引きずるようにして車速だけを落とし、…

Last Dance

わずかに早く、ざりままのCRF150RⅡがsaitoさんのチェッカーフラッグをくぐる。静かに揺れる白と黒を、ステップに立ち上がったままの姿でフィニッシュテーブルの下から眺めて、ゆっくりと斜面をたどって上る。そこから反対側の斜面に下りる背中に今度は、けた…

二つの背中に 5

気づけば65ccを走らせていた子どもが居なくなり、コースの上は、たった二人。少しばかり滑りやすくなった路面に顔をしかめても、条件は二人とも同じ。いつもと違うのは、SXが後ろに着いていること。この状況に慣れていないのか、いくどか#148のCRF150RⅡが立…

二つの背中に 4

真後ろに聞こえる2ストロークがSXのものとわかっているから、続くテーブルトップを並ぶように跳び出しても、まったく気にする素振りも見せずに、次のテーブルを軽々と越えていく。離陸を半クラッチに頼るワタシは、その二つのジャンプでまた少し、距離を置…

二つの背中に 3

右の肩を少し下げるのが、癖だったか・・・それとも、右の手首を思いきりよく捻っているのか。とにかく、路面にマシンを預けて開け去る背中は、腰のあたりで折れそうなくらいに細くて、CRFのリヤフェンダーをひときわ大きく映す。右に傾げたその上半身のまま…

二つの背中に 2

<7/18の続き> 夏の陽が路面に張り付いて、わずかに残された湿り気さえも奪い取る。コースの上は、どこを走っても砂塵が舞い上がり、コーナーの出口で大きく上がるルーストに一瞬、強気が弱気に呑み込まれる。午後になって遮る雲も消えてなくなり、土はます…

誰がために

吹きすさぶ風が よく似合う 九人の戦鬼と 人の言う だが我々は 愛のため 戦い忘れた 人のため ・・・ カラオケに行けば、よくリクエストをする曲。 今日はその「009」が連載を始めた記念日だそう。 ちょうどワタシの生まれた1964年の今日。 連載を始…

二つの背中に

太陽が大きく西に傾き、それでもまだ真っ青な空に向かって、ヒグラシが鳴き始めた。まったく夏はいい。それも晴れた休日なら、なおさらいい。「暑くて死にそうだ」と、「もう走れない」と、うなだれる顔がどこか楽しげに写るのは、その真っ直ぐなヒカリのせ…

贅沢な日曜日 3(完)

防音用の土手を積み上げるため、えぐるように削られた最後の登り。アウト側がぐるりと垂直に切り立ち、西に傾げた太陽と相まって、一瞬ヒカリを失い視界も暗く奪われる。モトパーク森を思わせる闇と隘路、途中のコブに悩んでいるうち、真後ろに野太い排気音…

贅沢な日曜日 2

<7/11の続き> 走行時間になる前から、スターティンググリッドの前にマシンを立てる。左にさりままも、ゴーグルレンズを下ろして佇んでいる。そこから遠く、受付のベンチに座るsaitoさんをのぞき込むと、あわてて立ち上がり、両手で大きな丸を描いた。それ…

ひさびさで、まずまずの 7(完)

180度のターンを立ち上がるたび、後ろの2台との距離を確かめて走る。2周目を周り切る直前、2つ目のギャラリーテーブルを跳び上がる背中に、4ストロークの咆哮がぶつかった。フィニッシュテーブルを跳び越え、最終コーナーを曲がるまでに、その音はす…

ひさびさで、まずまずの 6

スターティンググリッドの前、CRFを真っ直ぐ第1コーナーに向かって構える彼に、一瞬だけ視線を移す。すぐにそのままSXが加速をはじめて、ホームストレートに高周波サウンドが長く延びる。バンクにかかってすぐ、ステップに立ち上がった上半身をねじるように…

ひさびさで、まずまずの 5

<7/10の続き> お昼休みを越えて、白く光るパドック。強い照り返しと、駆け上がる体温で、カラダもそろそろバテてきた。最後の10分走行を前にkennyさんが力尽き、ishibashiさんと二人、汗で濡れたヘルメットに手をかける。「10分なら走りきれるか」と、…

読書の夏

晴走雨読、読書の夏。 雨の少ない梅雨と舞い込む面倒な仕事で、書棚に文庫が平積みされていく。それも一興か。

贅沢な日曜日

光彩が西の竹林の端に呑み込まれて、空に薄雲が広がる午後。その陰がパドックの半分ほどに迫り、火が入るマシンも数えるほどに少なくなった。それでも遠くCRFをけしかけるように、ヘルメットにゴーグルをはめて、2ストローク85CCエンジンのキックペダルを踏…

ひさびさで、まずまずの 4

気づけば雲は白くちぎれて、空に青が広がって、真上に太陽が浮かんでいた。容赦ない陽射しを招いてきた風は、知らぬ間に凪いでいて、じっと動かないでいても汗が流れて落ちる。あわてて日除けのテントを組み立てて、ishibashiさんと遅れてきたkennyさんと大…

ひさびさで、まずまずの 3

ishibashiさんの確保したわずかなスペースにBongoをねじ込み、荷室からSXを引っ張り出す。少し青の射してきた空は、それでも雲に覆われていて、太陽もその陰に隠れたまま。開けた北側から山肌へと吹き抜けて、風もお誂え向きだ。初めて見る顔がマシンを音量…

ひさびさで、まずまずの 2

県大会の前だからと思ったら、みんなが口を揃えて「saitoさんに会いに来た」と言う。旧いMX408からの常連が顔を連ねて、ひさびさにフルサイズマシンがパドックを賑わせる。 並んだ後ろのトランポはkusaba家の二人、受付をしながらフロントウィンドウの先に視…

ひさびさで、まずまずの 1

ブレーキをキャリパーごと交換して、これでダメなら「他に何も思いつかないよ」と、85SXだけ積み込み、いつもの道をただひたすら東へと走る。晴れの予報が、どうしたわけか空には一面の薄い雲。灰色の朝が、縦に長いBongoのバックミラーに溶けて揺れている。…

夕暮れの下り列車

上野駅のプラットホームを離れるとすぐに、列車は日暮里駅に到着する。吊革につかまる列が3本になってなお、開いた扉から人が詰め込まれる。しっとりと湿り気のある背中が後ろに当たって、少し不愉快な下り列車は、大きく右にカーブを切って踏切を越え、三…

背高のキオク

燃費も安全性も、さほど気にされることなく、馬力や運動性能を競い合い、それがもっとも美しいとされていた80年代。確かに若いココロは、レシプロエンジンの限界に熱くトキメいていた。 その名を「シティターボⅡ」、ブルドッグの愛称が耳に懐かしいマシン…

ひさびさで、まずまずの ~エピローグから~

ひさびさの2ストロークに、湿り気を残したまずまずの路面。takadaくんの前で一日を終えて偉そうにしていられたのも、この路面のおかげだ。夏日の話を始める前に・・・めずらしくバレずに走るSXの後ろ姿から。 Special thanks to yellowheart76. 2016.7.3 MX…

Last chance 4(完)

ようやくKX85-Ⅱ改の前でチェッカーフラッグを、それもsaitoさんの持つチェッカーフラッグを受ける姿が形を見せ始め、バックストレートのクロスラインに狙いを定めて、最後の山の上のタイトカーブを折り返すところで・・・しくじった。焦ったのだ。曲がり始め…

Last chance 3

<6/20の続き> 遊んでるわけじゃない、必死に前を追いかけている。でも、ただ追いかけているだけ。前に出る自分の姿は、思い描いてはいなかった。いや、それどころか、抜き去る自分さえもイメージできていなかった。もっと気持ちを入れて、散らばる3つの背…