2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

カラダよりココロが先に・・・

起きてからのほとんどをノートパソコンの画面に対峙していると・・・小さなカラダが、もっと縮んでしまったような感覚になる。それでも三日続けてようやくひとつ、仕事の終わりが見えてきた。外したメガネをキーボードの上に放って、背中を反らせるように両…

お気に召すまま

東の空、たなびく雲間から太陽がのぞき、通りを照らし出す。前を走るクルマのルーフがまぶしくヒカリをはじいて、速度計の針が一瞬見えなくなる。陰影のあるアスファルトを折れ、田圃の中に延びる一本道へ降りていくと、スピーカーから流れる声がスティーヴ…

アメイジングな一時間

昼下がり。会議に呼ばれた都心のビルは、灰色の外壁が15階まで延びる中層の建物だ。そのまま広いエントランスに飲み込まれて、13階まで昇っていく。真ん中に通路が走り、そこから左右に机と椅子が並べられるフロア。遠くの窓に映る空は、どこまでも鈍色で、…

夜の調べ

雨のしずくが、窓のガラスを細かく叩いている。その雨をまとう夜気に壁一枚で触れている部屋は、火にたっぷりと暖められていて、木造りの柱がときおり、ミシッと音を上げる。風に乗り、強く打ちつけたかと思えば、すっと消えて、音がしなくなる夜。居間にひ…

The Isle of Man

「マン島」と聞いて思い浮かべるのは、泉優二の小説と、公道を疾駆する市販車レーサーの後姿だけだった。両輪をアスファルトから浮かしたマシンや、そのカウルにカラダをかがめるライダーが小さなフィルムに切り取られては、バイク雑誌に散りばめられていた…

Smile, again

一番笑顔の似合うのが彼だった・・・。 ひと回り以上も離れていた彼の年を、なぜだか追い越してしまったけれど・・・ワタシは今、屈託なく笑っているだろうか。もう、いつまでも変わることのないその笑顔に、ふと思う。今宵、ワタシを夢に誘うのはEric Carr…

御射鹿池にて

池に浮かぶ朝霧を、陽光がやわらかに照らしている。ほとりに佇む木々は深い緑をその水面に落とし、風が林の輪郭を揺らして逃げる。ともに訪れるはずだった橙色の200ccは、今はもうなくて、湯みち街道と呼ばれる秘境の温泉へと続く道を、Bongoに揺られてやっ…

KISS Kruise

この2曲を聴けるだけでも、この船に乗る価値はある。いつかはワタシも、この船で酔ってみたい。 "Mainline" & "All the Way"

白樺湖の落日

レストアを終わらせたスズキのオフロードに、ryoと三泊分の着替えを積み込みやってきて以来になるから・・・もう十年以上は、ここを訪れていない。寒さの厳しい土地柄か、過ぎた時間のうちに拡幅されたアスファルトはもう、あちらこちらがひび割れたように傷…

関東の徒花

ドラマも大坂方滅亡への序章に・・・。 いくつもの数え切れない「たられば」。歴史を知るには、いつも少しの勇気が必要になる。浪速に咲く関東の徒花。その姿に引き込まれていく。

プラス15の優越

たっぷりと雨水を吸いこんだ山砂が、褐色にコースを覆いつくしている。 大きく垂れた左右のレバーとストロークの深いブレーキペダル。おまけにノーマルのまま狭く低いハンドルでは、思いきり加速して走れない。そして、空気圧を落としたフロントタイヤには泥…

ツインだけの三重奏 後編

エリック・ビューエルが仕立てたV-Twinは、よく回った。 アイドリングで佇むとき、車体ごと崩壊してしまうのではないかと心配するほどの振動は、走り出すとすぐに消えてなくなり、おおらかなはずのOHVは、レーシングスペックを余すことなく披露する。華奢で…

ツインだけの三重奏 前編

モトクロスを始める、ちょっと前のこと。hideさんとmuraと三人で、週末の峠を流すのを楽しみにしていた頃に一度だけ、その鼓動を味わったことがある。 ワタシのDucati M900Darkをきっかけに、hideさんはYZF-R6をmuraはGSF1200を手放して、それぞれレアなツイ…

夕の陽光の中で 4

<11/13の続き> 秋にはまばゆい陽をヒカリを宿して、スターティングゲートの前、RMが静かにたたずむ。テーブルトップの数々やフープス、勾配をつなぐいくつものカーブ。ほとんどすべてを見渡せるコースに、まばらなエキゾーストがこだまする。しばらく走っ…

公道育ちゆえ

「公道とモトクロスじゃあ、違うでしょーよー」 言葉の端に茨城訛りを残しながら、ざりままが大きな声で笑う。たしかにまったく違うのだけれど、公道の峠で覚えた感覚は今もなお芯に宿ったまま、ワタシのコーナーリングを組み立て続けている。黄色や白色で区…

馬子にも衣装

錦繍とまでは言わないけれど、小さな里にも秋は降りてくる。右カーブを直角に立ち上がり、湿り気の残る斜面からコースでもっとも長いジャンプを飛び出す。ただ真下を覗くだけで、とてもバックルックする余裕もない。そんな春色のコンビネーションを、明るい…

見上げても、瞳に雨が滴るだけ

その影をひとめ眺めておきたかった・・・。ただ、宵闇に雨が舞ってしまっては、それも叶わない。次に訪れるのは2034年、今から18年後の話。その日、瞳に映る東の空が、きっと漆黒の晴天でありますように。

夕の陽光の中で 3

<10/27の続き> パドックに現れたmaedaさんと、遅れてやってきた今日の同伴#69さん。二人と話していたら、着替える前に9時になってしまった。せっかくの30分が過ぎる間、パドックへと流れてきたトランポは、VOXYともう1台だけ。殺風景なことに変わりはない…

かすみがうらの空 6(完)

<11/10の続き> ステップアップのてっぺんから駆け下りると、軽く右にベントしながら勾配をつけて、バックストレートが延びていく。そして、全開の途中にあるコブをきっかけに、一気に跳び上がるマシン。考えもなしに思いきり跳び出すと、高く左に流れてい…

ХХをあきらめて

結局アスファルトは、日が暮れるまで濡れたままだった。午後になってひどい雨が収まっても、灰色の空は、いつまでも通りを冷たく湿らせていた。「濡れたまま 乾く間もなくて♪」江の島の恋を歌った曲が、ふと口をついて旋律になる。これで明日はあきらめるし…

かすみがうらの空 5

ストレートエンド、少し上りながら左、右と切り返す。ここはすっかり乾いていて、調子に乗るとあらぬ方向へ、マシンごとフッ飛ばされそうだ。そこから小さなステップダウンを下りていくと、ひとつ目の難所が現れる。陽の当たらない左カーブは黒褐色に沈み、…

かすみがうらの空 4

「9時になりました、走行を開始してください」。もう何年も前からずっと聞いていたはずのアナウンスが、杉の木立に紛れて風に流れていく。 パドックから50m、そこはもうコースの最終コーナー。バックストレートを気持ちよく駆け上がってきたマシンが、ここで…

かすみがうらの空 3

右手に現れたカートの練習場に目をやっていたら、2台ともあっさり行き過ぎた。ハザードを灯しながらゆっくりバックで戻っていくと、雑木林の切れ目に「774 compound」の看板が見える。でもここは、臨時の駐車場。いつもならFMXの連中が華麗な空中技を練習す…

かすみがうらの空 2

はるばる土浦までの道のりをたどるのは、粟野にあったコースを走りに来た日が最後かもしれない。常磐道の土浦北インターを通り越してから、神立の工業団地へ延びる道へと国道を右折する。日曜日、建ち並ぶ平屋造りの工場には人影もなく、辺りのコンビニエン…

かすみがうらの空

杉の木のてっぺんがふたつ、雲ひとつない真っ青な空の端に突き刺さっている。 木立の中から走り出してすぐ、視界が大きく開きながら右へ落ちるように巻いていく第一コーナー。乾いたイン寄りにできあがったワダチのさらに内側へ、CRF150RⅡのフロントタイヤを…

ゆずれないモノ

クシタニ製、カントリージーンズ。20年物。 気負うことなく選んでいたウエストサイズ。低い身長の伸びが止まった頃からずっと、死ぬまで変わることはないと信じていた28インチに、腹筋の上にまとわりついた脂肪が襲いかかる。息を吐き出し、腹をへこませて、…

RS-Z

バックウインドウの右隅に“RS-Z”のエンブレム。このアルファベットの並びに、遠い記憶がよみがえる。 東京都下、多摩丘陵に延びる京王沿線に住んでいた頃のこと。世は空前と言われるバイクブームの中にあって、ちょうどヤマハの2気筒が、消えかかった2ストロ…

私的な11月3日

せめて気の利いた話でもと、今日一日を振り返ってみても・・・抜けるように澄みきった青空の下、うつむきながら掃除、洗車をし続ける背中しか思い出すことができない。すべてが終わって顔を上げると、宵が空を深い藍色に染めていて、浮かぶ三日月に金星が小…

外足荷重なんてクソくらえ

たしか、そんなタイトルだったと記憶している。今からもう、30年以上も前の話。老いらくの記憶ほど当てにならないものもないけれど、そこに書かれた教えは、今もカラダの中に生き続けている・・・良くも悪くも。 バイクブームと呼ばれる、今はもう思い出す…

TATTOO

手首にまで延びたオフショルダー、赤のスパンコールはギリギリに短いタイトスカート。そこから目の混んだメッシュの黒いタイツが、足元の真っ赤なピンヒールに吸いこまれる。二つの手のひらで包み込めそうなほどに絞られたウエストが、女性らしい曲線を見事…