2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

leap day

ひと月前からずっと、鉄鉢袋の奥に詰まっていた厄介ごとが、とりあえず消えてなくなった。麻酔が切れて、今ごろ痛みに眠れない時間を過ごしているのかもしれないけど、こちらはようやく枕を高くして、ぐっすり眠ることができそうだ。 厄を捨てればカラダも、…

(笑)

いつも、よく使う方だけど、今日はそれがやけに目立つ。Facebookの投稿に写る「(笑)」の文字は、震える気持ちを書き表しているよう。いよいよ時は満ちて、すべては明日。あとは祈るだけだ。

正しいウソのつき方 9(完)

「不安だけどな」。短い言葉に、揺れるココロがにじむ。 カラダの不安と同じぐらいに、仕事の後先に不安が過ぎるのだろう。正直だけではすまない世界に薄々感づいても良さそうなのに・・・光化学スモッグにむせぶことも、合成着色料にベロを真っ赤に染めるこ…

正しいウソのつき方 8

<2/24の続き> もちろん、うそだ。聞かされている営業所長にも、それはわかっている。ただ、誰も何も理由を聞いてこない。異様に長い静けさの後、「いつ治るのか」と聞かれただけ。ひと月ぐらいかかりそうだと、医者に言われたことをそのまま伝えると、後ろ…

北千住からの

クライアントにダメ出しされて・・・営業さんと差し向かいでグチるの図。太田行きの最終電車に揺られながら、酔ったアタマで明日のことに思いを馳せる。

正しいウソのつき方 7

<2/18の続き> ただの捻挫だと思っていたら、結局朝まで少しも眠れなかった・・・。夜が明けるのをひたすら待って、朝になってからは病院の診察時間を待って・・・その日一番のレントゲンを撮ってもらった。その陰影を見て一言、白衣の紳士がつぶやく。「折…

223

青を雲に隠したまま、空は晴れ渡ることなく、その姿を西の彼方に眺めることは、ついにできなかった。語呂良い記念日は如月。乾いた冬晴れが望めるはずの時季にこの曇り空では、日本一も為すすべなしか・・・。海の日に雨の降るがごとく、日々は思うように運…

Music Life

ryoが生まれるずっとずっと前。keiと出会うずっと前。GibsonとFenderに憧れ、スラングを必死に覚えてた頃のこと。懐かしく思うのも仕方がない。そんなカバーがずらり並んでいる。 鏡に映るしわだらけの顔にも、まだ翳りなどなく、艶と張りが十分だった頃の話…

告天子

雲間に青が映える。風が北から音を上げて舞う中を、一羽の雲雀が喉を嗄らすようにしてまっすぐ羽ばたいていく。けして流されることなく、ただ天上へと羽ばたく姿は、どこか母の強さに似ている気がした。そして、かしましく響く声は、いつしか南の空へと消え…

少しは借りを返せたかな 4

<2/12の続き> そして、三周目。自分のカラダとコースの具合と、マシンの吹け上がりがわかってきたところで、スターティンググリッドの前にSXを止め、青い車影に目を凝らす。地面にまっすぐ下りた左脚、ヒザは何事もなかったように伸びきっている。コースを…

冷凍みかんの似合う色

直角に立ち上がった背もたれへ、ぴたりと背中を這わせて、窓から外を眺める。駅舎もどこかのんびりした風情で、午後の陽だまりに女子高校生が二人、これとは行き先の違う電車をじっと待っている。ひなびたツートンカラーにどこか惹かれてしまうのは、幼い思…

正しいウソのつき方 6

土埃にまみれた仲間が、一人また一人と、砂利の上に止めてあるCARRYへと戻っていく。利根川を渡る有料橋のずっと向こうに、大きな橙がゆっくりと落ちていって、河川敷から2ストロークの金属音が消えてなくなった。明日、陽が昇れば、また仕事の一日。鬼の居…

正しいウソのつき方 5

<2/6の続き> 川砂の上にドカッと座り込んだ足元、後輩たちが笑いながら、AXOのブーツを引っ張り出す。自分じゃ痛くてどうにもならない。後輩に託した右足を、ただ眺めているだけ。ふいに足首をねじるような動きに痛みが走り、たまらず「うぐっ」と短く声を…

いよいよ・・・

全国行脚の季節は、この季節。そして、春の兆しを感じられるはずなのに・・・如月らしい凍える夜。暦は春でも、季節はまだ冬の中。冷たい夜気が窓辺から寝室を這っている。

鉄鉢袋は破らず

この頃の厄妄想を入れ置きし 鉄鉢袋今破るなり 織田信長、側近中の側近。黒御母衣衆の筆頭、内蔵助の辞世だ。 どんなにたくさん仕事を抱えてみても、もらえる給料はちっとも増えやしない。やってもやらなくても、けして変わらない。ただ、頼まれたら断れない…

跳んだ 2

スペシャルなCDIのおかげで、途中で4速に上げてもまったくチカラを失うことなく、褐色の勾配を駆けるSX。荒れた路面に弾かれながらも、そのままコーナーのアウトの縁に向かい、フロントタイヤをまっすぐに走らせる。そして、タイヤがぶつかる直前、SIDIのか…

跳んだ

見慣れないCRF250Rに割り込まれて、林の中の切り返しをゆっくりと立ち上がる。まだタイヤに削り取られていない、きれいな跳び出しを横目に見ながら、いつものラインで段差を飛び降りた。ステップに立ち上がったまま、バックストレートからテーブルトップを三…

少しは借りを返せたかな 3

<2/9の続き> そのままギャラリーテーブルをふたつ、シートに尻を落とすことなく、ゆっくりと走り抜けて、ようやく今日の一周目を回り終える。左ヒザもあれきり何も言わなくなった。二周目。第1コーナーの乾ききったバンクが、冴えた空の青にエッジを刻みつ…

小田のブナが

まさかこんな文字列に変換されるとは・・・彼が生きていたら、ただじゃすまないね。書き始めでこれじゃあ、あまりに可笑しくて。何を書こうとしていたのか、すっかり忘れてしまった。今日のことは・・・またいつか。

前倒し

とは、よく言われる台詞。それは、もちろんわがままな依頼主からだ。自分から言い出すなんて・・・何も自ら進んで忙しくするなんて、考えられないこと。しかし、それも遊びとなれば、話はまったく別になる。明日までの晴天は日曜日に向かって下り坂、その日…

少しは借りを返せたかな 2

<2/7の続き> あっ、と短く声をあげる間もなく、次のテーブルトップの斜面にフロントタイヤが乗り上げた。ほとんど反射的に右足がブレーキペダルを踏みつけると、後ろから引っ張られるように減速したSXが、台形をなぞって走る。トップから下り斜面をシート…

Ⅰ remember

もう還暦なんだね、もちろん知ってるよ。ようやくノーメイクにも馴れて、メイク時代のナンバーよりも好きな曲も見つかり始めた頃・・・Heaven's On Fireのミュージックビデオを見て、ジーンとうまく区別がつかなかったのを、今でもよく覚えてる。エリック・…

少しは借りを返せたかな

インフィールドの短い直線の端を右に直角に抜けて短いテーブルトップ。撒水の残る斜面から跳び上がったSXが、思っていたよりも少しだけ遠くの地面に落ちた。別にステップから足が離れたわけでも、ヒザを大きく開いたわけでもないのに、着地してリヤサスペン…

正しいウソのつき方 4

<2/3の続き> 右腕だけでカラダをじりじり左右に動かして、何とか右足をTSの下から引きずり出す。そのまま両脚を折り畳むようにして右ヒザを立て、チカラを込めたときだ。瞬間、足首に激痛が走って、背中から崩れてしまった。何度やっても痛みは変わらず、…

税込345,600円

これだったら、薄給のryoにも手が届くだろう。春になったら、こいつで道内めぐりも悪くないんじゃない?と、バイク雑誌を閉じて天井を見上げる。何しろあのGROMで北海道を回ったんだし、大好きなカワサキならなおさら、文句も出ないはずだ。ずいぶんこぢんま…

忙中閑あり

冷たい風の中、わずかに感じるのは春の兆しか、それとも冬の背中か。降り立つ薄暮のホームに、細く長く影が延びる。鼻の奥、湿った粘膜に何か触ったような気がするのは、気のせいなんかじゃない。桜が咲いては散り、青い空に新芽が艶やかに映り込むまで、ち…

正しいウソのつき方 3

着地するやいなや、思いきりブレーキレバーを握ったからたまらない。フロントタイヤが真横に払われ、きれいになくなり、前に放り出されたワタシのカラダの上、黄色い車体がそのまま覆い被さってきた。すぐにAXOのブーツにくるまれた右足、その足首に鈍い痛み…

正しいウソのつき方 2

<1/27の続き> 役職者が全員、新宿にある本社に呼ばれるのは、決まって月中の水曜日。その日、残された下っ端の連中がつかの間、羽を伸ばすことは、どちらにもわかりきっていること。ただ、それは、すべてが普段どおりに過ぎていって初めて成り立つ話で、ひ…

如月

いい名だと思う。 最後まで太陽を隠し続けた低い雲から、ちらちらと雪が舞う。宵闇に溶けたフロントガラスに、小さな粒が光り輝き消えていく。微笑みさえも許さない凛とした冷たさに、ヒーターがまったく追いつかない。強ばった方が、弓のように弧を描き、両…