2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

逃した夜

昨夜の月を追いかけて、東の空を眺めてみても、かかる雲に隠れたのか早沈んでしまったか、薄黄身色の半月はどこかに消えてなくなっていた。思わず玄関を出て、稲穂の茂る畦まで歩いたみたところで、月光はどこにも宿らず、ただ夜風が舞うだけ。逃した夜が悔…

極上の空に 5

左に曲がれば東北道の佐野入路、右は小山から茨城笠間、水戸へと流れる国道五十号線を交差して、下都賀西部広域農道を直進する。みかも山の東を通り過ぎ、大平ぶどう団地に続くカーブをいくつか楽しんでから、栃木市に出ると、ここから北側、スイーツに向か…

極上の空に 4

渡良瀬川を、こちらも一本外れた道で短く越えて、東武鉄道の線路を横切り、緑の桜並木をなぞるように直線をたどる。ここの桜を見なくなって、もう二年が経つ。そんな湿った気分を、対向車のフロントガラスが、訳もなく眩しく照らし過ぎていく。佐野に出る手…

リトルレーサー 3

5秒前にボードが切り替わり、スターターがコースサイドへと逃げていく。右手に反応するのは中間の開度まで。スロットルを絞りきろうとしても、途中で息を付くエンジンに慌てて右手を返す。そして、弱く小さな排気音を響かせる中、スターティングゲートが落ち…

リトルレーサー 2

キックペダルを踏み下ろせば、エンジンは掛かる。しかし、自慢の2ストロークエンジンは不機嫌で、まったく吹け上がらない。右手を思いきり手前に捻ると、くぐもった排気音を残して、息付きを起こす。そして、エンジンストール。ピットロードから描いていた青…

反省

マシントラブルでも何でもない。 キャブレターのブリーザーホースが、泥で詰まっていただけ。そして、そのことに気づいたのが、レース直後でもない、一日経って今日のこと。我ながら情けないやら悔しいやら。 子どもたちにイイところを見せたいのなら・・・・・・…

リトルレーサー 1

「がんばってくださいね、おうえんしてますから!」、思いがけないリトルレーサーからの一言に背中を押されて、スターティンググリッドへ走り出す。ピットロードからグリッドを眺めれば、一番アウトのグリッドが、まだ空いている。ヒート1の借りを返すには十…

電動車

実家はケーブルテレビを引いている。週一に繰り返される、その実家詣で。今日も昼の外食に付き合い、食料品を買い出して、部屋の隅から隅まで掃除機をかける。一通りをやり終えて、そのTVプログラムに目をやると、「フォーミュラ選手権」が始まろうとしてい…

東京オリンピック

昭和三十九年三月、東京オリンピックの年に生まれた。そこから半世紀以上、令和の御代になり、自分は五十七歳になった。そして、コロナ禍の中で、再びこの日を迎えることになるとは、夢見心地だ。 稀に見る、いや、もう二度とないであろう特別な大会を母国で…

極上の空に 3

まず向かうは、栃木県栃木市。日光へ北上するルートを、そこで決めることにした。三台のクォーターマシン。と言っても、すべてブロックパターンのタイヤを履くオフロードタイプ、そこに一台、ピンクナンバーのハンターカブが混ざる。巡航速度は四輪の流れに…

極上の空に 2

待ち合わせは八時、国道四号線のバイパスと圏央道が交わるインター脇にある道の駅だ。梅雨が明けるのを待ちかねていたバイカー達が、自慢のマシンをひっさげて、四輪のスペースに比べたら圧倒的に小さい駐輪場に入っては出てを繰り返す。ローライダーの二気…

極上の空に 1

薄く張った雲が晴れて、空に高く、夏の太陽が現れた。七月もまだ中頃のこの時期に関東で梅雨が明けるのは、例年より早いことだと言う。お誂え向きに訪れた週末に、ひさしぶりに単車を引っ張り出した。「梅雨明け十日は雨知らず」の言葉を信じたわけではない…

綴る暇(いとま)

副業に時間が取られる日は、きまって何を書くかが浮かばない。充実した平日は、公私のバランスを取るのが難しいようだ。はて、遊びに勤しんだ休日はどうだったろう。記憶の欠片があちこち散らばるだけで、こちらも文字にするのが容易じゃない。因果な商売だ。

アナタハサイコー

All right TOKYO!!!!! やっぱりこのコールがたまらない。今から20年前、Farewell Tourの東京公演を、最低限の編集で丸ごと収めた「オフ・ザ・サアウンド・ボード」。シリーズ化が予定されている、その第1弾に日本公演を選んだり理由はわからないが、うれし…

戻ってきました

青が突き抜ける空に、雲は白く盛り上がり、アスファルトがハレーションを起こす。極上の真夏に気を良くして、日光で折り返すつもりが金精峠を越えて、ロマンティック街道を老神温泉まで足を延ばす。山の木陰でヒグラシの音を聞きながら、不格好に九十九折り…

日光詣で

焼けるはずの空は青々と延びて、稲の緑に落ちた西日が風に揺れている。あっさり真夏日を越えて、明日はもっと暑くなるという。いきなり本番、それも週末。乗らないはずがない。その西の空に、今宵も月が浮かんでいる。

夏の夜空に

夏は夜。 今宵は雲間に半月が浮かび、古の一節が身に沁みる。闇は黒く濃く、漆黒の隙間から、虫の音が流れてくる。月光は空を照らし、遠くに星が瞬く。 雨に濡れた風が窓辺を揺らし、部屋から熱気が逃げていく。季節は巡り、夏がもう、すぐにやってくる。バ…

あと一日!?

怒濤の1.5週間が終わった。喉元過ぎれば何とやら、クライアントから労いの言葉もいただいて、いつもの泡盛が喉を潤せば、酔いが一気に回る。PCをスリープにして、TVプログラムをたどる宵の至福。梅雨明け間近の水曜が、雷雨もなく更けていく。あとは、ひさし…

もう一息!

明けない夜はないから、終わらない案件もない。ようやくたどり着いた納期は明日。15時が締め切りだから・・・・・・酒も旨く呑めるというもの。納期が過ぎれば梅雨明けだ、もう一息、頑張ろうか。

カウントダウン

明けの雲が晴れれば、空にあるのは夏の太陽。湿気た赤土を見るまに乾かし、アスファルトから水たまりを消し去り、南天へと上っていく。それが昼までのお話。 午後になって、気づけばアスファルトを写したような鈍色の空に、太陽はいなくなった。すぐに雲は鉛…

週末の予定は

少し前の気分のような、玉石混淆だった週末。夏空からの雷雨に、いつもの介護と休日仕事が折り重なって、まったく盛り上がらない・・・・・・と思っていたら、週間予報に並ぶ太陽に、違和感の残る左肩より先に、気持ちの方が乗ってきた。ガレージからBMXを引っ張り…

天気予報士

天気予報士に、すっかり騙されたのか。 溜まった洗濯物を片づけてくればよかったと、実家からの帰り道、まだ西の空高くにある夏の太陽を、スクラムの小さなサンバイザーで見えなくする。助手席のkeiも同じ思いを、白い雲にぶつけている。そして、もしかした…

じっとしてもいられない

そんなに乗らない、わけがない。少しずつ動かし始めた左肩と生来の遊び心が、そぼ降る金曜の午後に、同期する。飛んだり跳ねたりはできなくても、二輪に跨がるぐらいはできるだろうし、梅雨明けが迫ってきてはじっとしてもいられない。 温泉、キャンプ、日光…

落胆の日

if。「もしも・・・・・・」と、いくつ言葉を重ねたところで、今は変わらない。わかっている?いや、わかっていると思い違いをしているだけ。今日もまた、不意に見覚えのある場面が浮かんでは消えて、心の奥のやわらかなところを無造作に撫でていく。この逡巡を止…

いやいや!?

紆余曲折!?、いやいや、ほとんど悔いしかない左肩に、いよいよ決断の時が来た。いやいや、それほど大した話じゃない。新しいドクターにセカンドオピニオンが聞ければ上等というだけ。あとは自分自身の問題。 まだ悩む時間は残されている・・・・・・いやいや、それ…

黒夜

ひさしぶりにブラックテレワークな夜。 よどんだ夜気にも似た気分で、キーボードを叩きまくる。いや、そこまで頭も回らない。久米仙はやめておくべきだったと、今さら後悔しきり。 開け放した窓から、夜風は入らない。

とは言うものの...

「心機一転!」、「気分一新!」、「リニューアル!」。 声高にそう意気込んでみたところで、テレワークのパソコンから外す視線には、雨に濡れた隣家の瓦屋根が覗くだけ。変わり映えのしない毎日がもう、気づけば一年以上過ぎている。 つくづく自分は「人」…

リニューアル!?

7月4日。好きか嫌いか、どちらかと言えば好きな一日は、何のことはない、語呂が心地よく響く日付だから。夏の初恋の匂いがする7月というのも悪くない。スマホを新しくして、舎弟も転院先に落ち着いて・・・・・・好ましいこの月に、気分一新ついでにブログまで…

好運

梅雨らしい雨の一日。路地のアスファルトは乾くことなく濡れたまま、滴をはじき、あちこちに大きく水たまりをつくっていく。雨足は夜になってまた強くなり、道端に並ぶ街灯が白く滲むように、夜を照らしている。明日も朝から降っているらしい・・・・・・今はしば…

文月

夏の匂いのする月は、雨で始まった。 何事もなければ左肩が元に戻っているはずの今日、突っ張ったような感覚に濡れた風が触っていって嫌らしい。記憶に残るめでたいことがひとつもなかった前半戦は、この大怪我にトドメを刺された。それを引きずる後半戦だ、…