2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

さすが、如月

確か穏やかでぬくもりを感じる陽射しの中で始まったはずの如月。うるう年で29日まである、その最後の今日は、音もなく雪が舞う朝になった。テレビの画面には、まだ仄暗い中央高速道路、八王子インターチェンジが映し出されている。ナトリウム灯が丸くぼんや…

1972年2月28日

去年の暮れから、なるべく本を読むようにしている。それも、雑誌とかじゃなくて、できるだけきちんとした文庫本を通勤の鞄に入れて、行きや帰りの電車の中で開いている。薄いもので月に二冊ぐらいを読み切る・・・本嫌いなワタシにしては、いい感じの習慣に…

まだ火が消えたわけじゃなくて

少し早めに出てきたおかげで、駅舎の中にある書店をぐるりと回る時間ができた。『RIDE』の最新号、表紙に赤と白のストロボラインを引いたTZR250が、フロントタイヤを右下に大胆な構図で描かれている。“ヤマンボ”と揶揄された金色のブレーキキャリパーが、古…

雨あがりなのに。

窓の外に青と光があふれる中で目覚めるはずだったのに・・・一気に開いたカーテンの先、広がる空は期待していた色と輝きを映してはいなかった。「朝起きて気分が良かったら・・・」師匠に返したメールのようには気持ちが高まりそうにない。薄灰色の雲に覆わ…

氷雨・・・

日付が変わるまでは、風の音も聞こえなかった。それでも天気予報が上手く外れることは無くて・・・明け方、波打つ遮光カーテンの隙間から、白く細い光と一緒に、コツコツと出窓のガラスを叩く雨音が忍び込んできた。掛け布団を引っ張り上げながら、左に寝返…

これがホントの走り初め 11(完)

気持ち早めに上がったからか、それともくたびれているだけなのか・・・パドックに戻ってからの二人は、動きが鈍くて弱い。クッキーのしっぽだけが、お構いなしにバタバタと音を立てている。「午前中と全然違うね」CRFを積み込む荷台を片付けながら、師匠がぽ…

これがホントの走り初め 10

どのくらい後ろに居たのだろう・・・それすらわからなくなるほど体が固まって・・・フィニッシュのテーブルトップを跳び上がった姿は、まったく微動だにしない。ハンドルをこじったり、ステップから足を離してみたり、遊び心ひとつも余裕が無くなっている。…

これがホントの走り初め 9

iguchi師匠のリヤタイヤは、すぐ目の前にある。弾いてしまいそうなくらい、傍に感じる。でも、怖くはない。ぶつける気もしなければ、離される気もしないし・・・やっと“RM”が手の内に戻ってきた。CRFで追い駆けている時には無かった、その背中が大きく揺れて…

これがホントの走り初め 8

コースから吹きつける風を師匠のハイエースで避けて、ベンチコートにくるまり、いつもの粗末な昼をすませる。うたた寝を始めた師匠をそのまま寝かせておいて、午後の一本目もRMで出ていく。さっきより少し力を引っ張り出して・・・スロットルも2/3ほどの開度…

これがホントの走り初め 7

「乗り慣れてないんだし・・・」さすがに着いてこられる訳は無いということらしい。それはそうだ、師匠なんだから・・・それほど甘くは無い。そう言えばmachi-sanもこの前、こんなことを言っていたっけ・・・「CRFだと、まだ後ろ姿が見えるから」と。正直に…

これがホントの走り初め 6

<2/17の続き> これで3回目。何となく4ストロークの特性にも慣れたし、左右のステップもワイドステップに換装、少しは振りまわせるようになったはずだ。「どこまで通用するか」じゃなくて、「ひと泡吹かせてやる」と、限られたラインに上手く車体を乗せて・…

Celebrate the 38th anniversary

インフルエンザウィルスに負けたワタシを気の毒に思ったのか、折からの寒波は雪までちらつかせて・・・コース練習が見送りになった土曜日。晴れ渡った空に、まだ体を休ませろと、風が唸っていた。本当なら、iguchi師匠とひと勝負した帰り道、途中のコンビニ…

これがホントの走り初め 5

師匠の“お供”愛犬クッキーの頭をひと撫でしてから、“ご主人さま”を探しにCRFに跨る。反発力の強いキックペダルを何度か踏み下ろして、ようやくエンジンが低く騒がしい音を上げる。クラッチレバーを離した瞬間、リヤタイヤが爆ぜるような出足はCRFだけのもの…

これがホントの走り初め 4

<2/14の続き> 週の初め、月曜日から火曜日にかけて続いた雨が、コースの至る所に残っていた。三コーナーの立ち上がりには、コース幅いっぱいに茶色く水たまりも広がっている。その水たまりを抜けるステップアップジャンプで、黄旗を手にmachi-sanも苦笑い…

39.2

いよいよ花粉症が始まったとばかり思っていたら、咳だけじゃなくて、少し熱っぽい感じ・・・仕事を定時に切り上げて、北千住始発の準急に座って、家に着いてから体温計を取り出して、右の脇に差し入れる。CITIZEN製の電子体温計は、液晶の表示が崩れることが…

これがホントの走り初め 3

「あれー、RMは?降ろさないの?」CRF150RⅡだけがBongoの脇に傾げているのを眺めて、語尾を延ばしながら訝しげな声を上げる。「一応降ろすけど・・・コレで様子を見てからかなー」何せRMに乗るのは去年の暮れ以来、そして、ここひと月はコレ、CRFにも乗って…

これがホントの走り初め 2

タイダウンベルトのたるみを気にしながら、最後の曲がり角を下っていく。前を走っていた銀色のハイエースも、行き先は同じようだ。T字路で一時停止、死角になった左側からのクルマに注意を払ってから、下ろしたウインカーにならってハンドルを右に切る。たん…

これがホントの走り初め 1

駅からの帰り道。セルフのスタンドでBongoにガソリンを入れて、同じ並びの食料品を安く売る店で朝食のレーズンボールとバナナを買って、家に到着するちょっと前、知り合いに「明日の“買い出し”してたら、電話するのが遅くなった」と言い訳して・・・それは、…

日光湯元の記憶~後編

藍色ののれんをくぐると、上がり口を前に女の子が立っていた。春には小学生らしい、まだ幼い娘は、スリッパを履いたまま、もぞもぞ動いている。ここは男湯。子どもとは言え、やっぱり女の子・・・お父さん以外のおじさんに混じって風呂に入り、好奇の目にさ…

日光湯元の記憶~前編

龍頭の滝上を越えて、白い雪は若々しかった。去年は春が近い三月、今年はそれからひと月も早い一月の終わり。土色に汚されることなく、枯れ木の森を白く埋め尽くしていた。細い枝の先まで、雪が白く線を引いている。赤沼のバス停から戦場ヶ原に沿って一筋に…

谷中ぎんざ

しばらく見ないうちに、南天に浮かぶ太陽にはチカラが宿っていた。日暮里駅の南口にかかる跨線橋の階段を中程まで上がっていくと、京成線の高架の先、透きとおるように薄く青が広がっている。上りきって延びる平坦なコンクリート。その中を揺れる三人の影は…

直線番長!?

続くときは、こんなもんだ・・・。一日ずっと事務所に居ることができずに今日も外出、しかも今日は少し遠い。日暮里を出て、田町に寄り道してから・・・神奈川の川崎市まで。思わず“帰巣本能”が刺激されるように、南へ南へと下がっていく。それでも、JR線に…

Give Me All Your Luvin'

“逆転劇”というのは・・・興奮する演出が、同じ試合でも倍楽しめたような気分にさせてくれる。ただ、それは、傍で観ている奴の台詞で・・・同じ気分に浸れるのは“当事者”でも逆転した方だけ。逆転された方と言えば・・・たまったもんじゃない。まして、それ…

出会った頃は・・・。

体調が完全に戻ったわけでもないのに、こんな日に限って外出。しかも行き先は初めての場所、そして、そぼ降る雨は、朝の予報を裏切って冷たく落ちている。それでも代わりは居ないから、がらんとした10時過ぎの山手線内回りで、新宿に急ぐ。目的地は初台、新…

RM、復活。

体温が37度を切っただけで、すっかり陽は高くなってしまった。一日中、ほとんど寝ていたせいで、腰が痛くてたまらない。薄いレース地のカーテンから透けて見える空は、昨日と違って色が無く、どんよりとしていた。勢いよく半身を起こすと、少し頭がフラフラ…

風邪、引いたみたい。

夜は冷える。CRF150RⅡを積み込むのは朝にして、ヘルメットとガードを入れたプラスチックのケース、ウェアと着替えを窓際に揃えて、いつもよりは早めに休んだはずだった・・・。夜中、洗面所に起きてからベッドに戻ると、足首から先が冷たくなって、両足をこ…

平和島~後編2/2

薄灰色した丸い天板のテーブルにイスが四つ、対角線上に置かれている。一枚のプラスチック板がなめらかな曲面を描いて、背中から腰、そして太ももまでの線を支える。硬さを感じることもなく、座り心地は悪くない。生地を通して少しひんやりするのも、どうに…

平和島~後編1/2

<2012/1/31の続き> 歩道に面した裏口から入ると、ゆとりのあるエレベータホールが出迎えてくれる。エレベータが四基もあるのは、さすがに数百人を飲み込むビルだけのことはある。ほんの数秒待って下りてきたエレベータの中に入り、“4”と書かれた透明の四角…

如月は春の薫り

昼になって歩く駅前は、風が強く巻いていた。「今朝は、居間のアルミ窓が凍りついて開かなかった」と話したばかりなのに・・・温い風が、街のあちらこちらにながれていく。マウンテンパーカーのボタンを外していても、これなら平気だ。短い横断歩道を二つ、…