2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

54×54の魅惑 2

<11/20の続き> アスファルト仕立ての小さなサーキットと、鉄で編まれたランプの居並ぶ間をすり抜ける。そして、道が下り始めたらすぐ、Bongoのハンドルを右に揺らしてから一気に左の砂利道へと突っ込んでいく。まだ9時になる前。いつの頃からかもう、この…

54×54の魅惑

朝の光を透かした黄葉が、北の風にざわついている。 バックミラーに白いゼッケンプレートが大きく写り込み、後ろに延びているはずのアスファルトは、その陰に隠れてまったく見えない。遠くにあった筑波の山容がいつの間にか大きく現れてきて、T字路をゆっく…

ばくだん 6(完)

「また柏崎に来なくちゃいけないね。そのときはまたここに寄らせてもらおうね」 咲満ちた桜や艶やかな錦繍、出会いたいのはいつも見事な景色とは限らない。風光明媚だけが旅情をかき立てるわけでもない。たまたま隣り合わせた地元の人と日々の話をただ重ねて…

ばくだん 5

<11/11の続き> 学生の自分、居酒屋チェーンでバイトしていた頃、「スタミナ納豆」というメニューがあった。鮪のブツと山芋の千切り、そしてかいわれ大根を散らしただけの粗末な一品で、きまって売り上げの良くない日に出される「まかない」として、よく覚…

ばくだん 4

カウンターにたった一つ空いていた椅子に、ようやく独りの男が通されてきた。大将と軽く言葉を交わし、白髪頭の連れとも初めてではないらしい。何か大きな声でからかわれている。どうやら地元の青年、といっても30後半ぐらいの男性は、私たちにも会釈をする…

ばくだん 3

真正面にいるはずのkeiに一瞥をくれただけで、大将がにぎやかに魚を捌いていく。そのお相手は、白髪頭の男性。口とは裏腹にていねいな包丁さばきを間近に眺めていると、さっきの仲居さんが注文を取りに来てくれた。サワーとゆず酒のロックと一緒に、地魚の天…

ばくだん 2

<10/8の続き> 私の左にkei、その左にまた一つ席を空けて、女性二人が白髪頭の男性を囲んでいる。身内らしい物言いで、さっきから女二人が男を困らせ続けている。そして、仕事帰りの中間管理職風情の二人が、私の右隣で刺身をつつきながら、焼酎を注いだグ…

雨のあわいに 6(完)

雨にやられてばかりの週末にうんざりしても、ひとたび乗ってしまえば、それは風のように消えてしまう。ささやかな晴れ間が覗く空の下、笑顔で昼をつつき始めるパドック。YZの彼だけが、担架に寝たまま。ただその彼も、倒れるまでは楽しく走っていたはずだ。…

雨のあわいに 5

saitoさんがコースにユンボを持ち出し、運転席にYZの彼を乗せて、キャタピラの鈍い音とともにパドックへと引き上げていく。ori-chanの駆るCRF150RⅡも、ユンボと一緒になってコースから出ていってしまった。 残ったのはRMと、kyo-chanのCR85改だけ。ヘルメッ…

雨のあわいに 4

もう一度、今度はビッグテーブルをなめるように越えていくと、やっぱりさっき見た光景が目の前にあった。今度は迷うことなくRMを逆側、バックストレートの縁に立てかけると、コースにはみ出ているマシンに駆け寄り、引き起こす。フルサイズとはいえ、2ストロ…

雨のあわいに 3

そこからひとつテーブルトップを越えれば、日向にインフィールドが広がっている。不思議なくらいに乾いたフープスを軽めにいなして、左の第4コーナーを外側のラインでたどっていく。そして、シングルジャンプをなめて、長い斜面から一気にビッグテーブルを跳…