2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

サオダチ

コースサイドに一眼レフのレンズを見つけてしまったからたまらない。それまで左の指をレバーにかけずに斜面に向かっていたはずなのに。あれほど「半クラッチを使うな」の言葉を守り続けていたのに。邪で不埒なココロが無意識に左の人差し指を動かしてみせ、2…

Mitsukaido

小貝川にかかる橋の向こうにアドバルーンが二つ、夕暮れを背に黒く細くたなびいている。今となっては見る機会の少なくなった光景。子どもの頃の休日を、何となく思い出す。橋の南詰から先は「常総市」。なじめない名前に変わってしまった生まれ故郷、その街…

Carnival of Souls 2

あれから19年も経ったなんて。 ジーンとポール。それぞれの描く音楽が、それほど違っていたなんて・・・あの頃は思いもしなかった。MTVアンプラグドのステージにエースとピーターが現れて、オリジナルメンバーが顔を揃えて、KISSの周りには再結成の話ばかり…

楽しみな朝

曇天の下、道を急ぐBongoの車内にHotel Californiaのアルペジオが静かに流れる。別に塞ぎ込む気分ではないけれど、灰色の空をたたき割るようなビートもいらない朝、こんな平日の朝があってもいい。このまま雲は晴れることなく、昼には雨の中。色のない金曜日…

夕の陽光の中で 2

<10/25の続き> ここしばらくずっと、マシンが走り出す9時を回ってから到着するいつもだったのに・・・腕にはめた時計を見ると、8時30分を回ったばかり。ずいぶん早く受付に並んでしまった気持ちになる。 MCFAJの最終戦を二週間後に控えた日曜日。全日本選…

季節外れの

昼下がり、風の吹かない交差点で、信号が変わるのを待っている。横断歩道の先、まだ葉を茂らせているケヤキの木陰に、すらりとパンツ姿の女性が一人、小さな男の子を後ろ手に引いてこちらを窺っている。辺りには誰もいない。ちょっとふしだらな思いを胸にも…

夕の陽光の中で

あの頃のようで、あの頃とはちがって。 muraが見たらこのツーショット、何と言うだろうか。舌足らずに「やっつけてやってよ」と、#69を着けたCRF150RⅡのオーナーに笑って言うだろうか。デジャヴよりもっと強く、思い出される光景はmuraの姿だけじゃなかった。…

All right Tokyo!!!!!

耳に小さなヘッドホンをねじ込み、ボリュームを上げて流してみても、肌にぶつかる大音量には敵わない。 真っ青な空にきらめく太陽、乾いた秋晴れが陰影をつける表参道からビルの6Fまで上がっていくと、すっかり黒で覆われたフロアに、作り物の光がうごめいて…

元サヤ

けして不仲になっていたわけじゃないし、もちろん嫌いになったわけでもない。ただちょっとの間、めぐり合わせが悪かっただけだ。雲に隠れながら林の外に消えていった陽に代わって、夕闇が溶け出すようにパドックを包み込む。その暗がりに黄色いマシンが、ひ…

Time has come

太陽が姿を見せないまま、雲に包まれるようにして今日が暮れていく。宵闇には灯りがともり、アスファルトにクルマのヘッドライトが落ちる。ロンTにパーカーを羽織らなくては外を歩けない土曜日、ここ数日で気温も急に下がってきた。ようやく秋、それも寒がり…

しびれてる

真っ白な煙とシンクロする、歪みのないサスティーン。耳障りなほど高い排気音は、薄くどこまでも細い。ヒステリックな高音を女性的と言う人はたくさん居るけど、むしろチカラのない鋭さに女性らしさを感じる。Γから降りた時、もう再び跨ることはないと思って…

そして、今日も。

西の空の高いところに、うっすらと月が漂っている。宵からの温い空気は太陽に照らされて、緑の葉先の小さな露がヒカリをまばゆく跳ね返す。少し寝坊した朝は、すっかり明るく乾いていた。駆け足で散歩から戻ると、急いでYシャツに袖を通す。この程度のロスな…

葛飾ラプソディー

不覚をとった。 何気ないフレーズが声になる前に、鼻が詰まり、喉が震えてきた。画面に流れる歌詞は滲み出して、動きのある映像が焦点の合わない、ただ色の塊りになっていく。どうやら涙が出ているらしい。 カラスが鳴くから もう日が暮れるね 焼き鳥ほおば…

Forever

1989年。ryoがようやく歩き始めるようになった頃、まだ社会人になり切れていない気分で手に入れたアルバムは、重量感のある曲調に、ブルース・キューリックの速弾きだけが線の細い旋律を奏でていく。CD黎明期の終わりらしく、1枚に15曲も突っ込んであって、K…

雨の月曜日

夜が明ける前から、雨が窓ガラスを叩いていた。 雨降る月曜日、仕事に出る朝に降る雨は、憂鬱な水の音をベッドの上に響かせている。まったく厄介、それでも週末に晴れた分だと思えば、少しは我慢もできる。昨日の走りでギシギシと重たいカラダを運転席に押し…

封印 8(完)

<10/13の続き> つづら折りのように急勾配と急な曲率を組み合わせた、日陰の中にある切り返し。それを半クラッチを使わずに1速で、ラインはインベタで回ること。言われたことを何度も口ずさみながら、もっとも苦手な左カーブを回り続ける。3周回って、1回決…

旧知 4(完)

“ホームコース”ロスか、それとも相方“ジャイアン”ロスなのか。 刺激が足りないといった風に、4ストローク150ccを静かに走らせるざりまま。それでも、最後のロングジャンプを果敢に跳び出しては、RMよりもはるか先で、きれいな着地を見せる。いつか「カッコよ…

旧知 3

<10/11の続き> MX408をサヨナラしてから2か月半ぶりに会うカノジョは、少し伸びた髪を一つにまとめて、ヘルメットの裾から垂らして走る。 カノジョの後姿を見るまで、#100さんが教えてくれた曲がり方を繰り返していたのに、あっさりとタガが外れた。その変…

封印 7

<10/9の続き> 「それは、下手だからです」 「開けるたびにすべって、うまく走れない」と嘆くワタシに、そう高笑い。2ストロークでもスロットルはじんわり開けること。それも低いギヤでしっかり開け切ること。シフトチェンジをサボり、高めのギヤを半クラッ…

3D2Y

ワンピースだ。 3日後じゃなくて2年後、チカラをつけてから再び会おうのメッセージが、ルフィの腕に刻まれている。3Dに大きくバツが付けられているのを見れば、どうしたってポートガス・D・エースを思い出してしまう。そこから先の物語はすっかりわからなく…

旧知 2

灰色をぶちまけただけの空の下、ときおり風が冷たく吹き抜けて、季節はずれの暑気はもう届かない。今日の予報は、いくぶん悪いほうに転がってしまったらしい。雨をたくさん吸ってしまった赤土も、やはり乾くことはなく、制動やら駆動とやらをいとも簡単に払…

旧知

真っ赤なTHORの背中を小さく屈めて、クランクケースの底をのぞき込んでいる。疲れたエンジンオイルを抜き取るその後ろ姿は、出会った頃と変わらない。ただ少し、言葉が多くなった気がするのはどうしてだろう。初めてMX408でまみえたレンズ越しの瞳は、降る雨…

封印 6

ステップから落ちた左のつま先がかろうじて路面をつかみ、そこからもう一度、コースの中に帰っていく。大きく息を吐き出すようにしながら残りをたどってみれば、やっぱり谷田部。きっと乗り手が悪いとわかってはいても、ここの路面は意地が悪い。林の中に広…

封印 5

ボードに描かれる赤くて大きな矢印に言われるまま、マシンをゆっくり右に曲げながら、コースインのアプローチをたどる。明るい日向は、程よく湿った濃い褐色。これなら車体に泥は付かない。すぐにひとつ目、左の小さなアール。右手に気を使わなくていい分、…

封印 4

<10/4の続き> まろやかな、いつもの姿のtodaさんに「楽しんでくださいね」と送り出され、揚々とパドックの奥へ戻っていく。今日は朝から気分がいい。急いで着替えを済ませると、黒と灰色で塗り分けられたシートの向こうへ右脚を蹴り出し、RM85Lのキックペ…

KISS COMES TO JAPAN!?

こうして二人の姿を見て、二人の話を読んでいれば、やっぱり思うのは、たったひとつだけ。堂々巻頭56ページ、しかもフルカラー。最高の彼らには、やっぱりステージで会いたい。そこはKISS EXPOじゃなくて、KISSだけでいいのに。

まだまだ、だ 5(完)

<10/1の続き> 昼を過ぎても雨は降り続き、山砂が吸い込みきれなくなった雨水は、マシンが走るたびに茶色の水になってにじみ出る。 それでも強引に、ゆるみきった泥を掻き散らして、4ストロークが無用に吠える。シフトペダルをすくい上げたはずがギヤは変…

封印 3

最後の坂を上り終えてパドックに出たときにはもう、空は青く晴れ渡り、太陽がまぶしく浮かんでいた。あふれかえるヒカリの中、黒く大きな書体で「SCRAPPY GIRLS」と描かれたトランポから、TEAMナノハナのお師匠さんがにこやかに手を振ってくれている。空と一…

封印 2

さあっと雨が音を立てて流れていって・・・おひとり様の練習なら、間違いなく心折れていたはずの日曜日。おまけに「谷田部」と来ればなおさら。そんなワタシのココロを引き留めたのは、「こっちは、降ってないよ!」の一言、kojimaさんが送ってくれたメール…

封印

ゴルフ場の真ん中を狭い県道で突き抜けると、つくばみらいの新興住宅地にぶつかる。そこから道はゆったりした二車線になり、軽く左に曲がった先に、太陽が大きく浮かんでいた。西に向かうBongoのハンドルを握りながら、スピーカーに流れるJ-POPを声高く歌い…