2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

Doctor Doctor

夕べ遅くの枕元から目が覚めるまで、そしてこうして地下鉄の満員に揺られながら、ずっと同じフレーズを飽きるまで聴き続けるのは、洋楽を始めて知った頃から変わらない。そんな変わった癖のまま、こんなに年を食ってしまった。窓に移った自分は、あの頃着る…

あれから・・・

「ネロちゃんは元気?」 旧いMX408をよく知る顔が二つ、目の前に並んで、犬を連れた一人が、そう話しかけてきた。いつもは成田にあるコースで走っているというカレは、相変わらずスズキのフルサイズに跨がり、遠い記憶に目を細める。 「コイツ、新型なんだよ…

気分は上々 8(完)

<4/11の続き> 弱気な背中はうまく消せているだろうか。 シートに腰を残したまま、右肩から上半身を、カーブの内側に落とし込む。気持ちが悪くなるほどのリーンイン。ロードバイクに乗るときの影が出始めて・・・背中に焦りがにじんでいないことを祈りなが…

長い休みのその後で

都心に向かう地下鉄の、長い車両の真ん中に腰を下ろす。読みかけの文庫本に挟んだしおりを手にページを開く。短編の連作は直木賞を穫った作品で、ちょうど幕の切り替わるところだった。ゆっくりとページを繰り、話が進むごとに席は埋まっていき、吊革につか…

夏日のデュオ 3

<4/27の続き> カン高い排気音を細くまき散らして、KX85が弾んでいく。 走り出すまで「うまく走れない」と涙を流していたはずなのに・・・先生のCRF150RⅡを交わしたのは、ほとんど走るマシンのいない、きれいなインサイドだった。先生よりも小さな背中を先…