2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

反応

介護タクシーの中、ストレッチャーの上で何度も瞬きを繰り返す。いつもなら左に半身を傾げているのに、気配を感じるのか、顔を右に向けて瞬きを、何度も何度も繰り返す・・・・・・。 ひさしぶりに寄り添う自分に、兄貴思いがよろこんでくれているのだろうか。小さ…

意気

大病を越えてなお、整わない滑舌で歌い上げる大川栄策の姿が、ふと格好いいと思った。唄うことをけして諦めない男意気。弱気になびく自分が情けない。曇りガラスを手でふいて、あなた、明日が見えますか。さざんかの宿の一節が、耳にこだまする。

喝采

百ほど足らず。これをもって善戦と為すか無念とするか。当事者にしか答えは出ない問答。それでもあえて善戦と、若き挑戦に喝采を送ろう。

選択

安定か変革か。手にした一票を投じる先は、もう決まっている。たった一人、その頂に登ったからといって、何ができるとは思わない。それでも、若き力で、何か一つでも変えてくれたらいいと願っている。県の外れの町に、そうした民意がどこまで集まるか・・・・・・…

光陰

遅く起きた土曜日。遮光カーテンの隙間から光がこぼれて、口惜しさに心が揺れる。日ごと貧弱になっていく左腕のその手のひらに、いつもの週末が目映くて・・・・・・画面を消して、階下に降りていく。 この気持ちが消えて無くならないうちに、外の世界に戻れること…

地力

あら楽し 思ひは晴るる 身は捨つる 浮世の月に かかる雲なし 大石の辞世をなぞるとは恐れ多いことだが、情けない心身をSNSに吐露したおかげで、ずいぶん楽になった。友たちのコメントにも、ただ励まされるだけ。 三日。彼の十兵衛光秀より、わずかばかり長か…

禍根

後悔しても時を戻したいと願っても、詮無いことよ。そう嘯いてみても、ほとんど元に戻ってしまった鎖骨に、悔いは残る。手術を過信して術後を疎かにしたこと。これが大きな禍根となって、心の奥底に沈んでいく。 出っ張った左の鎖骨をさすりながら、ふと左の…

些細

新しい生活様式が、二年目の夏を迎える。 それは、こじんまりと閉鎖的な変わり様で、「新しい」という言葉に未知への広がりを重ねていた身は、なかなか馴染めないでいる。そこに小さな不幸と不運が折り重なり、雨の季節が、さらに気持ちを鬱屈させる・・・・・・。…

東西

カラオケさえ許されない今、残された慰みと言えば、時代を遡ることくらい。戦国時代のrealを追いかけながらも、ifやwhyに思いを馳せる。それも浪漫だ。そして、時は、慶長五年。世に言う天下分け目の渦中を、今、泡盛片手に俯瞰する。それぞれの思惑を読み切…

夏至

夏至に晴れ間無し、それが今年はずいぶんひさしぶりに、空の明るい時間が多かったという。梅雨の晴れ間は、陽が落ちても変わらず。宵の漆黒にほどよい形の月が煌々と、夏至の底を照らしている。悪いことばかりじゃないはずと、夏の夜に、酔いがまわっていく。

羽目

雲が取れて青く光り始めた空に、鬱いでいた気分も晴れていく。心残りが無くなったわけじゃない。ただ、くよくよ考えていても、どうになるものでもない。ここはすっぱり諦め忘れて、ちょっぴり羽目を外してみようじゃないか。どうせまた、まな板に載る羽目に…

泡沫

前線の端が切れて、うたかたの夏。空の水色に、浮かぶ雲の白が眩しい。その輪郭はくっきりと躍動的で、幾重にも重なり合っては、天上へと高く盛り上がっていく。下を向いて歩くのは、らしくない。 今さら嘆いても詮無いこと。いや、ひとつも悪いことなどして…

再来

寝返りを打った拍子にズレてしまったか・・・・・・。 グギッと鈍い音が、左の肩口に響いた。ちょうど左膝のズレが元に戻るときのような、あの何ともいえない音だ。その瞬間、よくないことが頭をよぎったけれど、痛みはない。それをよいことに、できればハッピーエ…

鈍痛

動かすから痛いのか、動かさないから痛いのか。左肩に残るテンポラリーな鈍痛に、気分が迷走する。不自由な週末に、めずらしく何の予定もない。予報では朝から雨が降るというから・・・・・・とりあえずのんびり起きることにしよう。それで気分が少しでも晴れるな…

散歩

午後三時。仕事にけりをつけて、外に出た。 西から伸びた灰色に太陽が隠れ、木々の枝は大きく揺れ動き、葉が擦れあって風が音を立てる。ほんのり湿り気の乗った海風は、北の方から流れてきているようで、半袖の腕に小さな鳥肌が浮かぶ。いつもより二時間も早…

些細

水曜日、午後9時。脚本の先読みを愉しみながら、演者たちの技巧に引き込まれるまま、小一時間を過ごす。ささやかな至福が、ここにある。週の真ん中、宵に任せてのんびりとしたい。

大味

朝からの洗濯物はかさかさになるほどに乾ききって、午後になってもギラついた太陽からは、じりっとした陽射しがまっすぐに落ちてくる。まったく梅雨入りしたはずなのにと、まだ西に陽が浮かんでいるうちからネロを連れて、いつもの畦を進んでいく。ふと見上…

三週

あと三週。肩を自由に動かすまで術後四週、一週間しか経っていなければ、そういう計算になる。今しばらく、水平までの可動と少ない負荷を心がけることにしよう。せっかく高い金を払って手術をしたのだから・・・・・・。

旅心

雨にも当たらず、雲間からとどく陽射しも、窓を開けるだけでやり過ごせる。三年ぶりになった南房総周遊。いつもながら水無月なのに、ここまで濡れた記憶が薄い。シロを連れてこられなかったのは残念だけど、定宿のご主人に戦国時代の逸話を聞かされたり、思…

房総

入り組んだ海岸線。イエローラインを割らないように、でも、ターンスピードは落とさぬように・・・・・・いつの間にか隣にkeiとネロを乗せていることも、軽のハイトワゴンであることも忘れて、ただアスファルトに集中する。対向に流れていく単車に奪われる視線。両…

朝寝

病室での生活と合わせて、午前7時前には起きる毎日。早寝したところで、翌朝早くに起こされてしまえば、ゆっくりと眠れた気にはならない。できればベッドから起き上がるその瞬間まで、ひんやりした朝の中で微睡んでいたい。この週末も、なぜか早起きが続く・・…

焦燥

晴れ渡る週末に、廻らない左肩。 堕ちゆく筋力に、増しゆく脂肪。 空梅雨の予感に、募るのは焦り。

無事

久米仙片手に「特捜9」を見終わって・・・・・・さて、風呂にでも入ろうか。 験をかついで録画予約をしなかったから無事に帰ってこられたと、虫の音響く夜気に乾杯。

帰還

8時過ぎにはパソコンを起こして、都内某所の仮想サーバに接続。個人のデスクトップを開いてメールやらチャットやらを確認すると、すぐさま別端末に切り替えて・・・・・・9時を待って、いつものメンバーで集まりZoomミーティングが始まる。ツカミはもちろん、当世…

安堵

雲は白く、青く抜けた先に、夏がぎらついている。見渡す田圃の緑も低いまま、来た時とほとんど変わらぬ雰囲気の中、来た道をリバースしていく。出迎えるネロはそれほどよろこぶでもなく、寝室は、強い西日で干上がっている。狭いトイレから出て、薄暗いガレ…

迷答

ともあれ言ってみるもんだ。 土曜日だった昨日よりもさらに遅く、昼に近い時間になってようやく担当医が回診にやってきた。傷口を診ただけで、きびすを返そうとしたから・・・・・・「退院はいつ頃になりいますか?」と、あわてて声をかける。「そうそう、退院ねぇ…

許可

左肩に沁みついた、鈍い痛みにもずいぶん慣れてきて・・・・・・行動範囲もだいぶ広がった。と言っても、(痛くなければ)肩口まで左腕を上げてよいことと、4階から1階にある売店まで降りて行っていいこと。そして、三角巾を常着していなくてもいいこと。いつもな…

当日

開け放した扉の外を靴音が忙しく駆ける。はす向かいのベッドからは、薄いカーテンをすり抜けて、痛みに耐える声が聞こえてくる。枕も変わって、アルコールも無ければ、午後の9時からそう眠りにつけるもんじゃない。結局、浅い眠りの波を越えて、その日を迎え…

前夜

整形外科の階だけあって、あちこちにバイタリティが散らばっている。談話室から望む久喜の郊外には、緑の稲田が風にそよぎ、その背を左右に高速の高架が貫いている。やさしくもしっかり味の入った夕餉を一気に平らげ、消灯前、担当の一年生看護師に「明日も…

特捜

いよいよ明日か・・・・・・。 さてと、毎週欠かさないテレビドラマを観て、早めに寝ることにしよう。そして、予定どおりに帰ってきて、続きを楽しむことにしよう。 ささやかな験かつぎ。