2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

最後の五月晴れ

端からバイクをあきらめることにした夕べ。冴えない曇り空に少し朝寝坊するつもりが、まったく裏切られた。雨戸は閉めず、ガラス窓に中途半端に引かれたカーテン。その大きなすき間からは、昨日と同じ陽が、まっすぐに射し込んでいた。ベッドから這い出て窓…

極上のプロローグ

梅雨前線の北の縁に大陸から乾いた風が流れて、洋上へ流れていく。夕べの雲はその風に乗って東へ抜け、一面の青に白い雲がひとつ、まぶしいヒカリに照らされて掠れるように消えかけている。雨に包まれる少し前、この時季にだけ味わえる、極上の一日。その一…

明日になる前に

もう30分もすれば、土曜日になる。 さっきまで音を立てていた雨は、朝の情報番組で聞いたとおり、夜半には降るのをやめてしまった。日曜日には、また雨模様。そして明日だけが、梅雨の晴れ間のような真夏日になるという。真夏日と言っても、この時季、真夏と…

ディストーション~アブナイ夜会より

黒いシールドが、ケバい原色の直方体につながれる。反対側からもう一本、違うシールドが延びて、小柄なアンプリファイアのINに挿し込まれる。エフェクターのスイッチを右のつま先で踏み、ヒザの上に抱えた白いボディのテレキャスター、4、5、6弦に細い指を這…

行き先は?

細いパープルの縦縞が入ったワイシャツに、グレーのスラックス。足下のアンバー色した6インチブーツだけが、かろうじて黄色いボディーカラーと釣り合っている。スーツ姿に着替えをすませてから、いつもより1時間遅く玄関を出る。引っ張り出したのはGROM。そ…

優柔不断

「症状が出るのは五分五分といったところですね」 無理強いさせてきたわけでもない、それよりも、ずいぶん可愛がってきたはずなのに・・・1年の歳月は、左ヒザにそれなりの仕事をさせてきたらしい。GWに痛み出して、ロッキングを繰り返すようになった左ヒザ…

足利直義って誰?

ずっと信じて、信じきって、疑うことすら考えられない。そんな子どもの頃の常識が、「新しい研究成果亅の名の下に、わりと簡単にくつがえされる。確かに真実は一つ、誤りは正すべきだ。でも、この絵はずっと源頼朝で、「いい国造ろう」のフレーズと一緒に、…

未完

走りの感覚は少しずつ戻ってきたけど・・・整備の方はまだまだ、これかららしい。半日かけても腰上のオーバーホールが終わらないのは、左ヒザと老眼のせいじゃない。この一年で、すっかり腕が鈍ってしまった。おまけに助手にも頼れなくては・・・しばらくガ…

日なたの匂い 5(完)

<5/18の続き> 第1コーナーへ、ホームストレートを斜めに切り取って走るCRF。そのサイドゼッケンめがけて、右手をひねり、左手の指が、生まれたてのチカラを後輪へと解き放つ。 思っていたよりもはるかに深く、乾いた砂がストレートを覆っていて、全力で加…

夏は夜

西の空、建物の陰に隠れてしまいそうな低さに、上弦の細い月が浮かんでいる。射るような昼のヒカリが消えて見えなくなって、漆黒の冷たい闇には、冴え冴えとした三日月が、よく似合う。その月の真横、弧の背中から少し離れたところで並ぶようにして、宵の明…

求ム、遊ビゴコロ

この時季、定時に仕事を切り上げて、終業のチャイムが鳴り終わらないうちに外へ出てみれば・・・見事に明るい太陽に射抜かれ、黒い影法師が歩道に灼きついた。そのまま軽トラに乗り込み、来た道を巻き戻して走っていくと、何か後ろめたさと一緒に、これから…

逃避行へ

鎖につながれたままの犬、籠に閉じ込められた鳥・・・。 湿った寒い日ならいざ知らず、じりじりと陽の射す夏日なのに、空調から吹き下ろす風に肌がつめたくなる。大きなサッシ窓には白いブラインドが下ろされて、わずかに天井へとヒカリが抜けているだけ。外…

OutRider

この記事を読みたくなって、昨日、上野の駅ナカで買って帰ってきた。昔は月刊誌だった「OutRider」も、季刊となり、春夏秋冬それぞれの時季にだけ陳列されている。ただ、その性格からいえば、季刊が一番良い発刊タイミングだと、今ではそう思うようになった…

日なたの匂い 4

左脚を軸にして、ゆっくり右脚をシートの反対側へ渡してやる。そのまま左脚でマシンとカラダを支え、右手でキックペダルを引っ張り出し、その短い金属の棒に右の足裏を当てて一気に踏み下ろす。左ヒザをひねらないと、うまくマシンにまたがれない。むしろ走…

日なたの匂い 3

運転席から降りるときも、荷室からKX85-Ⅱを下ろすときも、左ヒザがねじれてしまわないように脚の動く方向にカラダを正対させて・・・その姿は、まるでASIMOのよう。真正面と真後ろにだけ進むように、カラダの角度を決めてから動いていると、急ぎたくても急げ…

日なたの匂い 2

<5/9の続き> 利根川を渡るBONGOのフロントガラスに、つぶれたままの雨粒が残って、視界の輪郭がなくなっていく。まばらにはじける雨は、汚れた埃を洗い流すことなく、ただガラスをにじませるだけ。 色のない市街地を通り抜けて、もうひとつ小さな川を越え…

無敵

濃紺のプリーツに向かい風をはらませ、白い太ももをあわらに全速力で駆けるJK。埼玉から千葉へ渡る長い橋の上、片側2車線の国道は、クルマが容赦なくその姿を追い越していく。そのたびにスカートが派手にまくれ上がり、背中まで届く長い髪は、気流にあらがえ…

Rain Rainey 5(完)

<5/11の続き> パーシャルのまま回り続けるGSX。いきがってスモークシールドで走る視界は、見にくくゆがみ、にじんでいる。曇り取りに薄く開いた隙間から、冷たく濡れた風が流れ込む。その外側、追い越し車線からヨシムラのサイレンサーの後ろへと、一台の…

アンバランス

気の早い5月の台風は、急ぐようにして東へ抜けていった。天気予報が言うとおり、夜半に激しく降りつけた雨も、寝入ってすぐに上がって、目が覚めたら太陽の照りつける朝になっていた。あれほどの雨も、渇ききった大地はあっさり吸い込み、アスファルトには、…

そろそろ旅の支度でしょうか

5月に台風なんて、本当は驚くことなのだろうけど・・・50年に一度、100年に一度と、“人生初”の大雨やら大雪やらが続く異常気象に慣れてしまって、うまく反応ができなくなっている。乾いた風に陽射しが揺れて光るこの季節、たしかに突然の嵐があっても、わざ…

Rain Rainey 4

<4/17の続き> 対向車線を猛然とすり抜け、ドアミラーの隅、右に大きく傾いたマシンが小さく映る。メーカーも排気量もよくわからないけど、そのバンク角だけは鮮やかだ。丸めた背中を斜めに「Walter Wolf」と金文字が走っていたような、そんな記憶を呼び覚…

0.01

極度の近視、それも0.1に届かない視力の持ち主にしか、見えない世界がある。人の顔には目鼻がなくなり、信号機は赤と青の花火になる。メガネやコンタクトレンズを外してしまえば、すぐにそんな世界が広がる視力を、ワタシは持っている。裸眼では歩くこともま…

日なたの匂い

GWに入ってから、ほとんど雨が降らなくなった。春先、アスファルトが濡れそぼち、土は乾く間もなくゆるんでいたのに・・・いつしかヒカリと風に土埃が舞い、影は黒い輪郭で地に張りつくようになっていた。陽射しあふれる、そんな休日に慣れた瞳に今朝は、灰…

奔放と天然と

ちょっと目を離した隙に“拾い喰い”をやらかしてから、いや、どちらかというと腸を切開するほどの大手術の費用を払わされてからというもの、夜陰に紛れてシロを放すことをしなくなった。家の裏手に回れば、そこはもう、植えられたばかりの苗が風にそよぐ田園…

ヒカリ誘う季節

繰り返しの毎日に戻ってみると、やけに一日が長い。それでも何とか時間まで、仕事している風を装っては、終業のベルを聞くか聞かぬかの時機で外へ出る。朝方、空を埋めつくしていた雲は東へと抜け、青く清んだ西の空のずっと上の方に、太陽が白くぎらついて…

ガンバレ、ポンコツ!

こどもの日、わざわざ自転車を借りて、里山の風景を駆け巡る。 電柱の見えない通りに平屋造りが立ち並び、フラフラ漂う観光客を、ジグザグに縫って走り抜ける。長く続く坂道に向かえば、子どものようにむきになってペダルにチカラを込め、歩くほどの速さにな…

国境の湯宿

ハザードランプを点けて、減速を始める白い軽自動車。GWも今日と明日を残すだけ、都心から放射状に延びる高速道路には、その中心に向かってクルマが集まりだしている。そんな混み合う車列を尻目に、下り車線をひた走る。渋川伊香保を過ぎると、さらに走るクル…

命短し、恋せよ

「今年は長いよね」と話していた5月の連休も、さすがに尻尾が見えてきた。折り返しを過ぎてしまっては、後は坂道を転がるようにして、下りていくだけ。あっという間だ。初日から、いきなり遠乗りをしたり、わざわざ北軽井沢までモトクロスをしに行ったり。近…

カエル

陸に上がって土まみれ。バイク乗りには何となく縁起の悪い、緑色したカエルの子。ひっくりカエっても、無事にカエれるのなら・・・それに越したことはない。だから、その緑は、案外幸運の色なのかもしれない。 灼けた畦道を、隣の田んぼ目指して力いっぱい飛…

皐月の休日

ryoよりも若い2人と、走るたびに土埃が視界を奪うコースで、追いつ追われつ・・・。固い凹凸に暴れるKX。砂塵の先にkyoheiくんの250が揺らめく。懐かしい顔とも会えた皐月の休日、眩いヒカリに照らされて、色んなものが入り込む。