2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

274.6kmの休日 3

<10/19の続き> 佐野のアウトレットモールは素通り、国道50号線を少しだけ走ってまた、みかも山の南麓へと高規格の片側2車線から広域農道にそれていく。広めの道はいくつかのアップダウンを繰り返してみかも山から大平山の麓をすり抜け、栃木市へと続いてい…

サイゼリアのキミに 3(完)

<10/27の続き> スカートの裾がはだけるのなんかかまうことなく、大きく脚を開いたまま、正面に座る同級生と話し込む横顔は浅黒く、その上に真っ黒な瞳が大きく、それでいて長く切れるようにして、目尻へと流れている。この姿にそっくりな娘と、過去のワタ…

心残りのする風景

この夏Dukeで行くはずだったこの道は、またしてもお預けになりそうだ。来年こそはと、ページをめくりながら思いを募らせてみれば・・・どこかで鬼が笑う。

Carnival of Souls

このアルバムには、ジャケットに切り取られたキッスが、そのまま詰まっている。彼らがこの道を選んでいたら・・・ワタシも少しだけ違う道を歩いていたかもしれない。翳りのある旋律に包まれた、好きな1枚だ。 THIS DAY IN KISSTORY 1997

サイゼリアのキミに 2

<10/22の続き> 木曜日の夜、時間は8時を過ぎたあたり。国道沿いにあるとは言っても、埼玉の片田舎にあるファミリーレストランは、埋まる席もまばらだ。背中側になる喫煙席がにぎわっているのも、土地柄なのかもしれない。そして何より安いと評判の店内には…

夜道

ヘッドライトの灯りから逃れるようにして、ホイールの下を流れゆくアスファルト。その刹那に、いったい何が映るというのだろう。尾崎の詩が沁みる夜もあるさ。

週末、外で遊べる優越

湯船に肩までどっぷりと浸かり、両手で湯をすくい上げて、顔を洗う。頬と唇の周りがひりひりと滲みて痛いのは、秋晴れの空の下、二日も日向で遊んでいたから。さすがに夜の闇が街の色を隠してしまうと、半袖でいるのはつらいけど、あふれる陽射しは、秋にし…

イバモト本番車

「だってノーマルは、焼き付かないように濃くなってるんだから・・・立ち上がりでボコつくならニードルを薄く、そう、ハリのクリップを一段上に・・・いや、一番上にしてもいいかも」 全日本の最終戦に吸い取られて、8台しか集まらなかったコースの管理人が…

ヒカリの季節の底

さして厚みもなさそうな明るい灰色の雲に覆われて、空がまあるく伸びている。破れかけた雲間から覗く太陽は、ぼやっと白く滲んでいるだけ。ひばりが騒がしくもゆっくりと、その低い天空をめざし、必死に近づこうとしていた。曇ったおかげで夜露もおりていな…

サイゼリアのキミに

昨日は『相棒』、今日は『科捜研の女』。二日続けて、好きなテレビドラマを見逃してしまった。毎週欠かさず観ようとしていたわけでも、だからもちろん、レコーダーで毎週録画を設定しているわけでもないのに、なぜか見逃したことに、気分が塞いでしまう。そ…

泥とワダチと新しい出会い 2

<10/18の続き> この週末、秋の太陽が顔を出して気温も上がるはずだったのに、土曜日の明け方まで降り続いた雨のおかげで、コースのあちこちには水たまりができている。先週のイバモトと違うのはひとつ、雨が落ちていないことだけ。雨水を吸い込んだ山砂が…

あの日の幕張に

もう2年経つんだ・・・。 あの日、幕張は雨が降っていたっけ。ryoと二人、巨大なスパイダーマシンから降りてくる彼らにしびれたのは、2年も前のこと。武道館の追加公演にも駆けつけた2013年。あれから2年しか過ぎていないのに、すっかり遠い記憶になってしま…

274.6kmの休日 2

<10/12の続き> ピンクナンバーの原付二種らしく、国道のバイパスではなくて細い県道を選ぶと、お互いがお互いの姿を奇妙だとシールドに映しながら、弾けるように走り出す。前を行くワタシが中央線に寄って、後ろに着けるori-chanが路肩寄りを走る。見事な…

泥とワダチと新しい出会い

たっぷりと盛られた山砂が、コーナーにもストレートにも深く粘りけのあるワダチを刻みつける。腕に覚えのある連中が、ただ一本のベストラインを繰り返し走れば、泥は弾かれ、下にある固い土までいびつに掘り起こされる。ゆるい路面に右手を捻れない連中は、…

泥にまみれて~番外編

プラスチックハンマーで叩きながらクランクケースカバーを取り外すと、狭いガレージの中が一瞬で焦げ臭くなった。「焼き付く」とは、なるほどうまい表現だ。フリクションプレートはオイルと同じように濃い褐色に焼けて、その間に挟まれて、鈍い銀色をしてい…

泥にまみれて 2/2

<10/11の続き> 弱々しく第1コーナーを回って、408コーナーに向かうストレート。そのわずかな上り勾配にもう、トルクフルな4ストエンジンは反応しない。そして、両足を泥の上に落としたワタシの両脇を、にぎやかにマシンが駆け抜けて、その大きな左バンクを…

まだ見ぬ明日へ 6(完)

<10/13の続き> なだらかに整地された園地は青々として、水面へゆるやかに落ちている。その真ん中に、キャンバスをヒザに抱えた白髪まじりの女性が、右手で絵筆を突き出して、小さく首を傾げている。彼女の視線をたどるまでもなく、目の前に鏡池が現れ、群…

鉄道の日

どこまでつづくの このせんろ どんなきかんしゃ はしるんだろう 保育園に通う息子が大好きで、一緒になって歌っていた歌を今宵、湯船につかりながら独り口ずさむ。 のりたいな のりたいな のって とおくへ いきたいな

まだ見ぬ明日へ 5

<10/10の続き> 湯田中の宿に向かう途中、上信越道を長野インターで降りる。 Bongoの助手席にkeiが座り、荷室にはシロとネロが仲良くカゴの中。旅に出る格好も、すっかり変わってしまった。一泊で走れるところは、ほとんど回ってしまったから、バイクで泊ま…

274.6kmの休日

「五霞の道の駅に8時で」。走り慣れたバス通りの上、いつもより2時間は早い朝を切り裂きながら、GROMを走らせその場所へと急ぐ。待ち合わせの場所と時間を決めてその日を待つのは、思い出すこともできないほど遠い記憶の中にある。もう再び訪れることはない…

泥にまみれて 1/2

最後まで走りきれないなんて、まるで思ってもみなかった。 それまで泥まみれでも快走していたCRF150R-Ⅱ。しかしその4スト150ccエンジンは、レースがスタートして2周目のホームストレートで、右手を全開にしても、前に出ることを止めてしまった。オーバーレブ…

まだ見ぬ明日へ 4

ツーリング仲間が、一人また一人とバイクから遠ざかっていって、いつしかワタシの中の景色は、見覚えのあるものばかりになった。そしていつの間にか走り出す前にもう、映る景色も帰ってくる時間さえも浮かんできて、バイクに跨がる前からツーリングが終わっ…

まだ見ぬ明日へ 3

バイク雑誌ではなく、あえて旅行雑誌から行き先を拾い出すことが、何かとても大人な所作のような気がして、走りよりも仲間に今で言うサプライズと、そのサプライズを24撮りのフィルムにうまく切り取ることが楽しみになっていった。マシンも2ストロークから4…

まだ見ぬ明日へ 2

<10/4の続き> 学生時代から付き合いのある伊豆半島にも飽きてきたとき、耳に届いた「軽井沢」や「小淵沢」の響きには、どこか大人の匂いがしてた。ツーリングに向かう先は、南から北西へと延びていき、埼玉から山梨、そして長野へと、少しずつ湾岸エリアか…

真田丸

武田勝頼がついにその姿を望めなかった新府城に徳川家康が拠り、北方の海津城から寄せる北条氏直と対峠する。信濃に北条と徳川の名が跋扈することに奇異を感じながらも、天正壬午の乱で知られる三つ巴の旧武田領争奪戦は、信長の跡目争いの陰にすっかり隠れ…

治るもんじゃない

旅行に連れて行っても、こんな写真ばかりのシロとネロ。それでも愛らしい仕草と表情は、Facebookの友達にもちょっとした人気だ。親としては思わずにやけてしまうけど、ネロにはもっと尻尾を上げてもらって、シロにはもう少し静かにしてもらいたい。そうすれ…

秋映

旅のみやげに、道ばたの露店で林檎を一つ、分けてもらった。深い紅色に丸まった林檎は、手のひらに余るほどの小ささで、今が旬らしく辺りの木の枝に黒々とその実を付けていた。「秋映」と名付けられた新種は、やわらかな陽射しをたっぷりと吸い込み、歯ごた…

まだ見ぬ明日へ

バイクでツーリングを始めた頃、いつか行きたいとずっと思い描いていた北信濃の小さな池は、まだ濃い緑に隠れるように佇んでいた。風が後ろの山から水面に吹き下ろしては、やわらかに広がる林とススキの葉を細かく揺らしている。どうやら来るのが、少し早く…

彼岸 11(完)

「そんなの、瞬殺ですよ。瞬殺!」 いつも使っていた建材用のグラスウールを詰め込んだと聞いて、店のinaちゃんが高らかに笑い飛ばす。RMのときもKXのときも、それで問題になるどころか、すっかり調子がよくなっていたのに・・・4ストの排気には向かなかった…

彼岸 10

フルサイズ組と一緒の今日は、今の自分とSXにできる精一杯の走りをして、コースの中に居場所を確保する。気分次第で走れないのは、今日のメンツと走っていた昔のMX408と同じ雰囲気。わずか10分を、途方もなく長い時間に感じながら、待ちに待ったチェッカーを…