2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

冬の気配 終

ちゃんと恐怖もするし、努力もするんだ・・・。 飄々とした横顔は、ほとんど本音を見せないから、素直に驚いた。shinくんの台詞を思い出しながら、全開にしたエンジンを左の人差し指が解き放つ・・・14時ちょうど。最後の10分を走る“大人”はワタシだけだ。mo…

冬の気配 3

<11/27の続き> #314、“KXのにいちゃん”が最後にチェッカーを受けて、スターティンググリッドから女の子が二人、仲良くCRF50を走らせる。フルサイズマシンが居なくなり、50ccから110ccまでのミニモトクラスに入れ替わって、広いコースがすっかり静かになっ…

他社から乗り換え、してみる?!~後編2/2

<11/25の続き> やわらかな抑揚は、まっ平らな話し方をする関東人に、よく沁みる。彼女の質問には答えず「大阪からですか?」と切り返す。一瞬の沈黙の後、「大阪じゃないですけど・・・関西方面です」と、黒い瞳が大きく開いた。”大阪”と決めつけたのは・…

冬の気配 2

shinくんらしい派手なジャンプに、乗れて調子がいいと思っていたら・・・「キャメルもしばらく跳んでなかったから、ビビりが入っちゃって・・・ダメダメ。ダブルもまだ跳べてないし」ゴーグルを付けたまま、ヘルメットを二度三度、横に振って声を張る。イバM…

冬の気配

狭い田んぼ道が続くのに、一体どんな腕前の運転手なのだろう・・・全体を真っ赤に塗り上げられた超弩級のトレーラーが、パドックとコースの間、洗車場の前に横付けされていた。明日の“祭”で主人役を務める、IAライダーの増田一将。その彼が招いた巨体には、…

他社から乗り換え、してみる?!~後編1/2

開放された店の中は、見事に空調が効いていて、空気が温かった。手にした上着を着るほどじゃない。そのまま建物の奥まで歩いていって、この前壊れたヘッドホンの代替品を探してみたけど、天井までびっしりと飾られた彩りの中に、「これだ」というものは見つ…

他社から乗り換え、してみる?!~前編

ビルの5F。部屋の大きさを無視するように放り込まれた机と、その上に並んだタワー型のパソコン、ディスプレイ。黒い窓が、部屋にうごめく人影をはっきりと映している。閉ざされた空間に人いきれ・・・ワイシャツの袖をまくり上げて、疲れを知らない若い社員…

二度目のMCFAJ 8

やっと本気になったのか、短くカットされたサイレンサーから、KXが耳障りな高音を吐いている。せいぜい、あと一周・・・その差は、コーナーひとつ分よりも離れている。ここまできて、簡単に前を獲られるわけにはいかない。まさか最後の2分で追われようとは・…

二度目のMCFAJ 7

スネークに二つある大小の坂は、横すべりを誘うこともなく、リヤタイヤの回転をしっかり受け止めてくれる。コース中、一番苦手にしている鋭い右コーナー。長い上りに続いたワダチにも、今日は相性が良いようだ・・・いつもなら“一旦停止”してから上る坂も、…

二度目のMCFAJ 6

<11/17の続き> 全開にした右手が、ホームストレートを短くする。第一コーナーの入口にあった凹みも均されていて、フロントタイヤを不安に思うことも無い。続く第二コーナー。目の前からアウトバンクに向かうryo・・・あくまで“練習”と言わんばかり、確かめ…

雨上がりの風

一日中降り続いた雨が、日曜日の朝をしっとりと目覚めさせる。夜の奥底まで聞こえていた雨音で、走りに行くのはすっかり諦めていたから・・・起き抜けのガラス越しが黒く濡れていても、割と元気にベッドから這い出て来られた。空のうんと高くに、きちんと並…

まるで新品!?~後編

そのうちの一本、駅を背にして線路と直角に延びる道を選んで、歩き始める。ひときわ幅の広い道には、薄暗い歩道をぼんやりと照らすイルミネーションが、背の低い街路樹に巻かれていた。途中、イタリアの国旗をかざした落ち着きのある構えの店があって、宵の…

まるで新品!?~前編

机の上には、まだ確認しなきゃいけないCD-ROMが七枚、透明のプラスティックケースに入って、積み上げられていた。四つの辺が几帳面に揃えられ、ぴったりと重なり合っている。何時間もかけてたったの一枚・・・疲れて老いた瞳では、それが精一杯だった。予定…

二度目のMCFAJ 5

丸められて傘のようになった黄旗が、コースマーシャルの頭上で大きな弧を描いて・・・左端から一台ずつ、先導車のYZ250Fを追って、第一コーナーに向かって加速していく。イバMOTOにはない流儀だ。隣にいたryoが、最初の合図で、思わず飛び出してしまう。 す…

二度目のMCFAJ 4

“エキシビション”と言えば聞こえはいいけど、いわゆる“お試し”レースの「Local-X」。12分の練習走行と、わずか4周の“勝負”で、エントリー費は2000円・・・それでも、500mlのミネラルウォーターと小袋に入った駄菓子を組み合わせた参加賞が配られるし、事前エ…

二度目のMCFAJ 3

「託児所の並びです」ori-chanから送られてきたメールに合わせて、第一パドックの一番左端の列を、手前から目でなぞっていく。白線の枠を守り、図体のでかいトランポ達がすき間なく並んで、レース前の匂いがする。少し上気した顔で、左から右へ視線を移すと…

二度目のMCFAJ 2

コースの入口には、さっき目にした大会事務局の青いテントや、タイヤメーカーの赤や黄色のテントが散らばっている。その間を、揃いのジャンパーを羽織ったレース関係者が忙しく歩き回っていて、クルマ一台が通るのもやっとの賑わいだ。ぐちゃぐちゃした粘土…

二度目のMCFAJ

「仕掛けた時に抜かないと・・・抜けないよ」Lox-Bクラスを制して、表彰台の真ん中から降りてきたryoに、MCの先輩たちから手厳しい祝福の声。はるか後方で、tomobeさんの背中を見続けたままワタシにはわからないけど・・・混走していたLox-Aクラス、フルサイ…

快晴、無風。 終

リヤタイヤがうまく斜面を蹴りつけて、瞬きほどの時間、無重力になる。着地してから、今度は右に左に細かく車体を振り回す。高低差の中にある連続するジャンプ・・・減衰を締め上げた足回りが、ほっとかれたまま荒れた路面に弾かれては、タイヤが逃げる。左9…

快晴、無風。 9

この後がよくない。好きなはずの上り坂も、すべる赤土に、アウト側はバンクもなくて・・・そのまま目一杯はらんでいくと、林の中に消えてしまいそうだ。木々に囲まれて、暗く湿っている路面は、傾けたリヤタイヤを簡単に空回りさせてくれる。外に向かって大…

快晴、無風。 8

続く短いテーブルトップジャンプを跳び、ryoがアウト、ワタシがインへと分かれる。その先の右コーナーは、大きく上りながら回るせいか、フロントタイヤが落ち着かない。すくわれそうになる“足下”を両腕で押さえ込み、パドックの平地を越えて跳び上がる“ビッ…

快晴、無風。 7

<快晴、無風。 6の続き> 太陽が空の真ん中に昇ってきて、路面に広がっていたマシンの影も、ほとんど見えなくなった。昼休みの前、最後の一本もryoと絡んで走れるように、スターティンググリッドの前で、KXが戻ってくるのを待つ。山の起伏をそのままにして…

11月3日の朝~終

「いつものトコロまでは持たなかった・・・と」歩道の段差を乗り越えてガソリンスタンドに入ると、ryoが口を開いた。いつもなら突っ切っていく交差点を、左に曲がったところにあるガソリンスタンド。これで、途中で止まってしまうこともない。境橋から真っ直…

11月3日の朝~4

利根運河を渡ってすぐ、利根川沿いの農道へと、県道を左に折れる。ひさしぶりな感じがしないのは、先々週に仕事で通っていたから。土手の上を短く走って、右に曲がり、とても柏市とは思えない田圃の中に降りていく。程よい温度で、隣はまぶたが重くなってき…

11月3日の朝~3

「寒いか?」うっすらと下の方から、フロントガラスが曇ってきた。「んんー、ちょっと冷えるね」このところ、朝は冷え込む。おまけに頼みの太陽も、雲の向こうに隠れたままでは・・・風を受ける透明のガラスは、冷たくなるばかりだ。ただ、すぐにも給油ラン…

11月3日の朝~2

それでも早起きした10分のおかげで、7時前にはBongoを走らせて県道に出ていた。このところ左にばかり曲がっていたT字を、右へとハンドルを切る。 「とても午後から晴れるとは思えないけど・・・」フロントガラスに広がる曇り空を見ながら、ryoが口をとがらす…

11月3日の朝

携帯電話の電子音が鳴り始める直前、すうっと目が開いた。強制的に起こされなかったのが、ちょっと幸せな気分。すっきりした頭で階段を下りていく。昨夜、ペットボトルに移した残りの入った紙パックを、冷蔵庫から取り出す。そのまま口を付けて、冷えた珈琲…

快晴、無風。 6

ジャンプの度に高く跳ばされては落とされ、奥に延びる複雑な下りには細心の操作を求められて・・・5周と持たずに、スターティンググリッドから小道を上がっていく。フルサイズマシンを乗せて、ポツポツと集まってきたトランポが5台・・・とてもパドックを埋…

快晴、無風。 5

第一コーナーのバンクから、一つ目のテーブルトップ・・・すり鉢のように平らなところが短くて、“ハーフパイプ”でも走っている気になる。続く小さなテーブルを跳び越えて、上りながら大きく左に切り返す。コース中、一番高く跳ばされるビッグテーブルトップ…

快晴、無風。 4

スターティンググリッドの前で円弧を描いていたKXが、コースに出ていく。コースにもパドックにも、エンジンのかかったマシンは一台だけ・・・微かに響く排気音が、コースをたどる様を伝える。ゆっくりと近づいてくる高音が力を増して、目の前の坂を駆けて上…