いつもは駅から歩いてくる人なんかほとんどいないのに、駅前に通じる小路を曲がるまでの間、北風に押されるように何人もとすれ違う。ちょっと不思議に思っていたら、駅前の小さなロータリーにはタクシー待ちの行列ができていて・・・暗がりのホームには区間…

「場所取り完了しました！ とりあえず、受付場所からまっすぐのところにダンロップのテープで8箇所くくっときます」 ざりままのメールにあった黄色いテープを見つけるよりも早く、受付のすぐ先に、見慣れた濃紺のハイエースが停まっているのがわかった。iguc…

江戸川を渡り、野田市を抜けて、いつもの農道をいつものようにひたすら真っ直ぐに走る。雲は東の端に縮められていて、白んだ空には金星が光ったまま。ただ、追いやられた雲の色は重たそうな黒。紛れもない雨雲だ。利根川を越えて取手に入ると、歩道の表がし…

午前5時。冬の朝は、白むどころか真っ黒なままで、まったく音もしない。思いきりカーテンを引いて、出窓の下を覗きこむ。夜半にも｢降るかもしれません｣と言われていた雨は、まだ落ちていなかった。薄い街灯の光が、路地を青く照らしている。ギリギリまで整備…

期待していたほどの温もりを感じられないまま、冷たい風が夜の街並みにそよぐ。金曜日、平日最後の夜が濃く深く、静かに過ぎていく。日曜日のためにやることがいっぱいあったのに・・・頼みのryoは、風邪を引いて使い物にならず、CRF150RⅡのサイレンサーを分…

日の入りが、少しだけ遅くなってきた。５時３０分、西の空が薄く引いた杏色に澄んでいる。まどろむ宵闇の中、昼食に出た時にカラダをつつみこんでくれた温もりは、もう届かないけど・・・色つきの時間は日一日長くなって、丸くなった背中も、少し伸びてきた…

#2と#4のステッカーが1セット、３枚ずつ。そして、#1が2セット。3日も前から電話を入れておいたから、店長のkubo-chanが、白いビニール袋に揃えておいてくれた。レジの奥にある事務机からパッと袋を取り上げて、そのまま「はい、これ」と手渡してくれる。常…

だまされたわけじゃないけど、少し甘く見ていた。 何度か狭い路地を曲がってつないで、バス通りを左へ――缶コーヒー1本分の排気量しかないdukeが、ほどほどの勢いでアスファルトを駆け出す。流れるクルマの姿が見えない道で、デジタルメーターの数字だけが目…

北西の地平が、雲をかきわけて青白く光っている。その真ん中で、丸く大きな姿をした月が、朝陽を思わせるようにポンと浮かんでいる。そこだけが明るくて、これから空に光が満ちていくように惑わされるけど、東の空は雲に覆われて黒ずんでいるだけ。外周のぼ…

「ん？」と思い、ラダーから車体が落ちきったところで、シートの上からリヤタイヤをのぞき込む。そのまま手のひらで押してみると・・・ベッコリとへこんだまま、戻らない。「あー、やっぱりパンクはしてたんだ・・・」、瞬く星を見上げて、独りごち。「ヤツ…

bongoのバックドアを跳ね上げる。最後まで暖房を強めにした運転席から外に出ると、キリッとした夜気に包まれて、小さなカラダがもう一回り縮んだような気がした。引きずりだしたアルミのラダーを荷室の後ろで斜めに立てかけて、重たいCRF150RⅡから先に、ハン…

リヤタイヤが左に流れたまま、ひとつ目のコブを跳び上がる。それから、右、左、そしてまた右・・・フープスの真ん中にたどり着いたときにKXの車体はもう、天に祈るしかないほど平衡が失われていた。不意に、斜めに突きあげられて、カラダがハンドルバーにか…

クラス分けになった10時、当たり前のようにミニモトのAクラスから、走行が始まった。膨れ上がった右腕を、エルボーガードがギュッと締めつけている。その腕をかばいながら、冷たくなりかけた2スト85ccエンジンに火を入れる。今度も二人に先を越され、その二…

キャブレータ-はもちろん、サイレンサーにチェーン、前後のスプロケット。さらに、プラグまで“標準”のレーシングプラグに変えて、「初心に帰った」ような愛機KX85Ⅱ。これで走ってみて、あとは“1/26”までに詰めていけば・・・そんな軽い気持ちでキックペダル…

＜1/6の続き＞ ryoのCRF150RⅡには、ワタシのKX85Ⅱと同じ形をしたブレーキキャリパーが付いている。uchinoさんから送ってもらった、例の“新品”だ。ブレーキパッドも新しいから一皮剥かなきゃいけないけど、“利き味”はryoならずも気になるところ。レバーを何度…

思っていたほど空に青は映えず、太陽を隠した白い雲も、午後になってすこし黒ずんできた。午前中、勢いにまかせてフープスに突っ込み、新年早々、水浴びをしていたら・・・間違いなく風邪を引いたはずだ。風もそれほど強く吹いていないのに、陽射しがなくな…

冬の底にある連休は、やっぱり何もしないうちに、どんどん消えていってしまう。いつもよりちょっと長い、9日間の冬休み。これだけあれば、さすがに途中で何か始めるだろうと思っていたけど・・・何も起こせなかった。年末ぎりぎりにKXとCRFの整備を終えたら…

動く気配のない、緩みきった空気。暖かくて色のついた光が、いつもの田んぼ道をやわらかにつつみ、植え込みの影を短く落としている。少し離れたバス通りを走るクルマの雑音も、今日はまったく届かない。陽だまりを歩くなら薄いパーカーを羽織るだけで十分。…