<2/24の続き>
木立の端からコースに入り右、左、右、左とコーナーをつないでいって、そこから一つコブを越えてビッグテーブルトップを跳び上がる。そして、インフィールドのストレートを短く駆けるまでは、たしかに湿り気の残った褐色がタイヤにうまく絡んでいた。前を走る青い車体には92のゼッケンが翻り、そのYZ125に引っ張られて、フープスもいつもより少しだけ早く抜けていけた気がする。その浮かれた気分が、ストレートエンドの切り返し、フロントタイヤがすくわれるのと一緒にスパッと流れていく。何とか倒さずシングルジャンプを跳び出して、その先を見渡せば・・・日陰に黒い轍が水面を光らせていた。
開けても閉じてもフラフラと蛇行するマシン、ハンドルにしがみついてシートに腰を落としてしまっては、もういけない。路面の感触はさらに薄く消えていって、右手の甲が、完全に前を向いてしまった。暗いだけのコーナーから光の中へ早く出て行きたいと泥のなかへと切れ込んだフロントタイヤが、泥を踏みつけられずに泥に乗って・・・そしてスロットルを閉じた右腕がハンドルバーを引きつけたとたん、マシンが右に大きく傾いた。スロットルを開ける代わりに地面へと下ろしたはずの右足は、あっさり空を切り、そのまま肩からYZもろともひとつになって、醜い泥の上に倒れ込む。スローモーションではなく、一気に。
<つづく>