日が昇り、日は沈む。
朝から出会う人は、飛び交う鳥の数にも満たない。いや、朝と夕に北へと向かい、この青い空の遙か高いところを往く旅客機、覚えるその機体の数にさえ届かない。季節であれば、虫の音や蛙の声も聞こえるはずも、冬の最中となれば、それも叶うはずはない。会い見えるのは、テレビプログラムで見える顔ばかり。乾いた褐色の土に、ネロが足跡を付けて歩く。こうして散歩するだけの日々を、今さらながらに、深く思う。
刺激はあるのが普通なのか、無いのが日常なのか。
午後三時を過ぎて、傾いた陽射しを、ところどころ遮られながら、ネロと歩いていく。長く尾を引く黒い陰にも、音はない。ここしばらくは、刺激のない日々を過ごしている?いや、そうではない。刺激は内なるもの。周りに気を向けていれば、自ずと感じられる感覚のはずだ。その大切にしていたはずの感覚が、どうやら曇りよどんでしまった。今年はその感覚を、どうにかして取り戻したい。