モノローグ

少年時代

陽水の声音が沁みる。夏祭り、宵闇のひぐらし・・・・・・今年もまた、夏の夜空に花は見られずじまい。ただ、雷鳴が轟いて、閃光が走るだけ。

忙殺

忙殺された一週間。その間にryoと羽田に行けたこと、YZ125に乗れたこと。そして、何よりコロナワクチンを接種できたことは、奇跡でしかない。夏風邪をこじらせて七転八倒したのは誤算だったけれど・・・・・・。 まだ快癒しない身体を引きずって、再び一週間が始ま…

移ろいの間

垂れた稲穂が西の光にさざめいて、その上を、つくつく法師の声音がわたっていく。絹雲が空の青を刷くように、風が畦を流しては、辺りの暑気をさらっていく。気づけば陽が傾くのも、ずいぶん早くなった。つるべ落としとなるその前に、もうひと暴れしてくれる…

つかの間

三日というのも、あっという間だ。親子水入らずも今日が最後。早めに到着した空港、その搭乗口でさっと見送り、keiとネロと来た道を引き返していく。「ちょっとさみしいな」。初めてryoのアパートを訪れたとき、帰りしなにつぶやかれたフレーズが、今よみが…

親心

飲み過ぎた。こんな日もあるよね、人の親なら。

お帰り

いくつになっても、我が子は子どものまま。ryoがラインアップに戻った我が家は、いつになくにぎやかだ。keiと迎える三人のフォーメーションが、しっくりと落ち着く。今宵は少し、飲みが過ぎたかもしれない。短い至福を、ロックでいただく。

誕生日、おめでとう

お兄ちゃん・・・・・・。 年の離れた弟をRZ250のタンデムシートに乗せて、富山から能登半島を巡り帰ってきたあの日からもう、四十年になる。帰り道、調子に乗ってバンクさせ過ぎて、バックステップを路肩にすり付け、肝を冷やしたのを思い出すと、今でも胸が痛く…

終わるわけがない

午後も遅くになって、わずかな雲の隙間から、澄んだ青が現れた。梅雨とも秋雨ともつかない中途半端なこの時期に、亜熱帯を思わせる激しい雨。散々な爪痕を残したその「前線」の尻尾が、その窓からは覗けるよう。雨は上がり、海風に乗ってまた、夏が舞い戻っ…

まだ、だろ?

あきれるほどの雨がようやく上がって、宵が街灯にぼんやりと浮かび上がる。送り盆もまだだというのに、閉め切った部屋にいても、シャツ一枚では心許ないほど。それが、ひどく切ない。せめてryoが帰ってくる頃には、また、真夏の光が届けばいいと願っている。…

倦怠期

週末、お盆、夏休み。 自粛、大雨、大仕事。 土曜の朝、せっかくの休日に流れる雨音は、やる気の出ない仕事のBGMにぴったりだ。日曜日まで降り続くと言うから、手持ちの仕事はだいぶ片づくことだろう。クライアントだけを喜ばせるのは少々癪に障るけど、それ…

マルテ珈琲焙煎所 2

飴色を深くした引き戸に近づいただけで、それとわかる匂いが、外までほんのり漂っている。蔵造りの建物に似合った少し重たいその木戸を引き、ゆっくりと敷居をまたいでいく。立ちこめるのは、燻されたような香ばしい香り。そして、目の前の狭い空間には、円…

マルテ珈琲焙煎所

長野にある小布施は、古の面影をいくつかの小径に残す、麗しい街だ。善光寺からほど近いここは、「栗の街」としてもつとに有名で、休日は多くの観光客が通りを賑わせる。酒蔵もワイナリーもあって、いつ来ても飽きることのないこの街に、行きたくても行けて…

キネマの神様

映画、それも邦画を映画館で観るなんて、『汚れた英雄』以来無かったこと。数十年ぶりに、そんなことを思わせるのは、新聞への広告展開が成功したのかもしれない。ただ、その気持ちが素直なことは確かで、主題歌にもハッとする歌詞があったりと、ひさしぶり…

その香りに

何年、いや何十年ぶりになるだろうか・・・・・・再び、珈琲に夢中。それも昨日の今日、瞬く間に燃え上がった。ひとまず手動のミル。これはアウトドアでも使える小作りの一品を、これまた折り畳み式のドリッパーと併せて、ネットショップでカートに入れて即決済。…

また来年の夏に

旅の終いに、朝から太陽が照りつける。空には怪しげな灰色が帯をなして、時折その強い陽射しを遮り、路傍の草が音を立てる。そのたびアスファルトが陰影をなくして、ざらついた鈍色を海岸へと落としていく。ネロを連れて歩く、出立に不似合いな晴天。いっそ…

おかあさん

思いもしなかった青い空に、朝から太陽が上り、辺りに光をまき散らす。近づく台風が荒れた土曜日を連れてくるはずだったのに・・・・・・まったく昨日と同じ、暑く目映い海日和がやってきた。その日を引き連れ、半島の西から東へと抜けて、複雑な海岸線を海と面一…

ノトノウミ

陽射しに揺れる沖の背。細かく散らばった太陽の欠片。濃い灰青色の翼を広げ、波の面を這う海猫。そして、凪いだ浅瀬に漂いながら、その真っ白な腹をゆっくりと追いかけるように泳いでいく。期せずして手に入れた、のどかなプライベートビーチ。目映い水平線…

2021年、夏

前にも後ろにも、行き交う車に出くわすことさえ珍しい県道29号線。見覚えのある交差点をつなぎ、深い緑をいくつか越えて、氷見市から石川県に入った。途端、午睡を終えた太陽が雲からはみ出て、フロントガラスに眩しくぶつかり、辺りが一瞬、白く消えてなく…

逃した夜

昨夜の月を追いかけて、東の空を眺めてみても、かかる雲に隠れたのか早沈んでしまったか、薄黄身色の半月はどこかに消えてなくなっていた。思わず玄関を出て、稲穂の茂る畦まで歩いたみたところで、月光はどこにも宿らず、ただ夜風が舞うだけ。逃した夜が悔…

電動車

実家はケーブルテレビを引いている。週一に繰り返される、その実家詣で。今日も昼の外食に付き合い、食料品を買い出して、部屋の隅から隅まで掃除機をかける。一通りをやり終えて、そのTVプログラムに目をやると、「フォーミュラ選手権」が始まろうとしてい…

東京オリンピック

昭和三十九年三月、東京オリンピックの年に生まれた。そこから半世紀以上、令和の御代になり、自分は五十七歳になった。そして、コロナ禍の中で、再びこの日を迎えることになるとは、夢見心地だ。 稀に見る、いや、もう二度とないであろう特別な大会を母国で…

綴る暇(いとま)

副業に時間が取られる日は、きまって何を書くかが浮かばない。充実した平日は、公私のバランスを取るのが難しいようだ。はて、遊びに勤しんだ休日はどうだったろう。記憶の欠片があちこち散らばるだけで、こちらも文字にするのが容易じゃない。因果な商売だ。

日光詣で

焼けるはずの空は青々と延びて、稲の緑に落ちた西日が風に揺れている。あっさり真夏日を越えて、明日はもっと暑くなるという。いきなり本番、それも週末。乗らないはずがない。その西の空に、今宵も月が浮かんでいる。

夏の夜空に

夏は夜。 今宵は雲間に半月が浮かび、古の一節が身に沁みる。闇は黒く濃く、漆黒の隙間から、虫の音が流れてくる。月光は空を照らし、遠くに星が瞬く。 雨に濡れた風が窓辺を揺らし、部屋から熱気が逃げていく。季節は巡り、夏がもう、すぐにやってくる。バ…

あと一日!?

怒濤の1.5週間が終わった。喉元過ぎれば何とやら、クライアントから労いの言葉もいただいて、いつもの泡盛が喉を潤せば、酔いが一気に回る。PCをスリープにして、TVプログラムをたどる宵の至福。梅雨明け間近の水曜が、雷雨もなく更けていく。あとは、ひさし…

もう一息!

明けない夜はないから、終わらない案件もない。ようやくたどり着いた納期は明日。15時が締め切りだから・・・・・・酒も旨く呑めるというもの。納期が過ぎれば梅雨明けだ、もう一息、頑張ろうか。

カウントダウン

明けの雲が晴れれば、空にあるのは夏の太陽。湿気た赤土を見るまに乾かし、アスファルトから水たまりを消し去り、南天へと上っていく。それが昼までのお話。 午後になって、気づけばアスファルトを写したような鈍色の空に、太陽はいなくなった。すぐに雲は鉛…

週末の予定は

少し前の気分のような、玉石混淆だった週末。夏空からの雷雨に、いつもの介護と休日仕事が折り重なって、まったく盛り上がらない・・・・・・と思っていたら、週間予報に並ぶ太陽に、違和感の残る左肩より先に、気持ちの方が乗ってきた。ガレージからBMXを引っ張り…

天気予報士

天気予報士に、すっかり騙されたのか。 溜まった洗濯物を片づけてくればよかったと、実家からの帰り道、まだ西の空高くにある夏の太陽を、スクラムの小さなサンバイザーで見えなくする。助手席のkeiも同じ思いを、白い雲にぶつけている。そして、もしかした…

じっとしてもいられない

そんなに乗らない、わけがない。少しずつ動かし始めた左肩と生来の遊び心が、そぼ降る金曜の午後に、同期する。飛んだり跳ねたりはできなくても、二輪に跨がるぐらいはできるだろうし、梅雨明けが迫ってきてはじっとしてもいられない。 温泉、キャンプ、日光…