戦闘服の似合わない二人

まさか毎日着ることになるとは思わなかった。“戦闘服”と、半分は真面目に、半分は小馬鹿にした言い方をして、歓迎すべからざる“装い”と片付けていたスーツ姿。それを毎日、しかも半年も続けるとは・・・我ながら恐れ入る。当然、今日も同じ。初夏すら感じる突き抜けた晴天には、とっても邪魔な黒い上着。少しムッとした空気をはらみながら、日暮里駅の南口へ渡る階段を上がっていく。西日になるにはまだ早いらしく、上りきった先には、空が青く光っていた。

およそ“デタラメ”な格好しか見せたことのないtasakiパパと、上野駅で待ち合わせる。淡い褐色に包まれて、小洒落た店が立ち並ぶ駅ナカ。その一番東に位置した本屋で落ち合う約束をしていたのに・・・棚を一列一列見て廻り、端から丁寧に探したけど見つからない。到着するのはワタシの方が遅いはずなのに。携帯で呼んでも応答無し。仕方なく、いったん店の外に出て辺りを見回すと、隣の店から見覚えのある顔が・・・右手に行李を模した鞄、左手に重そうな白い紙袋を下げたtasakiパパが、ゆっくりと視界に入ってきた。“戦闘服”に身を包んだ姿は、ワタシには明らかに不自然に映った。

互いのスーツ姿に違和感を覚えるよりも先に、ほとんど2カ月振りの再会に、ただ笑みがこぼれる。駅の中にはタバコを吸える場所など無く、愛煙家のtasakiパパを連れ立って、すごすごと改札から上野広小路へと出ていった。それでも目立つところには喫煙所があるはずも無く、中央通りの横断歩道を渡り、そのままアメ横の裏手を伝って御徒町駅方向へと歩いてみる。道すがら、2か月の時間を埋める話題が尽きることは無い。線路を挟んで、何度かアメ横通りを行ったり来たり・・・酒はダメ、晩飯にも早いということで、喫煙席のあるコーヒーショップを見つけて“一服”することにした。

ワタシはアイスコーヒー、tasakiパパはアイスカフェラテを手に、2階の喫煙席へ・・・空気清浄機が大活躍しているのか、気になるほどの臭いは無い。元々はタバコ吸いだから、別に気になることも無いのだけれど・・・tasakiパパは申し訳なさそうにしている。85デビューを画策している話に大いに盛り上がり、二人してしゃべりっぱなしのまま、時間が過ぎていった。「明日もあるし」「家は遠いし」と、まさに“宴たけなわ”の2時間でお開きに。店を出ると、外はすっかり夜気の彩り。アメ横が賑やかにうごめいている。行き交う人々の乱雑な感じと、テキヤの威勢の良い掛け声。そこを縫うようにして、上野駅に戻っていく。見ず知らずのサラリーマンとは、肩と肩が触れ合わんばかり。その猥雑さに・・・不思議なくらいに元気が出てきた。今なら間違いなく・・・跳べる!