ワタシはタクシーじゃないし、都合のいいオンナでもない

ひと頃は“歯抜け”していて寂しかった電車の中の広告も、いつの間にか賑わいを取り戻している。ラッピング車両もいいけど、やっぱり車内が華やいでいるのは気分も上向くようで、時に苦痛となる朝のひとときを楽しくさせてくれる。ちょっと毒づいた週刊誌の中刷りには閉口するけど・・・デザイナーやコピーライターの力量にうならされることも少なくない。クルマでは味わうことのできない、電車通勤ならではの密かな楽しみだ。

「あっ、あった」。日暮里からJR山手線で品川まで・・・乗り合わせた車両がよかったのか、このところお気に入りだった広告に、うまいこと出くわした。光が溢れた車内は、黒いスーツ姿のおかげで“色物”が際立って見える。色をふんだんに使った広告は、そのいい例、宣伝効果も抜群だ。卯月の陽射しは、広告主にとって願っても無い眩しさだろう。

洒落が利いていて、思わず「うまいなぁ」と感心してしまった“お気に入り”のコピーがこれだ。『お客さまをお送りするので、私をタクシーと呼んでください』。言われてみれば、そんな風に話してしまいそうだ。いいとこ、ついていると思う。もうひとつが、またいい。『はい。私は、月曜日なら都合のいい女です』。こんな女性がいたら、絶対に月曜日は空けておこうと、本気で考えてしまう・・・。

あなたの英語は、こんな風に聞こえているかもしれない・・・だから“ちゃんとした英語を。仕事ですから”と結ぶ、英会話教室の広告だ。ただ、にやけてばかりもいられない。吊り革につかまりながら、マスクの下で口をもごもごさせてみる。call・・・call me a taxi・・・そうじゃなくて・・・call a taxi・・・call a taxi for me・・・。仕事で使うことはないけど、“タクシーになってしまう”素質は十分だ。