荒川に架かる鉄橋。斜めに組まれた鉄骨の間、水面が冬のやわらかな陽射しを浴びて、淡く光っている。その真ん中、左右に流れる緩やかな弧の頂点には、背の低い引き舟が据えられている。ただ、陽を正面にしているせいで、黒い影にしか見えない。船尾から小さく水しぶきを上げているのに、まるで動いていない風で、船首だけを東京湾の方に向けている。鉄橋を渡れば、すぐに北千住の駅なのに・・・日比谷線もゆっくりと止まるような走りで、ホームの手前でのんびりとしていた。

薄くのばした雲が空の青に溶けていて、まだ寝ぼけた町並みの上に、ぼんやりと丸くなっている。厚みのない色を背に高層ビルが二棟、無心にまっすぐ伸びようとしていた。予報では、明日は雨か雪になるらしい。「東京」という文字の横には、水色をした“傘”が並んで・・・それは、ほとんど一月ぶりのことだという。常磐線の中、三人掛けの後ろに開いた小さな窓からは、明日まで待つことなく、雨粒を落としそうな空が覗いていた。sumiちゃんの居る大阪は・・・今日から雨になるみたいだ。