ワンダー ワンダー・ブギウギ♪

光に当てれば透けるだけあって、「薄くても暖かい」と謳われた化繊は、よく風を通す。北千住から45分。駅に着いて、駅舎から暗い街に出ると、暖房に馴染んだ両脚の肌が夜気にさらされて、たちまち凍えていく。田舎の夜は、相変わらず濃くて深い。家が建ち並ぶ通りからでも、星座の形がよくわかる。頭を斜め下にしたオリオンが、空高くに上がっていた。すっかり体が冷めた頃になって、ようやく駐車場に着く。敷地の中に建つアパートの窓には、一階にひとつ、二階にふたつと、まばらな灯りがともっていた。

Bongoのシートは、商用車らしく、安っぽいビニール製。朝と同じくらいに固く冷え切っていて、スラックスの生地など無いかのように、太ももの柔らかなところを冷たく触る。駐車場を出てしばらく走り続けても、水温計の赤い針は“C”の下から動かない。体は冷たいまま、カーステレオだけが、一足飛びに“夏”を歌っている。カモメが女の子のビキニを外すなんて・・・そんなことは、起こるはずもない。それでも、海と一緒に広がる空の青と、湧き上がる入道雲の白、その組み合わせが、閉じた瞼に眩しく映り込んできた。寒さの頂点は、まだ過ぎないというのに・・・。