まだ蒼いビルが、横長の液晶に映し出される。夜明け前の汐留。テレビカメラ用の照明が、黒く濡れたデッキを照らしていた。画面を斜めに流れているのは、みぞれまじりの雨。明け方に観測したという“初雪”は、そのままみぞれから雨に・・・厚手のカーテンを少し引いて、結露した窓を指先でぬぐうと、暗い路地は、同じように黒く濡れているだけだった。東京よりもはるかに寒いはずなのに、雨すらほとんど降っていない・・・視線を戻すと、映像は中央高速の八王子ICに切り替わっていて、ナトリウム灯の明かりに横なぐりの雪が橙色に染まっていた。

ひさしぶりの雨模様を嫌って、駅に続くバス通りにはクルマがたくさん重なっていた。信号が青に変わっても、一台か二台しか渡れない。信号待ちのクルマなんて、いつもなら一回ではけてしまうのに・・・テールランプは赤く光りっぱなしで、じりじりと動くだけだ。おかげで、すっかり遅れて、昨日と同じ日比谷線には間に合わなかった。後から来た準急の長津田行きに乗り込み、遅れた分を取り戻す・・・北春日部駅で通過電車待ちの間、開放された扉から外を眺めると、八王子に負けないほどの雪が降り始めていた。

読みかけの文庫本に目を落として・・・次に目を上げた時には、西新井の駅に着いていた。各駅停車と違って車内は混雑していて、立っている人が気の毒に思えてくる。ただ、目の前にいる、背の低い初老の男性はいただけなかった。忙しなく濡れた傘を持ち替えるのが気になって仕方がない。その彼が纏った、つやのある灰色のコート越しに前を覗いてみる。窓ガラスはびっしりと水滴に覆われて、鉄橋を渡る景色はまったく見えなかった。昨日は降りていったコンコースに、今日は階段で上がっていく。都心は・・・みぞれも消えかけていた。

週間予報には、日曜日まで傘と雪だるまが続いている。その日曜日、iguchi師匠のCRF150RⅡが復活して、今年初めて手合わせするはずだったのに・・・さすがに整備したてのCRFを、泥の中で馴らすことはしないだろう。つまらないけど・・・まだ、ガレージの中でバラバラになっているRM85L・・・遅れていた新品のベアリングも届いているから、頑張れば組み上がりそうだし・・・この週末は、ゆっくり雨を楽しむのが良いのかもしれない。