翡翠 ~後編~

玉砂利を敷き詰めたような海水浴場は、日本海では良く見る景色だ。9月も半ばを過ぎて、波打ち際には、寄せる波と追いかけっこをする人がまばらにいるだけ。ただ、よく見ると、足下に視線を落とし、ゆっくりと海岸線を歩く姿もちらほら・・・歩くたびに片足を左右に動かして、ヒスイを探しているのかもしれない。冗談半分だったのに、本当にそんな人が居るなんて・・・ちょっと驚きながら、砂利を踏みつけて、海に近づいていく。砂浜の太平洋とは透明度がまるで違う。沖からのゆるやかなうねりが崩れて、白波が石ころを渡って打ち寄せる。澄んだ波は、その石ころをさらうように引いていき、石と石がぶつかり合ってはカラカラと音を立てる。撒き上がる砂が無いから、海に流れていく石ころがはっきりと映る。

結局ヒスイは見つけられなかった・・・いや、見つかるはずもない。ヒスイが白く角ばっていることなど知らなかったのだから・・・。必死に深くて黒緑色した石を探していた自分が可笑しくなる。その頭の上、上越に着く頃には消えてしまう太陽が、紺碧の海をやわらかく照らしていた。