続 アラバスタに雨が降る 11

<9/23の続き>

遠くの方で、時折水しぶきを上げながら、二台が周回している。苦労して走っている雰囲気は、まるでない。利根川の河川敷でryoと二人、笑いながら雨の中を走っていた姿が浮かぶ・・・。第一コーナーではマシンが振られるらしく、2ストのKTM85SXを駆るuchinoさんは、体を動かすのに忙しい。それでも、やっぱり楽しそうだ。結局30分が過ぎるまでコース脇に立ち続け、心惑わす二人の後ろ姿を眺めながら、bongoの元へと引き上げる。後半は周回する速度も上がっていたから・・・案外イケるのかもしれない。パドックの水たまりも、いつしか細かく、小さくなっていた・・・。

RMの脇に立ち、泥に汚れたマシンの下半分を覗きこむ。替えたばかりのリヤブレーキパッドが心配だったけど、キャリパーが泥で固着していることはなかった。煮え切らない様子のまま、また30分が経とうとしていた。「で、どうする?走るの?」身支度を整えたtohdohさんが、さらに続ける。「結構大丈夫みたいだから、走らないともったいないんじゃない?」そう、また“もったいない”だ。このところ、後先ばかり気にしている自分に、ふと気がついた。泥なんて洗って落とせばいいんだし、部品も新しくすればいい。「何ならマシンごと新しくしてもいい」、なんて心でうそぶいて・・・SIDIのブーツに、もう一度足を入れる。

<つづく>