13日の金曜日

6時ちょうどに仕事を切りあげて、駅に続く上り階段の手前、歩道と歩道の間を、小さな横断歩道が渡っている。左から近づいたパールホワイトのハイエースと、そこで目が合った。白線を前にして、先に止まったのは・・・白くて大きな車体のほう。左に少し体をよじり、軽く頭を下げて、小走りにまだらの白線を抜けていく。そのまま階段を上りきると、いつもより一本早い、水戸行きの常磐快速の青白いヘッドランプが二つ、駅のホームに迫ってくるのが見えた。

改札まで走り、改札をくぐってからも走り、二段飛ばして階段を下りていって・・・扉が開く瞬間に、何とか間に合った。ひと足踏み入れると、薄いYシャツの袖に、車内の冷えた空気が沁みてくる。時刻どおりに北千住へ着いた車両を、今度はゆっくり下りていって、人の波の一番後ろから、のんびりと階段を上がっていく。東武線の改札を抜けて、ヘッドホンを耳に押し込み、SOL22のwalkmanを起動している間に・・・東武公行きの区間準急がホームを離れていった。

ぴったり5分後にやってきた久喜行きの急行に、列の一番前から、二歩で乗り込む。端から二人目の位置でつり革につかまり、文庫本に目をやっていると・・・ひとつ目の西新井ですぐ前の席が空いてしまった。なかなかツイてる13日の金曜日に、ニヤリと腰を下ろす。黒い猫も見てないし、この小さな幸せ、日曜の夜まで持っていきたい・・・。