キミは走ったことがあるか? 2

天気予報はいい方に外れて、東に進むたび、空の雲が晴れていく。昨日dukeで走った農道が、今日は陽射しに照らされ揺らめいている。そこから国道6号線に出ると、ちょうど半分くらい。隣に座っているはずのryoは、今日に限って就活。ただ、おかげで独り走るbongoの中は、音響の悪いライブハウスのようで、思う存分kissのオールドナンバーを流しながら、鼻唄まじりに残り半分、ひたすら東を目指す。窓を開け放つには涼し過ぎる休日、気分を邪魔するものは、何もなかった。

最後のコンビニで、シーフード味のカップ麺とチョコパンを仕入れて、bongoの運転席に戻る。ドアを閉めて、イグニッションキーを前に倒すと、ポール・スタンレーの若い声が弾ける。「今夜、君たちにサプライズがあるんだ」、曲はエース・フレーリーが初めてリードヴォーカルをとった“Shock Me”、kiss全盛の“ALIVEⅡ”からのカットだ。けして良声とは言えないエースのヴォーカルに合わせ、ダイワハウスの工場に向かって坂を上る。saitoさんの“サプライズ”が、だんだん近づいてきた。

<つづく>