変わるもの、変わらないもの 5

<8/17の続き>

スターティングエリアまで走ってきても、何も変わらない。不調のマシンを右手と左手でだましだまし走らせる。この感覚は、もう何年も味わっていない。せめてryoの駆る85SXの前でコースに入りたかったけど、まったく吹け上がらないエンジンをいつまでもあおっていたところで、ますます症状が悪くなるだけ。そこまで待っている時間はないらしい。適当な隙間を狙って、全開にした4ストロークを左の指先で解放してやる。山砂を蹴り上げて加速するCRF150R-Ⅱが真正面、第1コーナーに新しくでき上がったアウトバンクに突き進む。右手を戻さない代わりに、左のひとさし指と中指の2本で、短いクラッチレバーを握っては放し、上手くトルクを逃がしながら回る。割れて不規則に響く排気音が、ゆるく上る直線に叩きつけられていく。

<つづく>