変わるもの、変わらないもの 6

左回りなのに、ただひとつ気に入っている第2コーナー。M・X・4・0・8と白く刻まれた山肌の真下、散水で湿り気の残るブ厚い山砂の上を、新品のIRCミディアムタイヤが咬んで走る。傾けたマシンを不安に感じるどころか、まったく転ぶ気がしない。この感じを味わわせてやりたかったのに、先にワタシが楽しんでしまうとは・・・甘い親心が路面の凸凹に大きく揺れる。二本目の上り坂を折り返して、小さなフープス。ここでまた、キャブレターが露骨に不調を主張する。仕方なく閉じたスロットルを開いても、エンジンが止まりそうになるだけで、マシンは勢いを取り戻さない。

やっとの思いで2周を回りきり、スターティンググリッドの前にマシンを寄せて、シートに跨がったままの姿勢でクランクケースをのぞき込む。下げたアタマに血液が逆流して、ぼやけた視線の先。淡いピンクに染まった液体が静かな線になって、まっすぐ流れ出ていた。あわててフューエルコックをOFFに倒し、エンジンの止まったCRFを押しながら、パドックへと戻っていく。レーシングスタンドにマシンを載せて、緑色のパイプチェアーに腰を下ろすと・・・BONGOの兄弟車が、そろりそろりとパドックをうごめいているのが瞳に映った。

<つづく>