やっぱり・・・

シートにまたがり、そのまま静かに前へ視線を落とす。パドックにしかれた砂利の上には尖ったフロントフェンダーがまっすぐに延び、いっぱいのヒカリを浴びて橙色が白くきらめいている。アルミ製のキックペダルを引き出す右手には、重さの感覚がひとつも残らず、プラグを交換したばかりのエンジンは、一度のキックで目を覚まして、勝手にディーゼリングを始める。チョークノブを引かずにけたたましく音を上げるさまに・・・もう20年も前に手放してしまったRGV250を思い出す。回転がゆっくり落ちてくるまで待ってから、クラッチレバーを握りしめ、シフトペダルを右のつま先でちょんと蹴りつける。白煙を引きずりながら、ピットロードに向かい走り始めるマシン。周りを林に囲まれたここだけは北風も届かず、真っ青な空からは、暖かな陽射しがたっぷりと降り注いでいた。

<つづく>