54×54の魅惑 5

<12/7の続き>

弾けるエキゾーストノートを耳で追いながら、膝に巻き付けたニーブレースをきつく締め上げる。わずかにこぼれた光にエクスパッションチャンバーが、黒く自由な曲線を描く。そこから覗くパドックも、コースへのアプローチも、その優美な曲線に切り取れている。

「多段膨張室」と呼ばれ、膨大な演算の上にその形状が決められていても、直線を持たないその造形には、どこか有機的な、生命の息吹さえ感じてしまう。チャンバーが出口に向かってまた細く絞られているのは、ここで排気ガスを押し戻して、シリンダが吸い込んだ新気を一緒に吐き出してしまわないように圧を掛けるため。排気ポートにバルブを持たない2ストロークにとって、ここまでが「エンジン」と言われるゆえんだ。

先週よりも緩んだ黒土が、フロントタイヤの行き先を気まぐれに変えてみせる。MOTO-X981で「出来の悪いコーナーは」と訊かれたら、ここだと答えられるほど、自分の悪い癖が束になって出てくる左のタイトターン。軽くすり鉢のようになった、その下りながらの進入が雨を吸って、濃く沈んでいる。フロントタイヤがつま先から払いのけられて、勢いを失ったフルサイズのアルミフレームはさらに強ばり、私の制御の邪魔をする。

<つづく>