54×54の魅惑 6

<2017/12/20の続き>

まだ両手に余る車幅をどうにか倒さず立ち上げて、コース再奥の暗がりへと誘うバンクに向かい、短くスロットルを締め上げる。その縁までいってから、尻を思い切り前に放ってガソリンタンクの上に落とし、右手でハンドルバーを地面へと引き倒す。軽いはずの2ストローク125は、それでも頑なだった。

「もっと傾ければいい」

何度も聞かされて百も承知、わかりきった台詞が思わず口をついて出る。慣性を消せるほど傾いたわけでもないのに、右手が機械的に反応して、濡れた褐色に乾いた排気音が弾けた。いつものRM85Lとはまったく逆にセッティングされたキャブレターが、青い車体を前へと押しやる・・・穏やかに、でも力強く。

<つづく>