「9時からじゃないんじゃないの・・・」。
道路に面した入口は、薄く赤味のある黄色いシャッターが、下までぴったりと降りている。陰って黒ずんだ駐車場の奥には、バイクを積むためのトラックが、斜めに停まっているだけだ。通りから駐車場を1/4ほど入ったところにある正面の入口も締まったまま・・・ガラス戸の向こうは灯りが落ちていて、暗がりの中、原色のマシンでさえ輪郭がはっきりとしない。腕時計を見ると、針は8時50分を指している。9時から開ける店が、この時間に人が居ないのは、ちょっとおかしい。不思議になって、ガラス戸をよく見てみると・・・ブランドのステッカーやらメーカーのポスターやらでにぎやかな片隅に、白い切り文字で“営業時間”が貼られていた。どうやら9時開店というのは、ryoの思い込みだったようだ。9時30分。あと40分ほど待たないと、店は開かない。このまま温風を吹き出させた車内で、じっとしていることはできそうにない。先にコースへ行って、下ろすものを下ろして・・・もう一度、ここに戻ってくることにした。“本気ライダー”として応援してもらうには、少しは苦労しないといけないようだ。
<つづく>