“本気”で初走り 2

たっぷりと撒かれた水を吸って、褐色の斜面の上、陰った竹林のてっぺんだけが風にきらめいている。受付の木製テーブルに座り、こちらに背中を見せていたsaitoさんが、迫るBongoに気づくと、半身を捻って立ち上がった。下ろした窓ガラスの向こう、コースから4サイクルの破裂音が響いてくる。「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」年賀状の文句そのままの挨拶を交わして、申込用紙をひとつだけ受け取り、パドックに視線を移す。目の前にmachi-sanのvanetteが停まっていて、その脇にCRF150RⅡが降りていた。今年初めてのMX408・・・9時を過ぎたパドックは、暮れに走った時よりも賑わっているように見えた。

申込書を書いたのはryoだけで、vanetteの右横にBongoを並べる。荷台からCRF、KXと順に降ろしながら、顔見知りに年始の挨拶を繰り返す。トランポの間を徘徊しているのは、ニセmanabu。この光景は、今年も変わらないようだ。入口と反対側、パドックの奥から、ざりままが歩いてくる。黒のベンチコートが体をすっぽりと覆っていて、眩い陽射しを背に、まるで陰が動いているようだった。「賄賂だよ!」笑いながら、ビニールのパックに入った茨城名産「干しイモ」を差し出すざりまま。それを運転席と助手席の間にしまい、ryoのヘルメットとガードを入れたコンテナをmachi-sanに託して・・・Bongoのエンジンキーを捻る。行先は、そう、もう一度westwoodだ。

<つづく>