曇りのち雨 5(完)

<2/26の続き>

ゴーグルレンズを歪める雨粒に、いつしか固い斜面は濡れそぼち、駆け上がろうとするKXのリヤタイヤが大きく横を向いた。ウォッシュボードの“借り”は、大小のジャンプで取り返すはずだったのに・・・右手を思いきり捻れない。「この雨で苦しいのはワタシだけじゃない」と気を入れ直しても・・・気持ち裏腹、タイヤも空転ばかりを繰り返す。

周回ごとに雨は強くなり、ウォッシュボードの先、最終のS字カーブの突っ込みでリヤタイヤの回転が止まり、土の上を斜めに滑り出す。リヤブレーキでは、もう止まらない。年末の谷田部を思い出したのか、両腕にヘンな力が入り、つまらない時間だけが過ぎていく・・・。

何とか転ばずフィニッシュラインを越えたけど、チカラを出し切った感じがまったくしなくて、後味の悪いチェッカーをくぐる。外したゴーグル、レンズには雨と泥とがべたりと張り付いていた。