小さな声援 1

一晩寝ても忘れられないなんて、ひさしぶりに味わう悔しさ。

練習で一度も跳ばずに流していた、三つ目の上り勾配の手前に置かれたテーブルトップ。iguchi師匠に教えられるまま、怖がらず少し開け気味で、一周目から上手く跳びきれたのに・・・上りきった先、苦手にしている林の中の左の折り返しで、85SXの動きを止めてしまった。

かろうじてエンジンこそ回っていたけど、スタートのすぐ後。あっという間に数台に置き去りにされてしまった。そして、コーナーのど真ん中に脚を下ろしたワタシの横を、軽やかにラインを変えながら、natsunagaさんのKX85-Ⅱが走り抜けていく。

シフトペダルを数回、乱暴に踏みつけると、やわらかい泥を蹴散らし、急いでSXを走らせる。そこから形の悪いテーブルトップを越えて、土煙の舞う直線を瞳に映す。前を行く車影が、まだ間に合う位置にあることを喜んで、直角の左コーナーをインベタで突っ切る。少し丁寧にやりすぎて、2コブ目の頂点にフロントタイヤが引っかかってヒヤッとしたけれど・・・気持ちが乗っているときは、このぐらいじゃ転ばない。

パドック前、いつしか「ギャラリーテーブル」と呼ばれるようになった、2つのテーブルトップをきちんと処理、もう一度左に90度曲げながらフィニッシュのテーブルトップも跳びきり、背中に当たる声を追い風にして、前を向く。85SXのデビュー戦は、これから盛り上がる・・・はずだった。

<つづく>