それでも開けて走る 6

全開を受け止めてくれるはずの山砂が雨を吸ってばかりいて、ホームストレートにはもう、何本もの曲線がいびつに描かれていた。陽射しがその陰影を、第1コーナーの手前までずうっと延ばしている。遠く、そのコーナーのバンクを眺めながら右手が止まるまで、一気にCRFのスロットルをひねり上げる。強制開閉式のキャブレターをレーシングエンジンに組み合わせていても、そこはやはり4ストローク。反応は少しだけ鈍い。いつもの85SXから半拍遅れて、エンジンがうなるようにして吹け上がるのをカラダで確認してから、ギヤを1速に蹴り込んだ。

<つづく>