冬空の下で

歩行者用の信号が点滅を始めたのに合わせて、クラッチレバーを握りしめ、Dukeのスロットルを全閉にする。そのままブレーキペダルだけで減速を終わらせて、太い停止線の手前にフロントタイヤを止める。昨日の快晴と打って変わって、まだらに広がっていた雲の帯がいつしか灰色に空を覆い、すっかり陽射しまで隠してしまった。完全に停止したマシンからアスファルトへ落とした左足の内ももに、エンジンの熱気がやわらかくまとわりついてくる。強ばった両肩が、つかの間の信号待ちに、ほろりゆるんでいく。直交した通りに、クルマが走らなくなり、目の前のシグナルが青に変わった。Dukeが通りを渡りきり、ステップに戻した左足が、シフトペダルを掻き上げると・・・冷たい風が塊のように、両肩にぶつかり砕けていった。